木村拓哉の足跡が刻まれた伝説的名作ドラマ3作がレンタルで一斉解禁!

1996~97年にかけてフジテレビ系列で放送された木村拓哉主演のTVドラマ『ロングバケーション』『ラブ ジェネレーション』『ギフト』。いずれも木村の代表作の一つだが、意外にもDVD&ブルーレイのレンタルは行われてきておらず、3月2日に初めて一斉リリース。全国のゲオ店舗や一部レンタル店で木村拓哉コーナーを展開中だ。

伝説的名作ドラマに主演するまで

常にその動向が注目を集め、数々のTVドラマや映画を大ヒットさせてきた木村拓哉。移り変わりの早い現代において、現在まで20年以上にわたって日本の国民的トップスターに君臨し続けているというのは驚異的だ。人気、知名度において、いまや現役で並ぶ者がいないトップオブトップともいえるが、その地位を確立させたのが、まさに1996~97年頃。その大きな要因となったのが、今回レンタル解禁される『ロングバケーション』『ラブ ジェネレーション』『ギフト』の3作といえる。

そこに至るまでを簡単に振り返ると、SMAPとしてCDデビューしたのは1991年だが、俳優デビューはそれより早く、1988年のTVドラマ。特に俳優として注目を集め始めたのは、1993年の柴門ふみ原作ドラマ『あすなろ白書』だった。同作での木村は、中心人物の恋敵的役回りだったが、黒縁眼鏡をかけてヒロインを一途に愛する切ない姿が注目を集め、劇中の木村のバックハグから“あすなろ抱き”という造語も生んだ。その後、人気若手俳優が一同に会した1994年の青春群像ドラマ『若者のすべて』、1995年には特攻隊の若者たち青春を描く戦争映画「君を忘れない」と浜田雅功主演ドラマ『人生は上々だ』にそれぞれ助演したほか、同年には単発ドラマ『君は時のかなたへ』に主演。そして1996年、1月に『古畑任三郎』の第2シリーズ第4話で犯人役を演じ、グループの冠番組『SMAP×SMAP』も放送開始した4月、グループ・個人共に人気が急上昇する最中に初主演した連続ドラマが、山口智子とのW主演作『ロングバケーション』だった。

社会現象を巻き起こした『ロングバケーション』

木村演じるピアニストの瀬名は、瀬名のルームメイトだった婚約者に結婚式当日に逃げられたという山口演じる落ち目のモデルの南と、突然同居することに。お金も持ち逃げされた南に請われて、渋々間借りを許したのだが、ナイーブな瀬名と陽気で大雑把な南は衝突を繰り返す。そんな二人の距離が次第に縮まっていく過程が、木村と山口の絶妙な掛け合いを交えて綴られていき、放送日の夜はOLが街から消えるとまで噂される社会現象的人気を獲得。白無垢姿で街中を失踪するヒロイン、マンション3階からのスーパーボール・キャッチ、アドリブのキスシーンなど、語り継がれる名シーンが満載で、平均視聴率 29.6%、最高視聴率36.7%を記録した。脚本は、後に『ビューティフルライフ』(00)でも組むことになる北川悦吏子。サントラや久保田利伸with NAOMI CAMPBELLによる主題歌『LA・LA・LA LOVE SONG』も大ヒットし、まさに伝説的名作ラブストーリードラマだ。

記念すべき連ドラ単独初主演作『ギフト』

 

その翌年、満を持して単独での連続ドラマ初主演に挑んだのが『ギフト』。

木村が演じたのは記憶をなくした謎の男。51億円の横領金と共に失踪した代議士のマンションのクロゼットから血まみれで発見されるという衝撃的な形で登場する。保護された怪しげな人材派遣会社の社長から「早坂由紀夫」と名付けられた彼は、様々な品物“ギフト”を配達する「届け屋」の仕事を与えられ、多種多様な依頼を請けていく。「届ける」ことに異常なまでの執着とパワーを見せる主人公の正体、大金の行方など、様々な謎が張り巡らされたサスペンスフルな物語と共に、室井滋、篠原涼子、忌野清志郎、倍賞美津子などの多彩なレギュラー陣と、緒形拳、桃井かおり、鈴木京香などの豪華ゲストが演じた、一癖も二癖もある個性的なキャラクターたちも面白い。軽快かつスタイリッシュな作風でも人気を博したクライムロマンで、最高視聴率23%を記録。脚本を務めたのは、『NIGHT HEAD』シリーズの飯田譲治と、後に『GOOD LUCK!!』(03)『BG~身辺警護人~』シリーズ(18、20)などでも木村と組む井上由美子で、これまで地上波での再放送の機会がない、貴重な作品だ。

木村拓哉&松たか子の名コンビを確立させた『ラブジェネレーション』

その放送終了から約3カ月後という異例の早さで、同年に放送されたのが『ラブジェネレーション』。W主演した木村と月9初ヒロインの松たか子は、『ロングバケーション』に続く共演だが、後に『HERO』(01)などでも組むことになる名コンビを確立させた。

木村が演じたのは、広告代理店勤務のサラリーマン・片桐哲平。浮気性で軽薄そうにも見えるが、自己主張が強く、仕事にはこだわりを持っている。そんな彼が突然、クリエイティブ部門から営業への異動を命じられる。不服なまま営業部へ向かうと、そこにいたのは、昨晩出会って一夜を共にしたものの、手を出し損ねてしまった女性。その松が演じるOL・上杉理子と共に慣れない仕事に悪戦苦闘する哲平は、自由奔放な理子と対立しながらも、次第に惹かれ合っていく。等身大の男女の不器用でもどかしい恋愛模様は、毎回胸キュンなストーリー展開で多くの若者の共感を呼び、平均視聴率30.8%を記録した青春オフィス・ラブストーリーだ。

グループ活動、俳優以外の個人活動も継続しながら、2年弱で3本の主演連ドラをヒットさせたこの時期が、木村を現在のトップスターの位置に押し上げたといっても過言ではなく、その中心にあったのがこの3作。繊細なピアニスト、ミステリアスな記憶喪失の男、等身大のサラリーマンという多彩な役柄を演じてファン層を広げ、ニュアンスに優れた芝居の上手さも印象付けた。現在まで続くパブリックイメージもここで確立されたものが多く、ターニングポイントといってもいいだろう。木村のトップスターに駆け上がる若い勢いが感じられると共に、物語自体も色あせない魅力に溢れた名作たちだ。

※文中の視聴率はすべて関東地区のビデオリサーチ調べ

文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社

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