ハマーフィルム製のいかにも英国らしいブラックコメディです。
この映画の近作では精神的に壊れた老婆の役が多かったデイビス嬢ですが、ここでは揺ぎ無い自信に溢れたサティスティックな女家長を流石の貫禄で演じています。
齢を取って体力は衰えても子供達を精神的財力的に完璧に縛り付けて自立を拒む様子は爽快ですらあります。
お洒落な眼帯を付けて2階の自室から芝居っ気たっぷりに自分のテーマ曲「ドナウ川のさざなみ」のレコードに合わせて下りてくる登場シーンから実に好調で、本作の6年前に封切られた「何がジェーンに起ったか」よりも若返って見え、今年こそはデイビス母のクビキから逃れ様とあがく子供達とその配偶者達は役者が違いすぎて気の毒になります。
子供達では母親に完全に屈服した倒錯者の長男を演じたJames Cossins(「小さな恋のメロディー」の校長先生)が面白くも憐れな迷演技を披露しています。
一部の方は居た堪れなくなるかもしれない毒が有りますが、私は楽しめました。お薦めです。