【収録作】
●Disc 1『神秘の騎士』 Il cavaliere misterioso('48年/白黒/91分)イタリア。
監督:リッカルド・フレーダ 出演:ヴットリオ・ガスマン、イヴォンヌ・サンソン。
衣装は後にアカデミー衣装デザイン賞を2度受賞するヴィットリオ・ニーノ・ノヴァレーゼ(『クレオパトラ』レニー・コンリー、アイリーン・シャラフと)
●Disc2『かくてわが恋は終わりぬ』 So little time('52年/白黒/84分)イギリス。
監督:コンプトン・ベネット 出演:マリウス・ゴーリング、マリア・シェル。
●Disc3『罪ある女』 Die Sünderin('51年/白黒/83分)ドイツ。
監督:ヴィリ・フォルスト 出演:ヒルデガルト・クネフ、グスターフ・フレーリッヒ、ロバート・メイン。
●Disc4『日曜日の人々』 Menschen am Sonntag(‘30年/白黒/サイレント/98分)独。
監督:ロバート・シオドマク、エドガー・G・ウルマー 出演:ブリジット・ボルヒェルト、ヴォルフガンク・ヴォン・ウォルターハウゼン。
●DISC-5『世界の涯に』 Zu neuen ufern(‘37年/白黒/98分)独UFA
監督:ダグラス・サーク 出演:ツァラ・レアンダー、ウィリー・ビルゲル、カローラ・ヘーン。
解説リーフレット:Disc1-3村山匡一郎氏(映画史評論家)、Disc4川本三郎氏(評論家)、Disc5樋口泰人氏(映画評論家)。
DVDとしての画質は格別美しくは御座いませんが時代(1930~1952)を考えれば充分許容範囲。
メニュー画面から日本語字幕のON/OFFとチャプター選択が行えます。
他の映像音声特典は御座いませんでした。
(以下、内容に触れています)
1は稀代の才人カサノバの性豪ではない英雄的面をクローズアップした作品。
「苦い米」「シャーキーズ・マシーン」等でも知られている息が長い2枚目スター、ガスマンの若い颯爽とした姿を拝見出来ます。
監督はホラー・ファンにも有名な(イタリア最初のホラーと言われる「吸血鬼」や不定形怪獣物『カルティキ』を撮った)リッカルド・フレーダ監督。
彼が剣劇物など幅広く娯楽映画を手掛けた職人監督だった事も窺えます。
2は英国製ながらベルギー占領軍の独司政官ホーヘンゼー(マリウス・ゴーリング「天国への階段」『赤い靴』」と司令部として接収された屋敷の音楽校生(マリア・シェル)がピアノを通じて心を通じて行く様子を描いたメロドラマ。
ゲルマン系としては小柄で演技力が有った世界的女優、マリア・シェルが可憐。
マイケル・パウエル、エメリック・プレスバーガー・コンビ映画の常連のゴーリングが得意のドイツ語を活かしてインテリの中年ドイツ将校を渋く演じています。
3は奔放な母親を憎みつつも己が肉体を金品で売る事に躊躇しない美しい娘マリーナ(ヒルデガルト・クネフ「暁前の決断」「キリマンジャロの雪」「魔獣大陸」」が、不治の病に侵された画家に己が愛全てを捧げる様子を描いたメロドラマ。
ドイツでは国民的女優だったクネフの我が国では紹介される事が少なかった主演映画。
戦後西ドイツで初めてヌード・シーンを演じた事でスキャンダルと名声を共に受けました。
戦前から活躍したヴィリ・フォルスト監督(『未完成交響楽』『ブルグ劇場』)の倒叙式でクネフの独白を多用した独特の演出が印象的。
自身ナチスのドイツ女子同盟出身で、進攻してきたソ連兵に暴行され、進出したハリウッドでは前歴からいびり出されたクネフが「汚れてしまった」人物に残った真摯さを演じ、復興途中のドイツ人の共感を得たのも納得の作品。
4は単品販売も有り、同メーカーの「エドガー・G・ウルマー傑作選」にも収録されていた、後に亡命して名を成すドイツ系映画人、ウルマー以外でもロバート、カートのシオドマク兄弟、フレッド・ジンネマン、オイゲン・シュフタンそしてビリー・ワイルダー等錚々たる面子が関わった瑞々しい映画。
サイレントですが、まだナチが台頭する前の自由で明るい最後の時代を現在も行楽地として有名なニコラス湖、ヴァンセーをロケ地に取られた若い恋人達(ほとんどが素人)の姿が貴重です。
5.後にハリウッド一のメロドラマの名手として名を成すダグラス・サークが本名の「デトレフ・ジールク」時代に英国領オーストラリアを背景に撮った作品。
既に単品販売もされ、「ダグラス・サーク傑作選DVD-BOX3」に収録されています。
ポスト・ディートリッヒを探していたUFAの社命により深いアルトの歌手であったレアンダーの売り出しに成功した作品。
スタンダードとなる名曲「私は雨の中に立つ(Ich steh' im Regen)」や野卑な「私は処女よ(Ich bin eine Jungfrau)」が印象的だが、レアンダー流転の元凶となる軍人フィンズベリー大尉(ウィリー・ビルゲル)のどっちつかずの様子が、後のサークのお気に入りのジョージ・サンダースに通じる所が有り見物。
どれも古い映画ですが見所が充分に有ります。
ただ、DISC4,5は既に他のDVD-BOXや単品販売がされている物で(しかもピクチャー・ディスクのデザインがその時のママ)、既にお持ちの方は重複が気に為る所。
それと本シリーズ伝統だったデジパック仕様を止めて、書店で販売しているDVD-BOXの様なプラスックケースに変更されたのも残念です。
ただ、全作未見の方で古き良きヨーロッパ映画,、特にメロドラマがお好きな方にはお薦めです。
個人的には2-4が気に入りました。
後、5のレアンダーは流石に歌手が本業だけに素晴らしい歌声を聴かせてくれます。