いま話題の劇場公開作と合わせて鑑賞しよう――「カモン カモン」編

いま話題の劇場公開作と合わせて鑑賞しよう――「カモン カモン」編
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演技を超えた子役たちが、映画を名作に押し上げる

突然、9歳の甥っ子を預かることになった中年男ジョニー。互いに距離感を計りながらも、少しずつ、ゆっくりと打ち解けあっていく――。「ジョーカー」(19)の強烈な演技でアカデミー賞主演男優賞を獲得したホアキン・フェニックスが、前作とは一転して子供に振り回される役柄を好演した映画「カモン カモン」(21)が公開となり、評判を呼んでいる。その中でホアキン演じるジョニーと堂々わたりあっているのが、甥ジェシー役の新鋭ウディ・ノーマンだ。
繊細で早熟なジェシーは、時に自分よりずっと年上のジョニーより落ち着いた佇まいを見せ、それでいて無邪気さや子供特有の空気の読まなさも発揮。“子役”というよりも“若い俳優”と呼びたい存在感を放っている。

◇男の子たちが光る映画2選

子供ならではの感情表現や、あるいは子供らしからぬ大人びた子供キャラ、子供が主人公だからこそ成立しうる物語など、子役に焦点を当てて名作となった映画は多い。
その古典的な例が“喜劇王”チャップリンの初期の代表作「キッド」(21)だろう。チャップリン演じる放浪者と、血のつながらない息子キッドの親子愛を、笑いと涙を散りばめて描いた作品だ。ふたりが抜群の連携プレーでガラス窓の修理業(ほぼ詐欺商売)をする場面を始め、丁々発止のやりとりがなんとも楽しい。引き離されるシーンで見せる子役ジャッキー・クーガンの悲痛な表情は、無声映画にも拘わらず泣き声まで聞こえてきそうだ。

大人の演者と子役が名コンビを組む映画といえば、「シックス・センス」(99)も好例だ。このほど引退表明をしたブルース・ウィリスと、当時11歳のハーレイ・ジョエル・オスメントが共演。霊を視ることのできる少年と、小児精神科医の心の交流を綴ったスピリチュアル・スリラー。霊に怯える少年コールの不安定な心理をオスメントは絶妙に表現し、それを受けとめるウィリスの抑制のきいた演技もみごと。〈子供と大人〉〈患者と医師〉という対照的な立場の者同士が、相手を尊重することで対等な関係性を築いていく過程が丁寧に綴られている。

◇女の子たちが光る映画2選

子供を大人と同じく“ひとりの人間”として扱うことで、親子関係や人間関係はより豊かになる――。そういうことに気づかせてくれるのが「I am Sam アイ・アム・サム」(01)や「gifted/ギフテッド」(17)だろう。

知的障がいを持つ父親(ショーン・ペン)と、その愛娘(ダコタ・ファニング)の日常をビートルズのカヴァー曲を背景に描いた「I am Sam アイ・アム・サム」。ファニング演じる少女ルーシーは、父のサムが“普通”とはちょっと違うことを、7歳にして充分理解している。そして、自分たちを引き裂こうとする社会に対し敢然と異議申し立てをする。児童福祉局の職員から「パパを物足りないと思っていない?」と問われたルーシーが、「愛こそはすべてよ」と答える場面は本作のハイライト。ファニングの毅然とした表情が、実に印象的だ。

「gifted/ギフテッド」は、数学の天才である7歳の少女メアリー(マッケンナ・グレイス)を巡り、親代わりとなって彼女を育てている叔父フランク(クリス・エヴァンス)と、孫娘に特別な教育を施そうとする祖母が対立する話だ。 同年代の友だちと引き離して英才教育を受けさせることは、本当にこの子のしあわせになるのだろうか…とフランクは悩みぬく。そんな叔父の姿に、メアリーもまた葛藤する。叔父さんは私を手放そうとしているのだろうか? 私はいらない子なのだろうか…と。親子ではなく叔父と姪という、家族とも他人ともつかない者同士だからこそ、ふたりの間にはある一定の配慮があり、それが彼らの絆をいっそう美しいものにしている。

(C) 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

◇子供なればこその表現力と、その力強さ

一方、大人を翻弄する子供を描いて大ヒットシリーズとなった「ホーム・アローン」(90・92・97)も子役映画の金字塔だ。クリスマスの家族旅行で家にひとり置いてきぼりにされた8歳の少年ケビン(マコーレー・カルキン)が、泥棒コンビと対決するコメディ映画だ。

父親のヒゲ剃りローションを顔に塗って絶叫するシーンをはじめ、エアガンやブービートラップで泥棒たちを撃退する場面は、カルキンのかわいらしさと相まって多くの人を虜にした。小さな子が自分よりずっと大きな大人をやっつける――このストーリーは子供の観客にとっては痛快この上なかっただろう。

 
(C) 2020 20th Century Studios.

子供映画の異色作としては「ダウンタウン物語」(76)というものもある。禁酒法時代のニューヨークを舞台に、ふたのギャング団が抗争を繰り広げるミュージカル映画なのだが、出演者がなんと全員子供なのだ。子供であるからして、酒場で呑んでいる酒はジュース、ぶっ飛ばす車は足こぎカー。そしてマシンガンから発射されるのは、銃弾ならぬ生クリームだ。つけ髭をつけた少年ギャングたちが街の利権と男のプライドを懸けて対立し、それを眺めるダンサーガール(こちらも全員女の子)たちの冷めた視線がなんともおかしい。とりわけ当時14歳のジョディ・フォスター扮する歌姫の存在感は際立っている。子供たちが演じることで大人社会のインチキさや偽善が鮮やかに浮かび上がり、かつどの子の表情も生き生きとしている。

子役はけっして大人の俳優の添えものではない。ときとして大人以上の演技をしたり、演技を超えた空気感を作りだしたり、大人の演者にはできないようなパフォーマンスを繰りだしたりもする。だからこそ私たちは彼らに目を奪われ、心を持っていかれるのだろう。

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「カモン カモン」
4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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【関連作品】

■キッド
(S)KADOKAWA

 

■シックス・センス
(S/R)ポニーキャニオン

 

■I am Sam アイ・アム・サム
(S)ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント/NBC ユニバーサル・エンターテイメント

 

■gifted/ギフテッド
(S/R)ウォルト・ディズニー・ジャパン

 

■ホーム・アローン
(S/R)ウォルト・ディズニー・ジャパン

 

■ダウンタウン物語
(S)ジェットリンク/ポニーキャニオン (C)2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.

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