前巻収録の第5・6話を「羽佐間翔子編」と呼ぶとするなら、今巻収録の7・8・9話はさしずめ「春日井甲洋編」と呼ぶべき内容ですね。
翔子が、非常に恵まれた環境で育成されていたのに対し、同じ境遇でありながら、甲洋はあまりにも対照的な環境下で育成されていた事実が明かされ、そのことが彼の人格形成に大きな影響を与えているわけですが、こういった描写を過剰なほど詳細に行っていることが良くも悪くもこの作品前半の特色となっています。これは『エヴァンゲリオン』で象徴的に採られた手法ですが、演出面や魅せ方と言った点でアレにはイマイチ及ばないと感じられてしまうため、残念ながら二番煎じと言った印象を受けてしまう作品ですね。
また、ロボット物としては派手な戦闘シーンや魅力的な敵役、戦場のリアリティ、敵を倒す爽快感といった要素が薄いため、従来のバトルアニメファンにも少々受け入れられ辛い作品になってしまっていると言う印象ですね。
その分キャラクター描写はしっかりしており、甲洋のストーリーも、非常に味わい深く描き出されています。想いを寄せていた翔子が逝き、その翔子が思いを寄せていた一騎が翔子を守れなかった、実は翔子を守れなかったのは自分も同じであることは痛いほど理解していて、怒りの矛先を一騎に向けるのは転化であることも判ってはいるが、それでも一騎への対抗心は抑えきれず無謀な戦いへと赴いてしまう。そんな甲洋がたどった結末、そしてそれを受けた大人たちのあまりにも身勝手な振る舞い。ある意味美しく結実した「翔子編」に対し「甲洋編」は痛々しくやりきれなさを感じさせます。
こういった対比の魅せ方は悪くないのですが、残念ながら翔子と甲洋、声優さんの差が少し感じられたのも事実。「翔子編」の鬼気迫る迫力には及ばなかったと言うのが率直な感想ですね。