カンヌ受賞のアスガー・ファルハディ新作「英雄の証明」、著名人コメント到着

ベルリンとカンヌの両国際映画祭で数々の賞に輝き、「別離」と「セールスマン」で米アカデミー賞外国語映画賞を2度も制した巨匠アスガー・ファルハディの新作「英雄の証明」。その4月1日(金)公開を前に、世界の映画監督をはじめ、ジャーナリスト、作家、ゲームクリエーターなど各界著名人から称賛コメントが到着。新ビジュアルも解禁された。

 

 

第74回カンヌ国際映画祭グランプリ&フランソワ・シャレ賞、第93回ナショナル・ボード・オブ・レビュー脚本賞、外国語映画賞などを受賞し、第79回ゴールデングローブ賞非英語映画賞にノミネート、本年度米アカデミー賞国際長編映画賞ショートリストに選出された「英雄の証明」。

倫理観という普遍的テーマの追求にあたり、今回ファルハディが着目したのはSNSやメディアの絶大な影響力だ。振れ幅の大きな主人公の運命を通し、真実の曖昧さや社会に潜む欲望とエゴをあぶり出す、予測不可能なヒューマン・サスペンスに仕立て上げた。

コメントを寄せたのはジョージ・ミラー、ギレルモ・デル・トロ、ルカ・グァダニーノといった映画監督をはじめ、作家の赤川次郎、フリーアナウンサー久米宏、ライター武田砂鉄、ジャーナリスト堀潤、国際政治学者の三浦瑠麗ほか著名な面々。以下に掲出する。

 

ジョージ・ミラー監督(『マッドマックス怒りのデス・ロード』)
「英雄の証明」は徹底して重層的だ。作品の世界に没頭してしまう素晴らしい映画体験。
登場人物と一緒にいるかのように感じるほど自然に、彼らの個人的な話が普遍的な物語になっていく。世界中どこにいても、この作品で起こる問題を理解できない人はいないだろう。

ギレルモ・デル・トロ監督(『シェイプ・オブ・ウォーター』)
主演アミル・ジャディディの演技は、驚くほど真に迫っている。

ルカ・グァダニーノ監督(『君の名前で僕を呼んで』)
信じられないほど優れた脚本だ。監督が生み出す複雑な登場人物やシチュエーションは「創作の奇跡」といえるだろう。アスガー・ファルハディ監督の作品は、我々の時代のマスターピースだ。

三浦瑠麗(国際政治学者)
ファルハディ監督の人間に対するアプローチは信頼がおける。
「セールスマン」はわたしにとって心にくい込んで忘れられない作品だったが、これも忘れられなくなりそうだ。何度も見返すだろう。

西川美和(映画監督)
嫌な予感がする。
金貨を拾った主人公は、思うようにそれを利用できない。しかしそのおかげで取り巻く世界が明るくなっていく──それがすでに、猛烈に恐ろしい。やめとけ。ファルハディの前でその展開はマズい。ろくな目に遭わない!!
終わってみたら、汗びっしょり。イラン固有の背景を舞台にしながら、人間の本質の描写には、世界とミリ単位のズレも感じさせず、SNSに絡め取られる現代の狂騒を容赦無く盛り込んで行く。綿密なストーリーテリングと、最小にして誰にでも伝わる演出。世界のレベルはこれほど自分と違うのかという意味でも、心臓が疲弊します。

武田砂鉄(ライター)
私たちは今、評価が一気にひっくり返る社会を生きている。
この映画に映る、ほぼ全員が困惑している。喜怒哀楽のそれぞれに戸惑いが滲んでいる。
でも、それが、今、この時代を生きる上での前提になっている。

赤川次郎(作家)
これは「完全な人間はいない」という単純な真実の物語である。小さな善行、小さな愚行を、SNSがその人のすべてとして色分けしてしまう。同じことをしていないかと自分に問いかける、秀作。

小島秀夫(ゲームクリエイター)
ミニマムな日常と、独自の慣習を描き、世界を共感させて来たアスガー・ファルハディ。国際映画人として羽ばたいた彼が原点回帰し、「別離」を凌ぐ才能の“証明”を本作で魅せた!個人が意図せぬうちに“英雄”は量産され、消費され、瞬く間に葬られる。世界の何処にいようとSNSからは逃れられない現代人こそは、ラストでしばらく席を立てないはずだ。

久米宏(フリーアナウンサー)
村上春樹原作の映画では北欧製の赤いクルマが走っている
このイラン映画では 主人公はMAZDAに乗っている
しばらく観ていると イランなのか日本なのか分からなくなる
そっくりなのだ。

佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
誰かを吊し上げ、弾劾し、職を奪う行為は日本のSNSでも蔓延している。そういう行為を当然だと思っている人たちにこそ本作を観てほしい。それは人生に取り返しのつかない事態を招くことを。

堀潤(ジャーナリスト)
今、戦争の真っ只中にある。視界に飛び込む「善と悪」との衝突が世界をさらに分断に追い込む。しかし、私は本当に考えているだろうか。知ろうとしているだろうか。みているだけでは翻弄される。みているだけでは私たちも加害者になる。責任を持つのだ。そのために、この映画は今こそ必要だ。

伊藤詩織(ジャーナリスト)
名誉なんて誰かが勝手に与えるラベルでしかない。自分自身に真実に生きる、それが彼の選んだ道なのだ。自分自身に名誉を送るために。

北村道子(スタイリスト)
アスガー・ファルハディの脚本は今のメディアの有り様を警告しているリアルな現実である。

宇野維正(映画ジャーナリスト)
他者からの評価が貨幣となる時代の危うさについての巧みなストーリーテリング。扉と窓の描写にこだわりぬく「映像の魔術師」としての芸術性。アスガー・ファルハディはまたしても現代最高の映画作家の一人であることを証明した。

 

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