【あの頃のロマンポルノ】第11回日本映画批評『禁断・制服の悶え』

2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、「キネマ旬報」に過去掲載された記事の中から、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げていく特別企画「あの頃のロマンポルノ」。キネマ旬報WEBロマンポルノ公式サイトにて同時連載していきます。

今回は、1976年発行『キネマ旬報』6月上旬号に掲載されました、山根貞男氏による、林功監督作『禁断・制服の悶え』の映画批評を転載いたします。 

1919年に創刊され100年以上の歴史を持つ「キネマ旬報」の過去の記事を読める貴重なこの機会をお見逃しなく!

制服の悶え


 「日活ロマン・ポルノ」がこんなに道徳的であっていいものかーわたしはふとそう思った。林功「禁断・制服の悶え」を見ての感想である。じっさい、ここに描かれる若者たちは、健全すぎるほどに健全、誠実すぎるほどに誠実なのだ。

 むろん淫狼な場面はある。強姦シーンもある。だが、この映画は、はじめ描き出していったみだらなセックス場面や凌辱シーンを、やがて自ら否定する方向へと展開してゆく。そうして訴え出されてくるものは、なんとも道徳的な主張以外のなにものでもない。

 強姦された女高生(東てる美)と強姦したホスト業の若者の、どんどん誠実を深め合い、健全な恋人どうしになってゆく過程。その誠実さや健全さを、わたしは丸ごと否定しようとは思わない。だが、そこには、暴力的にはじまった性の関係を、なしくずし的に弛緩させ、やさしさで慰撫しあうだけの市民道徳の枠内に閉じ込めてゆく傾きが、たしかにある。ほとんどそれは、たとえば広瀬裏「青春の構図」の描く、うさんくさいマジメさの、ちょうど裏返しにもなりかねない。「日活ロマン・ポルノ」の多くを、わたしは、良質の青春映画だと見ている。少なくとも性を、肉体を、きちんと表現内部に取り込み、それを重視するかぎり、いやらしい道徳押しつけ型の青春映画にはなるまい、と思っているからだ。逆にいえば、この林功の作品も、肉体を描くことでかろうじて転落をまぬがれているにすぎない。

文・山根貞男「キネマ旬報」1976年6月上旬号より転載

 

『禁断・制服の悶え』【DVD】



あらすじ

女校生の冴子(東てる美)は従兄の保に想いを寄せていた。ある日、保が雪山登山で遭難事故にあい、入院した。冴子が見舞いに行くと、保は強引に彼女の体を求めた。彼女は激しく拒んだ。その夜、彼女は保に体を捧げることを決心し、再び病院を訪れた。だが、保は外出し、サパークラブに向かった。冴子は彼について行った。店内にはホストの知也といちゃつく有閑マダム風の美紀(珠瑠美)がいた。保は冴子をよそに美紀と店の倉庫に入り、互いの体をむさぼりあった。客を奪われ憤慨した知也は、二人の濡れ場を冴子に覗かせた。ショックを受けて、飛び出す冴子。やがて、知也に誰もいなくなった倉庫に連れ戻されると犯された。冴子は処女を失った。一方、保は美紀と同乗した車で事故を起こし、死ぬ。美紀が保を置き去りにしたことを知った冴子は知也の協力を得て、美紀への復習を準備する・・・。

監督: 林功 脚本:久保田圭司
価格:2,200円(消費税込み)
発売:日活株式会社 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング

 

最新映画カテゴリの最新記事