保護者・教育関係の方へ

映画は人生を濃く深くし、頭を良くする

映画は人生を濃く深くし、頭を良くする

感情をアウトプットする良さ

私は子どもの頃から映画を見るのが好きで、中学生の時、『レベッカ』(アルフレッド・ヒッチコック監督)を見て学校で友達に延々と話したことを覚えています。勉強法にも通じることですが、映画について話す=アウトプットすることで、映画の記憶が残りやすい。さらに、映画感想文を書くことで、自分がその映画をどう受け止めたのかがよりくっきりとしてくるわけです。映画を見て感じたことをもう一度思い返す、それによって、見た意味を自分でつかまえることができます。人間の頭は書くことによってきたえられるもの。映像で見たことについて書くわけですから、現実の体験を文章にするのと近い部分があり、文字で書かれた本を読んで書く読書感想文とはまた違った面白さがありますね。映画感想文を書くのは自分の心を見直すよい機会。登場人物の気持ちになって考えをふくらませることで、他人の心を理解する=「他者理解」にもつながっていきます。

「そのときの自分」の記録になる

私は今も年に365本以上映画を見ますが、感想をエッセイに書いたり短いメモで残しています。文章に書くとその映画の記憶が一生残るんです。あとで読み返して、映画をあのときはこんな気持ちで見たんだなぁと思ったり。もし中学時代に『レベッカ』を見て友達に話したことを映画感想文で残していたら、「中学生の自分は、こんなふうに見ていたんだなぁ」と思ったでしょう。同じ映画でも、小学生の時に出会うのか中学生の時か、あるいは大人になって出会うのかによって、感じるものは違ってきます。感想文として残しておくと、「あの頃はこうだったんだな」と自分自身を思い返すことができる。自分と映画との出会いを大事にしてほしいですね。

臨場感を大事に、気軽に書こう

いい映画感想文は「ポイントがくっきりした感想文」だと思います。あまりむずかしく考えないで、「映画体験したことを書くんだ」と思って始めてみてください。映画ってテーマパークみたいなものだから、そのテーマパークの中で一番良かったアトラクションを3つ選んで、「それについてこう思った」と始めれば、気楽に書けるのではないでしょうか。「感動したから」「泣けたから」というよりも、「この3つ!」と具体的に挙げると、読む人も「その3つかぁ」とよくわかるし、その映画が見たくなります。その映画の世界に入り込んでいることが伝わってくる、映画への「引き込まれ感」が大事。映画には、たくさんの人生を生きた気持ちにさせてくれる良さがあるので、新たな出来事を体験したと思って書くと、臨場感あふれる文章になります。

臨場感を大事に、気軽に書こう

映画は、才能と手間とお金と時間がぎゅっと込められているエンタテインメント。その世界に入り込むことで、贅沢でスペシャルな時間を過ごすことができます。映画を見ることは人生を濃く深くしてくれるもの。たくさん映画を見ている学生と話すと、言うことがやはり面白いんです。世界が広がって物の見方が面白くなります。また、頭が良くなることにもつながります。テレビは説明的な部分が多いので、映画のような複雑なつくりを理解するのが難しくなってきています。映画は説明なしに時間の順番が入れ替わったりすることも多いですが、それを理解して見ないと物語がわからなくなるので、映画を見ることで「文脈力」が養われます。その中で今この人がどういう気持ちでこれを言っている、ということをわかってないと筋が読めないという意味では、「他者理解力」が自然に身についていきます。人物への「共感」を中心に映画感想文を書くのもいいし、主人公じゃなくその友達やお母さんに感情移入したらこう見えた、なんていう感想文も面白いですね。

中学生時代の感覚を大切に記録して

中学生部門ができたそうですが、映画によって世界を広げていくのにふさわしい年齢ですし、とてもいいことだと思います。悪の部分や暗い部分、人生の苦味など、道徳で習うものとは違う要素が映画にはあって、成長していく段階で世界が広げられていくのがとても面白いことです。映画はエンタテインメントという楽しみのためのものですが、それを見て感じた想いを文章にすることで、しっかりとした「意味」として残りますね。

映画と映画感想文で世界を広げよう

映画は、生きていく世界をさらに濃く広げるものであり、スケールも大きいので、この世に生きている意味というものを学ぶのにすごくいい教材だと思います。子どもの時に見ると世界が広がります。その気持ちを、誰かに話すように文章で書くことで、見た意味を自分でもちゃんとつかまえることができるというのが映画感想文の良さ。ぜひ! おすすめです。