有名な連続講義の映像で、こちらは日本語字幕付き。日本語の字幕は、ちょっと不適切な翻訳が目立ちます。"appoggiatura" を「前打音」としていますが、和声について説明しているところなので、「倚音」とするべきでしょう。この手の「?」が、結構あります。
バーンスタイの講義内容は、初出時から賛否両論でしたが、とくに前半部分はあまり感心しませんでした。チョムスキーの生成文法を音楽にも当てはめようとしていますが、かなり強引だし、説得的な根拠があるとは思えません。また、生成文法を適用したことによって、何か新しい示唆や知見が得られているかというと、それもあやしい。言語の起源と音楽の起源の比較も、ほとんど思いつきにしか聞こえませんでした。
楽曲の分析そのものは、さすがに聴き応えがあります。これはすばらしい。「田園」も「春の祭典」も「オディプス王」も、さらにはシャブリエのスペイン狂詩曲も、微に入り細にうがって分析されています。「ピエロ・リュネール」をピアノで弾き語りしちゃっているのも、唖然です。決してうまくはないけど、この曲を弾き語りで楽曲分析するなんて、他に誰ができるっていうんですか! あと、詩について造詣が深いのも感心しました。
曲の演奏は、モーツァルト40番と「田園」はボストン響のノリも悪くイマイチですが、「トリスタン」前奏曲と「エディプス王」は超名演と思います。前者は、おそーいテンポで晩年のバーンスタインのスタイルを暗示しています。後者は、この曲の決定盤といってもいいくらいの演奏では?
★4つにするか迷いましたが、空虚な前半の講義が長すぎるのと、全体の演出がわざとらしすぎるのを考慮して、★3つ。