「国境の風よ、俺の足跡を吹き消してくれ」と、さびれた酒場でギター弾きが歌う。ふらりと入ってきたジェス(オーディ・マーフィ)を見て歌の拍子を変える、
「メキシカンブーツにカウボーイハット、腰には低めに下げた拳銃、誰にでもわかるさ、お前はガンファイター、人呼んでTEXICAN」
このTEXICANが映画の原題だ。明らかに単数、一匹狼。テキサス群盗団なんて出てこないよ。こんな題、誰がつけたのかな。第一、『群盗団』て何?強盗団、窃盗団ならわかるけど群盗団なんてクスリ屋の薬局みたいじゃない?
邦訳も下手。ジェスが街にやってきて、さっそく親玉ルークに出くわしてしまう。子分が2人後ろにいるのでルークは強気、しかし、ジェスは言い放つ「最初に死ぬのはお前だ」つまり、後ろに何人子分がついていようと、関係ない、子分がジェスを撃つ前にジェスがルークを殺すということ。だからルークもたじろいだ。しかし映画の邦訳は「この距離なら外しっこないからな」だって! 間抜けな訳文だ。私が4つ星にしたのはこれが理由。
ほかのところはカッコいいよ。 荒涼としたメキシコの山、谷間を抜けて一人愛馬に乗って敵地に向かうジェス。目の前に光る国境の川。ふと馬を止めて振り返り、そっと帽子に手をやる。「Adios、メキシコでの平穏な日々」
真っ赤な夕日がメキシコの山に沈む。
町はずれの1軒屋。恋人を殺された女が一人住む。荒野を背景にベランダに咲いた赤い花2輪
そして最後は砂嵐吹き荒れ、太陽の光もかすんだ街で3対1の銃撃戦
ともかくカッコよさそうな場面だけつなげたみたいな映画だから、話の整合性なんかあまり気にせず、楽しんで見てください。
主演のオーディ・マーフィはハリウッドでまだ売れない頃、ボクシングジムで寝泊まりしていたことがあったとかで、殴り合いのシーンに迫力がある。小柄な体を目いっぱい使ってぶんなぐるのが小気味よい。こんなこと書いているとやはり5つ星つけたくなってしまうなぁ。