近年世界的に注目され、今年で生誕160年となるフィンランドのモダニズム画家、ヘレン・シャルフベック(1862-1946)。彼女の画業と人生を決定づけた1915〜1923年の模様を描いた「魂のまなざし」が、7月15日(金)よりBunkamuraル・シネマほかで順次公開される。予告編と新ビジュアルが到着した。
病気から快復した少女を瑞々しく描いた〈快復期〉や、晩年まで描き続けた自画像に代表されるシャルフベックの作品は、多様なスタイルを取り入れつつ、親密さとメランコリー、静謐な美しさと力強さを一貫して湛えている。映画ではそんなシャルフベックが、抑圧的な家庭や男性社会に臆せず、名誉より情熱に従って凛と生きていく姿が、北欧の透明な光を浴びた自然や街並みとともに美しい映像で描かれる。
シャルフベックを演じるのは、第63回ベルリン国際映画祭でシューティング・スター賞に輝いたフィンランドの女優ラウラ・ビルン。監督はビヨンセ、セリーヌ・ディオン、ケリー・クラークソンなど数々のミュージック・ビデオを手掛けてきたアンティ・ヨキネン。本作と同じくラウラ・ビルンを主演に迎えた監督2作目『Purge』(2012)は、第85回アカデミー賞外国語映画賞フィンランド代表に選ばれている。
予告編は、不器用ながらも真実を求め、情熱に従ったヘレンの半生を切り取っている。「なぜ戦争や貧困を描くのか。女流作家にふさわしくない」と問われたヘレンは、「画家が描くときは、作品の説明など考えない。着想は内側と外側から同時にわき起こる。芸術家は悲しいものよ。幸せでも」と意味深な微笑みを見せる。
祖国独立と歩調を合わせるように、“女流作家”ではなく一人の画家、そして自立した人間として苦難の時代を生き抜いていくヘレン。だが世に名前を知られても、兄を優遇する母親には認められず、苦悩する。
そんな中、19歳下の青年エイナル・ロイターと出会ってヘレンの生活は一変。特別な感情の芽生えに戸惑うヘレンだったが、彼の旅立ちを受け、寂しさとともに全てを受け入れようと決意する。しかしようやく届いたエイナルの手紙には衝撃的な事実が書かれ、ヘレンは悲しさのあまり倒れてしまう──。
ヘレンの終生の愛と友情の物語、注目したい。
Story
1915年、高齢の母親とともに田舎で暮らすヘレン・シャルフベックは、いわば忘れられた画家だった。それでもヘレンは湧き出す情熱に従って絵を描き続けていた。すべてが変わったのは、訪ねてきた画商がヘレンの描き溜めた159点の素晴らしい作品を発見し、大きな個展の開催へ動き出したからだ。しかし、ヘレンの人生で最も重要な転機は、画商が紹介した19歳下の青年エイナル・ロイターとの出会いによってもたらされる……。
「魂のまなざし」
監督:アンティ・ヨキネン
出演:ラウラ・ビルン、ヨハンネス・ホロパイネン、クリスタ・コソネン、エーロ・アホ、ピルッコ・サイシオ、ヤルッコ・ラフティ
字幕:林かんな/原題:HELENE/2020年/フィンランド・エストニア/122分
©Finland Cinematic
配給:オンリー・ハーツ 後援:フィンランド大使館 応援:求龍堂