レイ・ハリーハウゼンが恩師ウィリス・H・オブライエンの台本を元に完成させた入魂の一作。ウエスタン×恐竜という、まさに想像力溢れるオブライエンならではの作品である。未開の「禁断の谷」に恐竜や翼竜、はたまた馬の祖先などが生息しているという、いわゆるロストワールドものだが、少しスケールに欠けるのが難点か?このあたりが、当時何故か興行的に伸びなかった理由ではないか、とは良く言われていること。
しかし、グワンジの動きを見よ!もはや「生きている」としか言いようがない(?)ほど生命感を宿しているではないか。しかも、捕獲するために投げ縄のロープで首を巻き付けたり、それをもがきながらもほどいてゆくグワンジの生命力!キングコング同様、町の見せ物にされるが、お約束だが檻が壊され町にでて、町は一大パニックと化していく。ダイナメーションによるグワンジの動きはもはや「完成形」である。短い手で頭を掻いたりも、キングコングに登場するティラノサウルスを意識してのこと。そして最初のグワンジの登場シーンは、まるで画面に殴り込んで来るようで、なかなかショッキング。このあたりは「ジュラシックパーク」そっくりなのはファンなら誰でも気付く。ILMスタッフもかなり意識した様子であることがわかる。メイキングでも言われているが、本当にこの作品に影響を受けていない、その後の恐竜やモンスター映画はないのではなかろうか。
主演はジェームズ・フランシスカスで、探偵ものTVシリーズ「ロングストリート」等で人気のあった方である。「コンコルド」等、映画はB級作品も多いが、なかなかのタフガイぶりを見せる好漢。ヒロインのギラ・ゴラン(凄い名前だ)は、他の作品は知らないが、魅力的な女優さんではある。それまではこういった役者さんと恐竜等のモンスターとの絡みがあまり観られなかったものだが、画期的だったのは、俳優との合成の見事さであること。特にグワンジを両方から投げ縄で馬で引っ張る→グワンジは抵抗する、といったシーンはジープに縄をかけて引っ張るなどの撮影をして合成したようだが、どうみても、本当にグワンジに縄をかけて引っ張っているように観れる。そう、もっと簡単に済ませるのであれば、人間や乗る馬もアニメートすれば良いのである。しかし、あえてやっていない。デジタル技術がない時代のこと、アイデア、そしてとてつもない時間と労力、さらにモデルに生命を宿させようという熱意から生まれた賜物とも言えるのではないか。さすがハリーハウゼン、としか言いようがない。しかしいかんせん、先述のように興行的には失敗した。製作のチャールズ・Hシニアとハリーハウゼンは、この後、再度シンドバッドシリーズを手掛けることになる。実は、このコンビでは最後の恐竜モノになったのだ。本DVDは価格も安く、手に入れやすいものの、本当はBlu-rayで観たいところ。Blu-ray化を期待したいが、DVDでも十分画質は悪くないのでご安心を。ぜひ、よく動き回る恐竜グワンジを多くの方に楽しんでもらいたいと思う。