原作者マメット自身の経験を元に作られたストーリー。もともとはアル・パチーノがティーチ役を演じた舞台劇を、ダスティン・ホフマンが映画という媒体で熱演したもの。マメットが脚色し、何度でも再現可能な「映画」としてハリウッドから送り出された心理サスペンスドラマ。
手元をアップにカードをしている「映画」ならではのシーンから始まるが、その後、舞台劇さながら、ほとんど古物店内からカメラは出ない。登場人物は3人。
コインの知識がないまま、5セント硬貨"アメリカン・バッファロー"を安く売ったことを悔しがる古物店主ドニー(デニス・フランツ)。かわいがっているボビー(ショーン・ネルソン)とともに盗み返す計画を立てていたところへティーチ(ダスティン・ホフマン)がやって来て話をかき回す。
すっかり欲に目が眩む2人の大人。培った友情や忠誠心が、裏に存在する私利私欲のために簡単に壊れていく様が、リアルに繰り広げられる。ティーチとドニーが小さな一個のコインをめぐって繰り広げる台詞の応酬は、お見事の一言に尽きる。時間と共に興奮し激しくなるティーチの台詞と戸惑うドニーのやり取りは圧巻。舞台劇として当たった理由を理解すると共に、映画として撮っておきたかった理由も解った気がする。