ホアキン・フェニックスの演技に注目! 11月の「誰かに教えたくなるシネマ」



毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開でありながら傑作といった、様々な掘り出し映画との出会いを映画専門家レビューと共に提供します!

自虐の果てにある希望に満ちた自分

映画『ドント・ウォーリー

ポニーキャニオンより10月16日リリース

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映画『ドント・ウォーリー』あらすじ

アルコールに頼りながら生活していたジョン・キャラハンは自動車事故に遭い胸から下が麻痺し、車いす生活を余儀なくされる。自暴自棄な毎日を過ごす中、持ち前の皮肉で辛辣なユーモアを活かして風刺漫画を描き始める。

 

映画『ドント・ウォーリー』映画専門家レビュー

居場所を見出せずに育った青年が事故をきっかけにして出会う人々と、許しの果てに見る本来の自分自身。ロビン・ウィリアムズが熱望していた役を、ホアキン・フェニックスが繊細な演技で魅せる。ホアキンと婚約したルーニー・マーラが気高い天使像に扮し、痩せてイケメンになったジョナ・ヒルや、ロックバンドGossipのボーカル、ベス・ディットーら断酒会で出会う顔ぶれもさすがガス・ヴァン・サントのセンス。「遠くまでいけないから大丈夫」という自虐と希望の絶妙なバランスに拍手。

 

可愛いらしい世界観に再びうっとり!

映画『オンネリとアンネリのふゆ

アット エンタテインメントより11月6日リリース

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映画『オンネリとアンネリのふゆ』あらすじ

クリスマスの近づくある日、小さな可愛いお家にふたりで暮らすオンネリとアンネリのもとに、プティッチャネンという小人の一族の家族がやって来る。悪い人間たちから逃げているという彼らを、ふたりは匿うことにするが……。

 

映画『オンネリとアンネリのふゆ』の映画専門家レビュー

前作同様、北欧らしいビビッドな世界観は健在、相変わらずキュートで、終始ほっこりした気持ちに。今回は小人の一族が登場し彼らを匿うのですが、ドールハウスで生活を始める小人たちの様子はまるでシルバニアファミリーやリカちゃん人形の世界。世の少女たちの夢を実現させたような演出にうっとりしました。小人を狙った泥棒が現れたりもするのですが、根っからの悪人がいないのがまた本作の良いところ。幼い頃の純粋な気持ちを思い出させてくれる、心温まる物語です。

 

次章に期待感を上げまくる第一章

映画『神と共に 第一章:罪と罰

ツインより11月6日リリース

(C) 2019 LOTTE ENTERTAINMENT & DEXTER STUDIOS All Rights Reserved.

映画『神と共に 第一章:罪と罰』あらすじ

火災現場で少女を救い命を落とした消防士のジャホン。49日間で7つの地獄で裁判を受け、そのすべてで無罪になった亡者だけが現世に生まれ変われるというルールに則り、彼は3人の冥界の使者と共に地獄巡りを始めるが……。

 

映画『神と共に 第一章:罪と罰』の映画専門家レビュー

ひとりの亡者(死者)が現世に生まれ変わるために7つの地獄の裁判をクリアするという物語は、エンタメとドラマの両輪がひたすら熱く泣ける。亡者を導く3人の使者、ハ・ジョンウの佇まいのクールさ、チュ・ジフンの普段チャラいけど本気出すと凄いところ、キム・ヒャンギの愛嬌、といったそれぞれの魅力と掛け合いが抜群。主人公の消防士とその家族が大団円を迎えるや否や、そこで終わるんかい! とバッサリと第二章へ続く怒涛のエンディング。嗚呼、どうして観ないでいられようか。

鏡の国の残酷な美少女は誰か

映画『ガール・イン・ザ・ミラー

クロックワークスより11月6日リリース

(C)2017 ACE IN THE HOLE PRODUCTIONS, L.P.

映画『ガール・イン・ザ・ミラー』あらすじ

両親から「出来損ない」と言われ学校でもいじめられているマリアは、暗い毎日を過ごしていた。ある日バスルームの鏡に映る自分から、「あなたの望みを叶えたい」と言われた彼女は、もうひとりの自分に操られていく……。

 

映画『ガール・イン・ザ・ミラー』の映画専門家レビュー

誰もが羨むような美貌ながらも“幸薄”の少女を、オリヴィア・ハッセーの娘であるインディア・アイズリーがヌードも披露して熱演。鏡越しに目が合ったら最後、マリアの欲望、秘密もすべてお見通しの彼女は、マリアを支配下に置いて彼女の人生を乗っ取り、陰惨な復讐までも果たしていく。アイススケート場でのプロムナイトが最悪の夜に変わる様は、さながら現代版『キャリー』か。鏡の中の少女とマリアの関係性、そして一家に隠された悲しい真実と、娘の整形を目論むパパには心底ゾッとする。

 

親離れならぬ、子離れのススメ

映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』

ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより11月6日リリース

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映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』あらすじ

NYのブルックリンの海辺の街、レッドフックでレコードショップを営む元バンドマンの父と、医大に通うことが決まっている娘。ふたりが作った歌をサイトに上げると思わぬ反響があり、ふたりは人生の選択を迫られる。

 

映画『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』の映画専門家レビュー

成績優秀で医大に進学、音楽の才能があって、配信サイトに投稿した曲も街で流れ、スカウトの声までかかる。極めつけは、俺とジャムろうぜとしつこく誘う父に付き合ってあげる。こんなデキた娘がいたら親がダメになるってもので、主人公は、周りの大人からいろんなかたちで自立を促される。いや、娘からもだ。妻に先立たれて独りで育てた愛娘を手放したくない気持ちは痛いほど分かるが、そこは自立しようぜ父よ……。全編を彩る音楽と共に父娘の新しい一歩を見つめたちょっとビターな逸品。

 

歴史的青春映画たちに並ぶ傑作

映画『ライ麦畑で出会ったら

TCエンタテインメントより11月6日リリース

(C)2015 COMING THROUGH THE RYE, LLC ALL RIGHTS RESERVED

映画『ライ麦畑で出会ったら』あらすじ

学校一冴えない高校生のジェイミーは、ある日「ライ麦畑でつかまえて」を読み感銘を受ける。演劇として脚色することを思いついた彼は、舞台化の許可をとるため、作者であるJ.D. サリンジャーを探しに行く旅に出る。

 

映画『ライ麦畑で出会ったら』の映画専門家レビュー

「ライ麦畑でつかまえて」に心打たれた青年・ジェイミーは学校で孤独な生活を送る文化系男子。なにかと標的にされてしまう彼だが、同作の舞台化の許可を得ようと学校を飛び出してサリンジャーを探しに出かける行動力はすごい。嫉妬、劣等感など思春期ならではの悩みと葛藤に蝕まれる中、優しくて可愛らしい少女ディーディーとの出会いやサリンジャーという人間から受けた刺激が、その心を癒し、そして強くさせる。そんな彼の成長が引き起こす、ある意味奇跡的なラストには感動。

 

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