イケメンゾンビが奮闘する“ミックス・ジャンル”韓国ドラマ『ゾンビ探偵』

イケメンゾンビが奮闘する“ミックス・ジャンル”韓国ドラマ『ゾンビ探偵』

イケメンゾンビが奮闘する“ミックス・ジャンル”韓国ドラマ『ゾンビ探偵』

日本でも大きな話題を呼んだ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)の大ヒットをきっかけに、ゾンビたちが登場する作品群が次々と登場するようになった韓国。映画では、“夜鬼”と呼ばれる怪物から朝鮮を救おうとする王子と王の座を狙う重臣が死闘を繰り広げる時代劇『王宮の夜鬼』(18)、地方の村に突然、ゾンビが現れる『感染家族』(19)、そして、『新感染〜』のその後をスケールアップして描く『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)、ドラマでも『キングダム』シリーズ(19&20)や最新作の学園もの『今、わたしたちの学校は…』(22)など、様々なタイプの作品が作られ、“K-ゾンビ”という一つのジャンルを形成するようになった。

K-ゾンビの新境地を開く

そんな中で登場した『ゾンビ探偵』は「人間社会で生きることを余儀なくされた」1人のゾンビが主人公という点でとてもユニークだ。不気味な姿で人間たちを襲い、次々と数を増やしていくという、典型的な(?)ゾンビではなく、人間に噛みつかないように自制しながら暮らすために、歩き方を矯正するためトレーニングをしたり、(血管の浮き出た肌を隠すために)BBクリームを塗ったりといった涙ぐましい努力を見せていく。そして、ドラマが回を重ねるに連れて、なぜ、彼はゾンビとなってしまったのかという謎が、明らかになっていく。

物語の始まりは廃棄物が積み上がる山中。そこで目を覚まし、自分がゾンビになってしまっていることに気づいた男(チェ・ジニョク)は、驚きながらも、人間として生きていくためにトレーニングを始める。2年後、偶然、その存在を知ったキム・ムヨンという名の探偵の身分を借り、街で暮らすようになった彼は、時事番組『追跡70分』の放送作家であるコン・ソンジ(パク・ジュヒョン)と知り合い、彼女と一緒にある殺人事件について調査を始める。

“ゾンビ”を取り巻くユニークなキャラクターたち

 キム・ムヨンと名乗って自らの過去を探す主人公を演じているのは、『ジャスティスー復讐という名の正義ー』(19)で弁護士、『RUGAL/ルーガル』(20)では特殊能力を持つ元刑事と、様々な役柄に扮してきたチェ・ジニョク。鍛え上げられた肉体にメイクを施してゾンビになり切っている。人間に対する食欲を抑え、生の鶏肉やモツ肉をむさぼるように食べる姿や、異常に敏感になった嗅覚を生かして捜査を行うといったユニークな行動を、シリアスかつコミカルに見せている。また、自分の過去を知る悪役たちと対決する際にはキレのあるアクションも披露している。

そんな彼とひょんなことから出会い、調査能力を生かして協力するコン・ソンジ役は『人間レッスン』(20)で注目されるようになったパク・ジュヒョン。捜査を通じてムヨンとの絆を深め、ゾンビであると気付いた後も、名コンビとして彼を支えていく。そのほか、ソンジに片思いしている刑事チャ・ドヒョンを『医師ヨハン』(19)のクォン・ファウン、謎めいた獣医役を話題のドラマ『ストーブリーグ』(19)や『ペントハウス』シリーズ(20&21)に相次いで起用されているハ・ドグォンと、個性豊かな俳優たちが揃って出演している。また、ボーイズグループA.C.Eのメンバーたちが、ソンジの友人が経営するホルモン焼き屋のアルバイト店員として登場。ムヨンと一緒にゾンビダンスを踊る姿も見逃せない。

ミックス・ジャンルの楽しさ

ここ数年の韓国ドラマの特徴となっている“ミックス・ジャンル”を上手く取り入れているとことも、『ゾンビ探偵』の見どころだろう。ミックス・ジャンルとは「ラブストーリーXミステリー」、「ヒューマンXミステリー」というように、ひとつのドラマの中で複数のジャンルを掛け合わせて相乗効果を発揮させることを指す。『ゾンビ探偵』もそうした流れの中に位置する作品で、ゾンビ誕生にまつわるミステリーやスリラー、彼を取り巻く人々が巻き起こすコメディ、さらにはアクションまで、多彩な魅力が詰まっている。

このドラマを制作したのは韓国の公共放送局KBSで主にバラエティ番組を担当している芸能局。これまでにも『プロデューサー』(15)、『ゴー・バック夫婦』(17)といったドラマを生み出してきた部署のチャレンジ精神が感じられる作品となっている。ちなみに韓国では毎年年末に、地上波各局がそれぞれ、自局の番組を表彰するイベントを開催しているが、『ゾンビ探偵』は俳優たちが集まる『演技大賞』ではなく、バラエティ番組の祭典『芸能大賞』でベストチャレンジ賞に輝いている。

ソンジの姉夫婦や、ムヨンの事務所の向かいにある探偵事務所の凸凹コンビとのやりとりなど、にぎやかでコミカルなシーンと、ムヨンがなぜゾンビとなったのかというシリアスなミステリーのブレンド具合も絶妙で、最後まで見るものを引き込む。そのほか、ソンジの義兄が売れない映画監督で、『新感染 ファイナル・エクスプレス』の原題(『釜山行き』)を思わせる『釜山急行』というゾンビ映画を発表していたり、ムヨンが『パラサイト 半地下の家族』の家族たちのようにデリバリー・ピザ用の箱を作る内職をしたりといった、あちこちに散りばめられた遊び心も楽しい。

文=佐藤 結/制作=キネマ旬報社

『ゾンビ探偵』

●先行ダウンロード配信:全話好評配信中
●レンタル配信:第1話~第12話 配信中、第13話~第24話 2月2日配信開始
●DVDレンタル:Vol.1~Vol.6 レンタル中、Vol.7~Vol.12 2月2日レンタル開始
デジタル配信・DVDの詳細情報はこちら

●2020年/韓国/全24話
●出演:チェ・ ジニョク、パク・ジュヒョン、クウォン・ファウン、ファン・ボラ、アン・セハ、イム・セジュ、テ・ハンホ、イ・ジュンオク
●発売・販売元:ポニーキャニオン
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