中学校の部
最優秀賞
皆さんは、当たり前だった現実が一瞬で変わってしまい、受け入れられなくなってしまったことはありますか。私が観た「君たちはどう生きるか」という作品では、ある日突然生活が一変してしまった少年の不思議な冒険が描かれています。
この物語の舞台は、戦時中の日本。ある日主人公の眞人が鳴り響くサイレンの音で目を覚ますと、遠くで火災が起きていました。しかもそこは母の入院している病院で、母はこの火災によって命を落としてしまいます。これをきっかけに眞人と父は東京を離れ、母の妹で継母となる夏子と共に生活をすることになります。この場所で眞人は青サギと人間の姿を行き来するサギ男に出会います。そのサギ男に導かれ謎の屋敷の中に入り、生と死が一体となった不思議な世界へたどりついた眞人。また、夏子さんもその不思議な世界から戻って来ることができていませんでした。そんな夏子さんを救うためにもと、不思議な世界で奮闘する眞人の姿が描かれていました。
眞人が夏子さんのことを「おばさん」ではなく「夏子母さん」と呼んだ場面では、衝撃を覚えました。それまではお母さんが亡くなってしまい、夏子さんが新しいお母さんになることが受け止められず「おばさん」と呼んでいましたが、様々な苦難を乗り越えていく中で現実を受け止めていき、夏子さんのことを「夏子母さん」と呼べるようになった眞人の成長の姿が見られたからです。眞人の成長していった姿から、現実を認め、過去にとらわれずに新しい世界を受け止めて進んでいくことの大切さを感じました。
私は今、「神経性食思不振症」という病気になっています。この病気は摂食障害の一種の精神疾患で、極端な食事制限と痩せを示すのが特徴です。母に連れられて病院を受診した際、学校にも習い事のバレエにも行ってはいけないと言われ、なんでこんなに元気なのに生活を制限されなくてはいけないのかという怒りのような悲しみのような感情がわき、現実が受け止められませんでした。しかし、インターネットで自分の体重と適性体重を見比べていく内に自分の体重は低すぎるのかもしれない、だから制限されているんだと現実を受け止めることができました。今は以前よりは体重も戻り、食事量も増えてきました。この調子で眞人のように現実を受け止め、病気を治してみんなと笑顔で食事をしたいです。
この映画は強い感動を覚えるような作品ではないけれど、人によって様々な捉え方をすることができます。私の父は自己中心的な考えや振る舞いをしてしまうのはよくないと感じ、母は様々な境遇に対して自分で考えて行動する眞人の強さを感じたそうです。この映画には様々な生き方のヒントが隠れています。これを観て、多くの人々が生き方のヒントを見つけてくれたら嬉しいです。
中学校の部
最優秀賞
「スピリットとオポチュニティに築かれた探検の物語は、次のローバーへと引き継がれます。」人々が見守る中、ローバーを乗せたロケットが暗闇に光を与える。夢はまだ終わっていないのだ。私たちが諦めない限り。
きっかけは推奨映画であったことだ。ただ、科学部に所属し、宇宙の神秘にはとても興味がある。そのぐらいに思っていたのに、見終わった後、涙が出ていた。
この映画はNASAが開発した双子の探査車、「オポチュニティ」と「スピリット」が想定を遥かに超える長期間の活動を行い、火星調査に多大な貢献をした実話だ。
最も印象的だったのはロボットと人間との家族のような絆だと思う。問題に直面するたび、丁寧に実証し解決していく。何度失敗しても諦めず、その姿はまさに娘たちを想う親、家族そのものだった。その想いに応えた娘たち。このシーンが実話だなんて思えず、胸が熱くなった。そこまでしてチームが一丸となって突き進めた原動力はいったい何だったのだろう。私はそれについて考えてみた。
ある技術者がこう言った。「ラジオの中に人がいるのかと思った。開けたら誰もいなくて失望した。だからエンジニアをしている。」その言葉を聞いて私は驚いた。ちょっとしたきっかけでこんなに大きなプロジェクトの技術者をしているのか、と思ったからだ。だが、NASAの研究チームにはそんな経験者が集まり、一つになっているのだ。
私の夢は何だったのか、と改めて考えてみた。保育園の頃は花屋、小学校の頃はパティシエ、それだって当時の私にとって大きな夢であり憧れだった。今の私はどうだろう。夢として思い描いているものがないのが現実だ。NASAに入るだなんて非現実的で考えもしないことだ。いつの間にか手が届かないものは追い求めないようになってしまったのかもしれない。
このチームの人たちは、幼い頃のたわいもない疑問や気づきからこの長期にわたる大きなプロジェクトを成功させた。夢はちょっとした疑問や気づきから生まれる。そんなちょっとしたことでも無視をせず、向き合うことが大切だということに気づいた。そして自分で自分の限界を決めずにやりたいことに従順に。
念願叶ってプロジェクトが動き出した後も夢中になってまた次の段階に進んでいく。そうか、まだまだ夢の途中なのだ。私も夢中になって夢を追い続けてみたい。叶う夢、叶わない夢、いろいろなことを経験してその先を見てみたい。そのために、私はたくさんの出会いや気づきを大切にしていこうと思う。
夢と感動を与えてくれた姉妹は実は火星のどこかで出会っていて、次の探査車が自撮りじゃないふたりを映し出す。そんな続きを思い描いている。それが今の私の夢だ。