第15回「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ

 2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、本キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。

 衛星劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定)

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 どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ -民俗学入門-」。今回のテーマは「女子高生(スケバン)」。女子高生の中でも、番を張られてた方の特集です。

 その時、股間がうずいた 今宵の教材は花の淫乱愚連隊。『女高生(スケバン) SEX暴力』。喧嘩上等、感度バツグン。昭和のツンデレガールズ大集合。初めて単車を買った時。ミニよりロングがそそる時。その瞬間から新たな歴史が始まる。「舐めたらあかんぜよ!」

 今回は、スケバンについて考えたいと思うんですけども、そもそもスケバンとは何でしょうか?今、若い世代の中にはピンとこられない方もいるかもしれませんけども、そうですね「スケバン刑事」(テレビや映画で実写化された和田慎二による少女コミック)は聞き覚えが…それもない。と、なると一応説明しますね。【スケ】っていうのは、女の人の事ですよね。それで【バン】=番を張ってる人(不良のリーダー格、番長を務める)っていうことで、とても強くてコワイ人たちの話です。それ以前にもテレビや映画では、学園ドラマというものがはやりました。「飛び出せ!青春」(村野武範主演の学園ドラマ)や、古くは夏木陽介さん(TVドラマ「青春とはなんだ」他)などが出演されていた学園モノでございましたけども、なぜか大阪万博(日本万国博覧会、1970年大阪吹田市にて開催)を境に、一気にスケバンという方が学園に現れました。

 スケバン役で一番有名になられた方は、たぶん東映映画の池玲子さん(東映ポルノのスター女優)と、杉本美樹さん(「女番長シリーズ」で活躍)でしょう。僕はそれらをリアルタイムで観たクチだったんですがね、股間がやたらジンジンしているんですけど、実際、街でスケバンらしき人に遭遇するとビビりまくり。複雑な気持ちでした。

■春夏トレンド先取り!スケバンコーディネート

 たいがい映画の中でのスケバンは、こういう格好されてましたよね(イラストを出す。)

 当然、茶髪ですよね。パーマもかけておられます

 でポスターでは上半身丸出しが多かったですね。肩に、セーラー服をかけてらっしゃってね。

 やたらヒダの多いスカートを穿いておられた。意外に白い靴下で、スニーカーを履いておられるんですよね。

 手にナイフを時にはライフルなども。いつでも戦闘態勢で映っておられましたよ

 スケバンは、よく草むらで仁義を切ることがありました。「モナリザお京とはっしやす...」みたいな自己紹介。なぜ草むらなのかと言うと、仁義を切った後にそこで転がってケンカするからですね。僕はいつも、そのシーンを観て遠ぉ~い気持ちになったもんです。

 そして、今回紹介する映画の冒頭にも出てきたと思うんですけど、何故かスケバン、アウトドアで座り小便をするんです。パンクな気持ちの表れなんでしょうか?こちらはやたらそれも、怖かったですね。 

■そこんとこ夜露死苦 スケバンとの正しい交際術

 そういう映画を観に行った帰りに、そういう方にカツアゲされるなんてこともありました。映画に没頭して、自分も少し、スケバン気分になってた矢先、映画館を出たとたん、いきなり「おい金、出せや」とそういう連中に囲まれるというのは、ショックですよね。そうそう関西の場合、そこで「飛んでみぃ~」って言うんですけどね。(イラストを出す)

 「飛んでみぃ~」言っても、ものすごく高く飛ぶことじゃないんです。「飛んでみぃ~」というのは、ポケットに小銭を入れいる場合、飛んだ瞬間、にジャラジャラ音がするでしょ。その音が聞きたいがための常套句なんです。僕は、2、3度カツアゲにあっていましたから、ズボンの脇を固めて、ポケットに入れた小銭の音がしないように、飛ぶことが出来たんですよね。「持ってねえのかよ」とか言われて、逆に相手をあざむいたこともありましたね(笑)。でもね、コワいんだけども、スケバンの世界には、仁義とか任侠とかあって、カッコイイんです。ただ、何もできず、うつ向いている自分が「なんなんだ、男って何なんだ? 文科系ってなんなんだ?」と疑問を抱くようにもなりました。

 今回の映画『女高生(スケバン) SEX暴力』、どんな暴力なんだってことですがね(笑)。ちょっとドキドキしながら、観てください。観終わった後、「こんな学園にいなくて、本当、良かった」って皆さん思われることだと思います。

 

女高生(スケバン) SEX暴力』 

1973年製作、片桐夕子さん主演でございます。対抗してくるスケバン勢力には、山科ゆりさん。この方もグッときますよ。是非ともご覧下さいませ。

すけばん刑事・ダーティ・マリー』 

1974年製作。当然このタイトルからもわかるように、『ダーティハリー』(1971年 アメリカ映画 クリント・イーストウッド主演)の影響から生まれたスケバンものですね。。「スケバン刑事」のタイトルは、どっちが先だったんですかね?

スケバンマフィア 肉刑』 

【肉刑】と書いて【リンチ】と読むそうですよ。1980年の作品でございます。倉吉朝子さんの主演ですね。

スケバンマフィア 恥辱』 

1980年製作。こちらも倉吉朝子さん主演でございます。

※各作品はamazon、FANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です

それではあなたもグレイト余生を! 

出演・構成:みうらじゅん/プロデューサー:今井亮一/ディレクター:本多克幸/製作協力:みうらじゅん事務所・日活

■2021年07月 TV放送情報

テーマ「日記」
・『OL日記 密猟
・『若妻日記 悶える
・『宇能鴻一郎の浮気日記
・『OL官能日記 あァ!私の中で

テーマ「指」
・『白い指の戯れ
・『看護女子寮 いじわるな指
・『看護婦日記 いたずらな指
・『OLハンター 女泣かせの指

 あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯98」を放送!
※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集

【日活ロマンポルノ】
日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。
日活ロマンポルノ公式ページはこちらから

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