至福のレストラン/三つ星トロワグロの映画専門家レビュー一覧

至福のレストラン/三つ星トロワグロ

    第89回(2016年)アカデミー賞で名誉賞を受賞した94歳の巨匠フレデリック・ワイズマン監督によるドキュメンタリー。親子3代に渡って55年間ミシュランの三つ星を持ちつづけ、グリーンスターに輝く最高峰のフレンチレストラン〈トロワグロ〉、その脅威の秘密に迫る。第58回全米映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞、第89回ニューヨーク映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞、第49回ロサンゼルス映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞ほか数々の賞を受賞。
    • 映画監督

      清原惟

      とにかく美しい料理と、美しい所作と、それができるまでの過程を丁寧に撮っていて、一生のうち一度でいいから行ってみたい、と思わされる。こだわり抜かれた料理を作るためのシェフ同士の本気のディスカッションが、じっくり映されているのはワイズマンの映画らしい。一方で、時折はさまれる食材や料理、風景の実景カットも五感が刺激され魅力的だった。長尺の作品だが、一つひとつの食材の生産者への取材も含まれていると考えると、このボリュームになるのは必然なのかもしれない。

    • 編集者、映画批評家

      高崎俊夫

      美しい自然に囲まれたフランス中部のウーシュにあるレストラン〈トロワグロ〉の料理人たちがワイワイ言いながら近所の川で魚をとり、野菜をつんでいる至福に満ちたシーンを見ながら、フランスは農業国だったんだなとあらためて思った。まるでジャン・ルノワールの「ピクニック」(36)を思わせる豊穣なる風景のなかで、ワイズマンは、〈トロワグロ〉が優雅な美食家たちに愛される秘密をあらゆる角度からみつめて、そっと差し出す。これはブリア=サヴァランの向こうを張ったワイズマン流「美味礼讃」でもある。

    • 映画批評・編集

      渡部幻

      料理に集中する人間の表情と全肉体の動作はあまりに魅惑的なので、しばし時を忘れる。フレンチ・レストラン〈トロワグロ〉の内幕を追って「偉大な芸術家のアトリエを見るよう」と語るワイズマンのカメラにも穏やかな集中美がある。職人技の美学、客の望みを共有して実現する、もてなしのプロフェッショナリズムとエレガンスに見惚れる内に4時間が瞬く間に過ぎていく。代々受け継がれてきた過去の蓄積が子供世代の未来に繋がることを願う終幕の言葉と共に、この映像作品もまた芸術へと昇華されるのだ。

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