第16回「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」

 2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえました。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、本キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。

 衛星劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定)

16回「日活ロマンポルノのポスターにおける[書]」

どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショー In 日活ロマンポルノ 民俗学入門」。今回はですね、「日活ロマンポルノのポスターにおける[書]」というテーマです。エロ書道について、皆さんと学んでいきたいと思います。

 その時、股間がうずいた。今宵の教材は、書体で学ぶポルノの歴史。『夜這い どてさがし』。一本の筆が織りなすエロ技場。股間が唸る匠業、ここに極まる。ソフトな刺激で責められて、シーツに綴った「筆おろし」、その瞬間から新たな歴史がはじまる。

 それでは、一筆目夜這い どてさがし』。私がその書を、参考に書かせて頂きますね。「夜這い」の場合は、当然夜に行うわけですから、少しダークなカンジで…まずここトンと打ちますよね。そして、このしんにゅう「辶」がとてもいい感じではいってますよね。「弘法は筆を選ばず」と昔から言いますけど、ここはちょっと男性器に似ているように、こういきますかね。

 なんだか『どですかでん』(1970年 黒澤明監督)のタイトルっぽい字になりました(笑)。 う~ん、ちょっと(半紙に)入らなくなってしまいましたが、そいう場合は、こう横にいれて、最後しめる。夜這い どてさがし』完成しました!

 こちらが正式なタイトルの清書ですね。私の先程書かせていただいた、この書のどこが間違いなんでしょう?ちょっと見て、自分で採点をしたいと思います。ココのとこですよね。ココがやっぱりこう流れるべきですよね。ウン、そうこれでいいですね。悪くないと思います。でも、一番初めは、何もないところから書かれたわけでね、映画を一言で表すというか、文字で表すということは、やはりこれは匠の業だということが分かりますね。

 とくに70年代の日活ロマンポルノ作品のタイトルは、書が用いられていることが多いです。このサンプルのタイトルはね、この番組のスタッフの方が、キンコーズで引き延ばしたということです。キンコーズの方はきっと、「変態が来た」と思われたでしょうね(笑)。さあ、その書の数々を、見ていきたいと思います。

ロマンポルノ名筆選~毛筆が奏でる官能美~

 『教師 女鹿』これも良い字ですよね。普通、「女教師、鹿」じゃないでしょうか? この「女」っていう字がくさびのようで、その情念の深さを表していますよね。

 そして 『淫絶海女 うずく』の「うずく」の字、これもとてもいいですよね。参観日に小学校に行ったら、教室の後ろの壁に全部「うずく」って貼り出されていたところを想像してみてください。本当にすごいですよねほんと力強い書でございます。

 これは、1978年の作品で、時代が新しくなったのをその字で感じられますね。『時には娼婦のように』。旅先から、「今、道後温泉に来ています。君には時には娼婦のように。」なんて、ハガキで書いて出すのはどうでしょうね。

「しゃぶり攻め」(『OL日記 しゃぶり攻め』)、これも良い字でしょ?この「攻」が『特攻大作戦』(1967年製作 ロバート・アルドリッチ監督)ですよ。いいですね。

「絶淫」(『セミドキュメント 絶淫』)、もともとこんな言葉があったのか、わかりませんけど、この枯れ葉みたいな字の感じもいいですよね。

 力強さを「十三段」にもってきて「こんにゃく」のクニャクニャした優しい感じがよくでています(『十三段こんにゃく締め』)。

 そしてやっぱ、書のダイナミックさといえばこれですよね「変態」、堂々変態なんだということがこの書一発でわかりますよね(笑)。(『ポルノ・レポート 変態』)

半紙をティッシュに持ち替えて 検証『夜這い どてさがし』

  今回は、『夜這い どてさがし』を上映させていただきますけども、私は昔、東京・杉並区の高円寺という街に住んでいたことがあります。そこの映画館はもう、ありませんが、僕が住んでいた頃は、高円寺の商店街に上映作品のアナウンスが流れていましてね。それが淡々として女性の声で、「ただ今〇〇劇場では、『夜這い どてさがし』『夜這い どてさがし』を上映中です」と言うんです。近所の人たちが買いものをしている中、平然と流れてる感じが、とても昭和的で良い雰囲気でした。そんな記憶にあるタイトルで、どんな映画なんだろうと思って、今回初めて見させていただきました。いやぁ、なかなかどうして、外ロケもたくさんあり、映像も素晴らしい作品でございました。

 「夜這い」というのは、もはや民俗学的な言葉になっていると思います。かつて平安の貴族たちが歌会を開いていましてね、裏の目的は、それで、男女が盛り上がるというイベントだったんですけど、それを庶民がマネしようってことになったようですね。「嬥歌(かがい)」といって、良い歌を作った男には、女の人が寄って来て、その後どこかの山の中でまぐあうという。「夜這い」というのは、実は女の人側も拒否ができたと、ある文献で読んだことがあります。拒否された男は当然、落ち込んで家に帰ることもあったらしいです。

 映画を見て貰えばわかるんですけど、大概、男は二人チームで行ったみたいです。

 窓が開けてあると、いいですよってサイン。でも、今と違って夜は本当、闇ですから注意しながら這い這いスタイルですね。

 これが本当の忍び足っていうことですよね。ま、何もわざわざイラストにする事も無かったんですけど。分かって頂けたでしょうか?

 そして、そのチームの先輩は必ず天狗の鈴を持っています。コレ、映画の中の話ですよ。ツンツンと突いて、相手の様子を伺ってからということでございます。今回、脚本を、山本晋也監督が書かれているということで、とても面白い作品になってます。ラスト、引きの画で雪景色が見えている画など本当、感動しますから。さぁ、その映像の美しさに最後までじっくり御覧ください。

 

夜這い どてさがし』1979年製作、川口朱理さん主演。

教師 女鹿』1978年製作、栄ひとみさん主演。

淫絶海女 うずく』1978年製作、八城夏子さん主演。

時には娼婦のように』1978年製作、鹿沼えりさん主演の作品でございます。

出演されている有名作詞家、なかにし礼さんの同タイトルの歌もヒットしましたよね。

※各作品はamazon、FANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です

それではあなたもグレイト余生を!

 

出演・構成:みうらじゅん/プロデューサー:今井亮一/ディレクター:本多克幸/製作協力:みうらじゅん事務所・日活

■2021年07月 TV放送情報

衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方)

・『若妻日記 悶える
・『宇能鴻一郎の浮気日記
・『OL官能日記 あァ!私の中で
・『OL日記 密猟
・『白い指の戯れ
・『看護女子寮 いじわるな指
・『看護婦日記 いたずらな指
・『OLハンター 女泣かせの指

【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方)
・『OL日記 密猟』(R-15版)
・『看護婦日記 いたずらな指』(R-15版)
・『団鬼六「黒い鬼火」より 貴婦人縛り壷』(R-15版)

 あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯98」を放送!
※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集

■2021年08月 TV放送情報

衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方)
・『大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻
・『色暦大奥秘話
・『色暦大奥秘話 刺青百人競べ
・『続・色暦大奥秘話 淫の舞
・『若妻日記 悶える
・『宇能鴻一郎の浮気日記
・『OL官能日記 あァ!私の中で
・『OL日記 密猟

【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方)
・『大奥秘話 晴姿姫ごと絵巻』(R-15版)
・『OL日記 密猟』(R-15版)
・『看護婦日記 いたずらな指』(R-15版)

 あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯98」「みうらじゅんのグレイト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯99」を放送!
※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集

【日活ロマンポルノ】
日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。 日活ロマンポルノ公式ページはこちらから
 
日活ロマンポルノ50周年新企画
イラストレーターたなかみさきが、四季折々の感性で描く月刊イラストコラム「ロマンポルノ気候」

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