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【あの頃のロマンポルノ】池田敏春監督による「私の次回作『スケバンマフィア肉刑』」

 2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。

 今回は、「キネマ旬報」1980 3月上旬号より、池田敏春監督による「私の次回作『スケバンマフィア肉刑』」の記事を転載いたします。

 1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく!

監督池田敏春 私の次回作『スケバンマフィア肉刑』

 カミソリを振り回して走りまくる女の子の話です。

 ガキの話はガキに撮らせろ、という会社の思惑なのでしょうか、お前、一本やってみろ、ということで、これが処女作ということになります。

 気持としては、元気のいい映画にしたいなあ、ということがあります。

 俺自身の性格がそうなんでしょうが、どうもショボクレて、暗っぽい映画というのは肌に合わず、冗談じゃねー、バーロー、という感じの映画、負けてたまるか、フザケロという感じの映画が好みなんで、素材がスケバン物ということもあって、まあ、ハネ返りの映画を作ってやろうという気でいます。

 ただ、何せ処女作、右も左も判らず、奇妙なことを平気で口走っては老練スタッフを苦笑いさせる始末で、その度毎に、うーん監督ってのは難しいもんだなあ、とバカのようなことを今更ながら思い知らせて言います。

 大体、初日のセットで、「テストーッ」とか怒鳴ったまま、”ヨーイ・ハイ”をかけ忘れて、シーンと静まり返った現場にいて、どうしたんだろう?とか思って、しばらくして、あ、そうだ、俺がヨーイ・ハイをかけなきゃいかんのだ、などと、これがプロの監督かと思うようなことをやっているわけで、一時が万事、目茶苦茶というか、支離滅裂というか、荒っぽさだけが取り柄の撮影を行なっています。

 まあ、言い訳をさせてもらえれば、こじんまりとまとまって、理路整然とした映画なんてのは、もっと年を取って、人生経験豊かになってから考えりゃいいわけで、とりあえず今は、何かこう、ワーッとか叫びながら走っとる映画を撮りゃいいな、と思っています。

 いざ立場になってみて、つくづく思うのは監督なんて、実にいい加減な根拠もないことをホザいてるもんだなあってことです。(もっともこれは俺だけの場合に限るのですが)

 何か上手くいかないことがあると、まあ、一所懸命に考えるのですが、所詮脳ミソはトーフだから、大してうまい考えは浮かばず、ボーッとした頭の中で、もういいやッ、とこれでやっちまえッ、知るかッてな具合にクソ度胸を決めて、もう開き直りの一手、肩肘怒らしてスタッフの前に出て、ハイ、これはこうしますッと怒鳴っちまうもんです。

 そういうことで言えば、ものを作るということは、一つ取って、他のもん全部捨てちまうってことなのかも知れません。捨てちまったものの中にもすごく大事なものがあるかも知れず、それは判らず、自分が選んだものに責任を持つってことなんでしょう。「スケバン・マフィア」ーーーー全部俺です。観て下さい。

文・池田敏春
「キネマ旬報」1978年12月下旬号より転載

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