六人の嘘つきな大学生の映画専門家レビュー一覧
六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成のベストセラー小説を浜辺美波主演で映画化した本格ミステリーサスペンス。人気企業の新卒採用の最終課題に向けて一丸となって取り組んでいた就活生6人が、内定者は一人、それを決めるのは自分たちと決められたことで、嘘で固めた駆け引きを展開する。監督は「キサラギ」やドラマ『ストロベリーナイト』などを手がけた佐藤祐市。共演は『こっち向いてよ向井くん』の赤楚衛二、「小さな恋のうた」の佐野勇斗、『映像研には手を出すな!』の山下美月、「OUT」(2023)の倉悠貴、『みなと商事コインランドリー』の西垣匠。
-
ライター、編集
岡本敦史
全篇「帰んなよ、もう」と思いながら観ていた。そんな選考方法で新入社員を選ぶ会社なんざ願い下げだと、最近の優秀な若者こそ思うのではないか(一応、平成末期っぽい設定だが)。劇中のセリフどおり「いい会社に入ることしか考えてない学生」としか、作者が登場人物を見ていないことに辟易。優位に立つ目上の者(企業)に対してまるで反発しないまま自己解決を図る社会人のタマゴという、リアルなモダンホラーを描くならわかるが、誰もそこを突破しないので風通しはすこぶる悪い。
-
映画評論家
北川れい子
就活中は月と同じで表面しか見せない、と6人の1人が言う。世間では、外側は本質である、とも言うけれども。ま、それはともかくこの作品、ただ漠然と観ている分には面白くなくもないが、次々と1人ずつ槍玉に挙げて相手の弱みや過失をいじくり蹴落として、という展開は、かなりイヤラシく不愉快で、次第に6人が哀れに見えてくる。むろん、どんでん返しのための仕掛けではあるのだが、就活生でオハジキごっこをするな!と脚本、監督に喝をいれたくなったりも。6人の俳優たちはみな頑張っているが。
-
映画評論家
吉田伊知郎
「大学は出たけれど」「就職戦線異状なし」「何者」に連なる就活映画だが、本作では企業が昔ながらの身辺調査で堂々と素行をあげつらうので驚かされるが、一捻りしてある。しかし、グループディスカッションでどんな暴露があっても、最初に設定した時間ごとに投票を行うことを全員が律儀に守るところからして就活ゲームでしかない。6人採用予定の企業が急遽1人のみに変更した時点で経営が危なそうなのはともかく、浜辺だけが正義のまま傷つくこともないのはかえって損な役回り。
1 -
3件表示/全3件