ジャニーズ俳優の初主演映画と、そこに刻まれた彼らの魅力

世代や好みを超えて多くの女性に支持され、愛されてきたジャニーズ事務所のタレントたち。歌やダンスはもちろん、あらゆるエンタテインメントの舞台で活躍する彼らの姿は、私たちの目を惹きつけてやまない。演技者として高く評価されるメンバーも多く、ジャニーズ俳優の層の厚みには定評があるところだ。そこで今回は、ジャニーズ俳優たちの初主演映画と、そこに刻まれた彼らの魅力、というテーマで8人の演者を紹介してみたい。

今、最も勢いのあるグループのひとつ、〈なにわ男子〉の道枝駿佑が十代最後に出演した「今夜、世界からこの恋が消えても」(22)は、切なくみずみずしいラブストーリーだ。道枝演じる主人公の透は、「前向性健忘」を患う恋人の真織を支える少年だ。はにかんだ笑顔と透明感ある佇まいには、ちょっぴりシャイだという彼自身のパーソナリティも反映されているかのよう。もの静かで、それでいてしなやかな強さを併せ持つ少年像を、自然体かつ細やかに体現した。

〈Snow Man〉の岩本照が真面目で不器用な消防士に扮した「モエカレはオレンジ色」(22)は、ラブコメディ兼、彼の筋肉美を愛でる映画である(と断言したい)。優秀な消防士としての凛々しい顔と、JKであるヒロインにときめきを覚えてしまって困惑、からのキュンキュンへと変化していく素の顔のギャップが、なんとも胸をくすぐる。抜群の身体能力を発揮した消防士ならではのアクションシーンはさすがの迫力だ。美しく雄々しい──そんな彼の魅力を存分に堪能できる。

アイドルのオーラを時に消したり、出したり

〈Sexy Zone〉の佐藤勝利が主演、〈King & Prince〉の髙橋海人が助演した「ブラック校則」(19)は、理不尽な校則に立ち向かう男子高校生コンビを描いた痛快な青春映画だ。クラスでも目立たない存在である主人公・創楽(佐藤)と、その親友で、やはりローポジションの中弥(髙橋)。「不良」でも「落ちこぼれ」でも「優等生」でも「愛されキャラ」でもない。普通の学園ものならモブキャラとして埋没している地味系男子を、佐藤はアイドルのオーラを消し切って演じている。それだけに、理不尽な校則に立ち向かおうと動きだした瞬間から放たれるきらめきには、おお! と目が奪われる。
(※佐藤勝利は橋本環奈とのW主演「ハルチカ」(17)が初主演)

対する髙橋海人は演技の間のよさが光る。常にだるそうな空気をまとわせていながら、時に周囲を驚かせる行動をしたり、創楽の動揺を常に見守っている。実際には3歳年長の先輩である佐藤を相手に、ナチュラルなバディ感を醸しだしていて、助演というよりW主演に近いものがあった。

 

振り切った王子さまキャラが愛される〈Sexy Zone〉の中島健人は、「劇場版BAD BOYS J 〜最後に守るもの〜」(13)を経て、「銀の匙 Silver Spoon」(14)での酪農男子高校生・八軒役でファンを驚かせた。彼の魅力であるセクシーさを封印し、キラキラをそぎ落としたサエないメガネ男子役がリアルにサエなかったのだ(褒め言葉です)。それが、農業の面白さに気づき、周囲の人々と打ち解けあっていくにつれ、八軒は次第にキラキラ、生き生きとしてくる。

アイドルとしての輝きや色気を出すべき時は出し、消すべき時は消す。第一級のアイドルであるジャニーズ俳優たちにとって、それが一番難しいのかもしれない。

ハマる役柄との出会いでブレイクした演者たち

現在放送中のドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』が好評の〈Hey! Say! JUMP〉の山田涼介は、「暗殺教室」(15)で初主演を飾った。謎の生物“殺せんせー”を暗殺する使命を負わされた中学生たちを描いた本作で、主人公・渚を演じている。整った顔立ちなのに気の弱さと劣等感から自分に自信が持てない渚を、原作とはひと味ちがうナイーブさのある人物として表現。物語が進むにつれ、少年から男へと成長していくその姿は、Jr.時代から殊に努力家で知られる彼自身をも彷彿とさせるものがあった。

たおやかな空気感と柔和な風貌が人気の〈Kis-My-Ft2〉の玉森裕太も、ドラマを中心に着々と実績を積み上げている。初主演映画「レインツリーの国」(15)は、そんな彼のイメージを効果的に活かした良作だ。メールをやり取りするうちに、出会ったことのない相手の女性に惹かれる青年の心情を、繊細に情感豊かに演じている。また、低く穏やかな声で繰り出されるはんなりとした関西弁が、主人公のやや直情的な性格をうまく和らげているのも心にくい。
 
二宮和也、風間俊介など演技派ぞろいの三十代ジャニーズ俳優の中でも、とりわけ生田斗真は際立った存在感を放っている。彼がかつてジャニーズJr.だったことを知らない人も、もはや多いのではないだろうか。それくらい、ひとりの俳優として確固たる地位を築いている。Jr.時代の中盤から演技の道へ舵を切り、舞台で己を磨き、太宰治原作の映画「人間失格」(09)で演技者として大きく花開いた。このあまりにも有名な堕落文学の主人公、作者・太宰の分身的なキャラクターを、弱さと純粋さ、気高さと卑屈さを綯い交ぜて熱演。堕ちていけばいくほど聖性が増していく姿は痛ましいほど美しく、端的に言ってドハマリしていた。これで彼はジャニーズ初のキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞と、ブルーリボン賞新人賞をW受賞。以降、本格的に役者の道へ邁進していくのは周知のとおりだ。

アイドルとしても俳優としても光り輝くジャニーズのタレントたち。観る者の目を奪い、心を掴んで離さない彼らの演技の出発点を今だからこそ観ていただき、改めてその才能にハマってみてはいかがだろうか。

文=皆川ちか 制作=キネマ旬報社

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