『破壊!』(Busting)('74)
出演∶エリオット・グールド、ロバート・ブレイク、アレン・ガーフィールド、アントニオ・ファーガス、マイケル・ラーナー、コーネリア・シャープ、エリン・オライリー
監督:ピーター・ハイアムズ
1970年前後から、アメリカ映画ではポリス·アクションものが花盛りとなる。『ブリット』『フレンチ·コネクション』『ダーティ·ハリー』などが、一世を風靡した。この映画が作られたのは、反体制的なアンチ·ヒーローがもてはやされたアメリカン·ニューシネマの時代の末期頃だ。ニューシネマの1つに分類されることもある。
同じくニューシネマの代表作と言われる『M★A★S★H』『ロング·グッドバイ』に主演したエリオット·グールドと、人気TVシリーズ『刑事バレッタ』の主演で知られるロバート·ブレイクが、上層部の圧力を屁とも思わない無頼派刑事バディを組む。ある時は、熱血刑事、またある時は、飄々とルール無視の無軌道捜査をやってのけるオトボケ刑事が八面六臂の大暴れをする異色刑事ドラマだ。
本作は、ニューシネマの代表傑作として名を馳せることもなく、同時代の『フレンチ·コネクション』『ダーティ·ハリー』やのちの『リーサル·ウェポン』『ダイ·ハード』のようなポリス·アクション映画の人気作でもない。ある意味、それらの作品群に埋もれてしまったのかもしれない。監督は、のちに『カプリコン·1』『2010年』で有名になるピーター·ハイアムズ。俊英職人監督のデビュー作の隠れ傑作だ。
[物語] L.A.市警の風紀課に勤める刑事、キニーリー(グールド) と相棒のファレル(ブレイク)は売春婦を摘発する仕事に就いていた。ある日、二人はジャッキー(シャープ)という高級コールガールを逮捕する。だが、いつの間にか押収した証拠品の買春顧客メモは保管所から紛失し、女は釈放されてしまう。署長を始め、有力者が顧客だったため、もみ消されたのだ。
売春と麻薬の温床と目されるポルノ·ショップを捜査した二人は売春婦を逮捕するが、麻薬について、それ以上追及する許可が出ない。ショップの経営者で、麻薬と売春の元締めと思われるリゾー(ガーフィールド)は、表向きは市の有力な実業家で篤志家。市や警察のお偉方と癒着しているらしい。諦めない二人は、命令無視で深夜のポルノ·ショップに侵入し、手下たちの取引現場を押さえる。
犯人たちと撃ち合いになり、数名がショップを脱出し、近所のマーケットの雑踏に逃げ込む。一般人も巻き込む銃撃戦の末、ほとんどを倒すが、応援の巡査たちのドジで一人を取り逃がす。上からそれ以上の捜査を禁じられた二人は、公衆便所に出没する変質者を捕まえるというケチな仕事に回される。フラストレーションの溜まった二人は、のうのうと暮らすリゾーを訪れて挑発したり、果てはリゾーの愛車に放火するなど、掟破りのやり方でリゾーに宣戦布告!
鼻息の荒い二人であったが、リゾーの罠にハマってしまい、手下たちの袋叩きに遭い、半殺しの目に……。暴走捜査の報いで、二人はバディを解散させられる。それぞれ若手刑事と組まされて、当たり障りのない仕事で教育係をするハメになる。決してリゾー逮捕を諦めていない二人は、ある時、麻薬関与の証拠を決して握らせないリゾーのカラクリに思い当たり、再び暴走捜査を開始……!
『ブリット』や『フレンチ·コネクション』のカーアクションほどのド派手な見せ場はない。だが、麻薬取引現場からマーケットの銃撃戦までの流れるようなアクションをハンディカメラで追いかけるシークエンスは、スリリングで躍動感に溢れている。(ハンディカメラが乱闘の渦中に飛び込んでブレまくる『仁義なき戦い』とは、また違った味わい?) まだ30歳というハイアムズ監督の若い才気のキラメキが随所に見られる……と言ったら褒め過ぎかな(笑)