日本を平和へと導く真のリーダーの姿がここに！「峠 最後のサムライ」

司馬遼太郎のベストセラー『峠』を役所広司主演で初映画化した「峠 最後のサムライ」のBlu-ray＆DVDが、10月19日（水）にリリースされる。激動の時代を生き抜き坂本龍馬と並び称された、知られざる英雄・河井継之助の最後の一年とは…？

小泉堯史監督をはじめ、黒澤組ゆかりのキャスト＆スタッフが結集

「夢」や「影武者」など、数々の黒澤明作品に助監督として携わり、「雨あがる」で監督デビューした小泉堯史。「雨あがる」で三沢伊兵衛、「蜩ノ記」で戸田秋谷と義を貫く武士を描いてきた監督の集大成とも言うべき作品が「峠 最後のサムライ」だ。撮影の上田正治や編集の阿賀英登など、黒澤作品にも参加したスタッフも再集結している。

1867年、260年余りに及ぶ徳川幕府が終焉を迎え、諸藩が東軍と西軍に二分していた時代。1868年には戊辰戦争が勃発し、日本は混乱を極めていた。越後の小藩である長岡藩の家老・河井継之助は、東軍と西軍のどちらにもつかず和平を目指す“武装中立”を掲げる。

しかし、戦うことが当たり前だった時代に継之助の考えは受け入れられるはずもなく談判は決裂。腹をくくった彼は、信頼する者たちを連れ西軍との最後の戦いに身を投じていく。敵軍5万人にわずか690人で―。

主人公・河井継之助を演じるのは、小泉監督が脚本執筆中から想定していたという役所広司。日本映画界を牽引する名優が、河井継之助という人物に深みと説得力を持たせている。夫を支え、その帰りを待つ妻・おすがに松たか子、継之助の母・お貞に香川京子。さらに、田中泯や永山絢斗、芳根京子、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、仲代達矢といった錚々たるメンバーが顔を揃えた。

国を想い、民を想い、最後まで真心を尽くした男・河井継之助

国のために命を捧げ、万が一の時は切腹も辞さない覚悟があって当然とされていたサムライ。その中において、戦うのではなく中立という立場で“新しい日本”を目指した河井継之助という風雲児がいた。己の信念を曲げず、愛する家族や民のことをいちばんに考え、最後まで戦い抜いた男。彼を支え続けたものは一体何だったのか？

小泉監督は「司馬（遼太郎）さんが描こうとした美しいサムライ、河井継之助に会ってみたい」という想いから今回の脚本を書き始めたそうだが、そのあまりにも魅力的な人物像に観客もきっと魅了されてしまうことだろう。周囲に認められずとも、窮地に立たされようとも、「命なんざ使う時に使わねば意味がない！」と自ら先頭に立ち仲間を守り続ける。そんな英雄を演じきった役所広司はやはり見事であり、その佇まいや所作に鳥肌が立つ場面がいくつもあった。

中でも、負傷した継之助と、彼に仕える従僕の松蔵が塩沢村の屋敷に辿り着くシーンの役所広司の哀しみと希望をたたえた眼差し。彼は揺らめく炎の先に何を見たのか。河井継之助の人生を生き抜いた役所の名演を、ぜひ目に焼きつけてほしい。

ありのままを映すフィルムカメラの映像とこだわりのロケ地

奇をてらった演出に頼ることなく、ただただ実直に河井継之助の生き様を映像に焼きつけていった小泉監督。近年、現場ではあまり見られなくなったフィルムカメラを2～３台を用い、国指定重要文化財に指定されている邸宅や、実際に戦が行われた朝日山古戦場などロケ地にも徹底的にこだわっている。

約1カ月半かけてオープンセットを組んだという長岡藩の調練場のシーンでは、役所のアップを撮影する時でも、映らない場所にいる役者やエキストラにも演技をしてもらうという黒澤明の撮影法を踏襲。表にばかり目を向けるのではなく、裏方やエキストラにも気を配り常に最善の判断を下す監督の真摯な演出は、映像の中で確かに生きている。

本作のBlu-rayには、そんなメイキングのほか、舞台挨拶や予告編、【林修先生が徹底解説！】知られざる最後のサムライ 河井継之助とは⁉を収録。時代劇というと「難しそう…」と思うかもしれないが、現代にも通ずるサムライの生き様を、ひとりでも多くの人に観てほしいと思う。

文＝原真利子　制作＝キネマ旬報社