ロイヤルホテルの映画専門家レビュー一覧

ロイヤルホテル

    「アシスタント」のキティ・グリーン監督と主演ジュリア・ガーナーが再タッグを組んだスリラー。旅行で豪州を訪れたハンナとリブはお金に困り、田舎にある古いパブ“ロイヤルホテル”で働くことに。彼女たちを待っていたのは、ハラスメントや女性差別だった。出演は、「グレイマン」のジェシカ・ヘンウィック、「移動都市/モータル・エンジン」のヒューゴ・ウィーヴィング。
    • 文筆業

      奈々村久生

      前作「アシスタント」と同様、キティ・グリーン監督は言語化や証明の難しい身近なハラスメントの実態を可視化させている。仮にこの映画でワーホリ女子に向けられた男たちのセリフを録音し、されたことの被害を訴えても、彼らを法的に裁くのは困難と思われる。だからこそフィクションで語ることに意義があり、脚本や演出は敢えて立証できない暴力のあり方を丁寧に探る。田舎町での住み込み労働という閉鎖的な環境と話の通じない輩に取り囲まれる絶望。その恐怖はほとんど「悪魔のいけにえ」だ。

    • アダルトビデオ監督

      二村ヒトシ

      どうしてこうなってしまうのかさっぱりわからない。そもそも酔って性欲の対象にからむ気持ちが僕にはまったくわからない。この映画を観ると、男たちが酔っ払いたくて酔っ払ってるわけじゃないらしいことはわかるが。旅先で怖い目にあうホラー映画を知ってるから怖くて僕は旅行にもいかない。だから文化人類学のフィールドワーカーを尊敬する。ただ、この映画のラストは想像してたのよりも面白かった。このまま主人公たちが世界中を放浪し、日本のスナックでもバイトする続篇はどうか。

    • 映画評論家

      真魚八重子

      導入から無駄を省いたメインストーリーへの運びがスマートだ。女性が男性に対し薄っすら感じている恐怖が端的に描かれている。侮蔑的な言葉、目的のわからない付きまといといった悪意は、実際におおよその女性が経験したことのある気味の悪い出来事だ。それに同調する女性もいるし、抵抗を見せる女性がいるのも自然であり、どちらが良い悪いではない。同じくオーストラリアを舞台にした「荒野の千鳥足」を彷彿とさせたが、ラストの反撃は現在の女性映画によるマニフェストであろう。

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