下鴨一家が総お目見えする「母と雷神様」。夷川の金閣、銀閣、海星(声だけだが)も初めて顔見せ。各キャラクターの位置付けが見えてくる。見所は、蛙になった井戸の底の矢二郎の振る舞いの可愛らしさ、黒服の王子に化けた母のあでやかさ、下鴨神社のきざはしで、雷を恐れる母の下に集まった(井戸に籠った矢二郎を除く)息子3人の中心で家族を束ねる母の偉大さだろう。本シリーズは下鴨一家に留まらず、赤玉先生や弁天も疑似家族あるいは家族を求める孤独者として「家族にかかわる思いの織り物」となっていくのだが、そのベースが語られている、シリーズの要になる大切な回だ。
第三話「薬師坊の奥座敷」は、五山の送り火を毎年のごとく空から楽しむために、矢三郎が薬師坊から「空飛ぶ奥座敷」を借りようとするが、薬師坊はそれを弁天に譲ってしまっていたので、弁天に借りに行く話。京都の町屋の奥が不思議なことに海辺に繋がっていて、弁天はそこでクジラの背に乗ったり尾を引っ張って空に持ち上げようとしたりして遊んでいる。原作者:森見先生がどんな絵になるかと期待していたシーンがこれだ。何でも持っていて、何でもできる、勝手気ままに面白可笑しく過ごしている弁天の、それでも満たされていない悲しさが、このあたりから漂って来始める。
原作者:森見登美彦とキャラクター原案:久米田康治による作家対談ではキャラクター作りの苦労、声が付くことのドキドキ感が語られる。
このアニメのPVはどうも作品が全話完成した後で作られたもののようで、印象の強い場面が次々と現れて実にドキドキさせられる。
第二話のキャストコメンタリーは矢三郎役の櫻井孝宏さんリードの下、母役の「井上喜久子17歳、おいおい」が下鴨母への愛を語る。
スタッフコメンタリーでは森見先生、吉原監督、堀川プロデューサー、武井プロデューサーの4人が、OPテーマの選定理由、下鴨母のポニーテール姿はバカボンママと言われているとか、お気に入りのキャラ、作家とアニメ監督のスタンスや役割の違いや、森見先生が一つの言葉が書きたかったことから文章が流れ出し絵になり音が付いていって森見先生がそれを気に入るといった不思議な縁が興味深い。
ジャケットはビリアード場で矢三郎お嬢様と矢四郎坊ちゃんの前に立ちポーズを決める黒服の王子:下鴨母。
満腹である。いやー、美味かった。