【5月のBS松竹東急】映画好きなら見逃せない! 今見てほしいこの3本!! ―― 映画女優たちの 代表作を堪能する

「蒲田行進曲」

5月のBS松竹東急に登場するのは、映画女優たちの代表作3本。「蒲田行進曲」(82)は、つかこうへいの同名戯曲を深作欣二監督が映画化したヒット作。映画の撮影所を舞台に、スター俳優の〝銀ちゃん〞(風間杜夫)と彼を慕う大部屋俳優のヤス(平田満)、銀ちゃんの恋人で売れない女優・小夏の三角関係を描いている。銀ちゃんの子どもを身ごもって、ヤスと結婚する小夏を演じたのが松坂慶子。銀ちゃんに捨てられた彼女を引き受けたヤスの純愛に心を動かされ、やがて彼を支えていく哀しくも可愛い女性を体当たりで演じきった。彼女はこの演技でキネマ旬報ベスト・テン主演女優賞をはじめ、日本アカデミー賞、毎日映画コンクールなどの主演賞を総なめ。彼女はすでに「事件」(78)や「青春の門」(81)で演技力が評価されていたが、ここでの小夏役が決定打となってトップスターの座を獲得した。

 

「キネマの天地」

映画のタイトルになっている〈蒲田行進曲〉は、松竹映画「親父とその子」(29)の主題歌となり、20年から36年まで東京・蒲田にあった松竹の撮影所を象徴する歌だった。だが、劇中に描かれる撮影所のモデルになったのは東映京都撮影所で、監督も東映育ちの深作欣二。このことを残念に思った松竹の監督・野村芳太郎が、松竹撮影所の物語を作ろうと企画したのが、山田洋次監督による「キネマの天地」(86)である。松竹大船撮影所50周年記念作品として作られたこの映画は、蒲田撮影所時代の監督や俳優を描いた群像劇。メインとなるのは、浅草の映画館の売り子から蒲田撮影所のトップ女優へと成長していく田中小春で、松竹の大スター・田中絹代がモデルになっている。この小春役に抜擢されたのが、当時新人だった有森也実。演技がうまくできなくて監督にダメ出しされ、元舞台役者の渥美清扮する父親に励まされながら、徐々に成長していく小春は、演じた有森自身を彷彿とさせて、まさにはまり役。彼女はこの演技で日本アカデミー賞新人俳優賞に輝き、後に『東京ラブストーリー』(91)などのトレンディドラマで人気を集めた。今回は『松竹創業130周年記念特集:映画に愛を捧げて』と題して、他にも西田敏行が映画をこよなく愛する映画館主を演じた「虹をつかむ男」二部作(96、97)が放送される。

 

「緋牡丹博徒 お竜参上」

1960年代、任侠映画全盛期に絶大な人気を博した、藤純子(現・富司純子)主演の「緋牡丹博徒」シリーズ全8作品も放送される。任俠映画は渡世の義理に縛られた男たちが、最後は悪辣なやくざに怒りをぶつけるのがパターン。そこに藤が演じる〝緋牡丹のお竜〞こと女俠・矢野竜子が加わった。男社会のやくざの中で、お竜が熊本弁でキレのいい啖呵を切りながら理不尽な奴らに立ち向かっていく、そのカッコよさと凄絶な美しさ。中でも加藤泰監督による第6作「緋牡丹博徒 お竜参上」(70)はシリーズの最高傑作。菅原文太扮する一匹狼の渡世人・青山常次郎と雪の降る今戸橋で別れる場面で、お竜がミカンを渡そうとするところは、女俠ものならではの情感が漂う名シーンになっている。任俠スター・藤純子のイメージを確立した傑作シリーズを全作一挙に見るチャンスだ。

 

文=金澤誠 制作=キネマ旬報社(「キネマ旬報」2025年5月号より転載)

BS松竹東急
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※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。

■5/12[月] 夜8時
「蒲田行進曲」
監督:深作欣二
出演:松坂慶子、風間杜夫、平田満 ほか
© 1982 松竹株式会社

■5/13[火] 夜8時
「キネマの天地」
監督:山田洋次
出演:中井貴一、有森也実、渥美清、松坂慶子、倍賞千恵子 ほか

© 1986 松竹株式会

■5/27[火] 夜8時
「緋牡丹博徒 お竜参上」 
監督:加藤泰
出演:藤純子(現・富司純子)、若山富三郎、山城新伍、嵐寛寿郎、長谷川明男、菅原文太 ほか
© 東映

詳細はこちら:https://www.shochiku-tokyu.co.jp/special/eiga/

 

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