時々、私は考えるの映画専門家レビュー一覧

時々、私は考える

「スター・ウォーズ」シリーズのデイジー・リドリーが主演とプロデュースを務めるヒューマンドラマ。人付き合いが苦手で“死”の空想にふけることが唯一の楽しみのフラン。職場の新人ロバートとのささやかな交流をきっかけに、彼女の生活は煌めき始めるのだが……。共演はTV『ラミー:自分探しの旅』のデイヴ・メルヘジ、Netflix『ケンタウロスワールド』のパーヴェシュ・チーナ。監督は、2023年インディワイヤー誌が発表した《注目の女性監督28人》に選出されたレイチェル・ランバート。
  • 俳優

    小川あん

    舞台はポートランドに近い、オレゴン州の港町。その閑散とした町とは裏腹に、陽気な地元の人々。主人公のみが寂寥感ただよう町の空気感を背負っている。監督はフランの特徴に焦点を当て、生活の細かい隙間まで冷静沈着に設計している。おそらく就寝時間にも誤差がないフランは新しい同僚に出会い、寝室脇にあるデジタル時計の時間が進んだ。彼女の微細な感情の変化に至るまでの貴重な時間を体験。エニェディ・イルディコー監督「心と体と」と並ぶ、静かに心に残る稀有な良品質の作品。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    人づきあいに悩んでいる、というよりみずから孤独を選んでいるようにしか見えないフランの芯にあるのは、無価値な自分は誰からも愛されるはずがないという思いこみなのだろう。自分を愛することができない彼女は当然空想の世界に生きざるをえないのだが、ロバートの出現が彼女の硬い殻にひびを入れはじめる。状況を打開しようと主人公が行動する瞬間がほぼ終盤に至るまでないので、その意味で「何も起こっていない」かのように見える映画だが、その「何もなさ」はなんと豊かで変化に満ちていることか。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    「スター・ウォーズ」のレイ役でブレイクしたデイジー・リドリーの主演・プロデュース作。常に自分の死にまつわる妄想を考えている地方都市の孤独なワーキング・ウーマンが職場に新たに入った男性などとの出会いによって徐々に変化していく様子を描く。彼女にシンパシーを持つ人はいるのだろうと思うが、いかんせん物語のグリップ力が弱すぎる。女優プロデュース作はより自分が綺麗に見えるか、または極端にネガに見えるかをやる傾向があるが、これは後者。妄想シーンの美学的な世界に星ひとつ追加。

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