映画「カモン カモン」で真骨頂に達したマイク・ミルズの“いつもそばにいてくれる人”へのアプローチ

監督・脚本は「人生はビギナーズ」「20センチュリー・ウーマン」のマイク・ミルズ、主演は脚本に惚れ込んで出演を決めたという名優ホアキン・フェニックス、そして「ムーンライト」「ミッドサマー」などのヒット作を連発し日本でも知名度をあげている映画会社A24がタッグを組んで製作した「カモン カモン」のBlu-ray&DVDが11月2日にリリースされた。

アメリカ4つの都市を舞台にした「子ども」と「声」と「未来」の物語

初めて予告篇を見たときから、ジェシーの「カモン、カモン……」という可愛らしい声と小さく消えていくような笑い声が印象的だったこの作品は、まさにその「子ども」と「声」と「未来」の物語であった。

子どもたちにインタビューするラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、妹のヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から9歳の甥のジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を見るよう頼まれる。ジョニーとヴィヴは母親の死、ヴィヴの夫の精神的な不調をめぐってすれ違っていた時期があった。少し風変わりで鋭く、好奇心旺盛なジェシーと、子育ての経験がなく試行錯誤するジョニーの共同生活が、周囲の聡明で温かい人々や録音機材を通じ、少しずつ変化していく様子がアメリカ4つの都市を舞台に繊細に描かれていく。

オーディオコメンタリーから窺い知れるマイク・ミルズのアプローチ

マイク・ミルズの(「サムサッカー」05年、「人生はビギナーズ」10年、「20センチュリー・ウーマン」16年、など過去にもあらゆる作品で試みてきたであろう)“いつもそばにいてくれる人”へのアプローチは「カモン カモン」で真骨頂に達していて、さらには親切なことに、彼はそのあらゆるアプローチについて「カモン カモン」Blu-ray収録のオーディオコメンタリーの中で丁寧に解説している。

作品のファンにとってはもちろんのこと、フィルムメイカーにとって有益なヒントがノンストップで、溢れんばかりの情報量をもって提示される。ミルズが他の監督のコメンタリーで多くを学んだことから自身も収録するようにしているとのことだ。

マイク・ミルズはドキュメンタリーとの親和性も高いであろうことは、「カモン カモン」のタッチ、フィルモグラフィ、コメンタリーでの発言、全てから明らかだが、私には、この作品の制作のスタイルこそが、チャーミングな撮影秘話を生み出していると思われる。

例えば

ウディ・ノーマンという天才的な子ども役。

インタビューと非職業俳優。

アドリブ。

脚本の付け足し。

引用。

4つの都市というロケーション。

少人数での撮影体制。

これだけ多くの要素が詰め込まれていれば、音声を抑えた本篇映像に沿って監督が話すエピソードが一切尽きることなく、どのシーンについても興味をそそられるのは当然のことだ。そしてこれはマイク・ミルズの話しぶりにも裏づけられる。彼は映画作りが楽しくてたまらないといった様子で語る。それは特典のメイキング映像からも窺い知れる。

子どもを大人と対等な存在として接することという、物語にとっても撮影にとっても重要視されたテーマを尊重する意味で「子役」という表現を避けることにする

文=古里静花 制作=キネマ旬報社

 

 

 
※Blu-ray展開図になります。
「カモン カモン」

●11月2日(水)Blu-ray&DVDリリース(同日DVDレンタル開始)
▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:6,600円(税込) DVD:4,290円(税込)
●Blu-ray特典
【封入特典】
・ポストカード(3枚組)
【音声特典】
・本編オーディオコメンタリー(監督・脚本:マイク・ミルズ)
【映像特典】
・メイキング
・日本版予告集
(本予告(100秒)/本予告(60秒)/ショート予告(30秒)/15秒スポット①/15秒スポット②)
・オリジナル予告
●DVD特典
【映像特典】
・日本版予告集
(本予告(100秒)/本予告(60秒)/ショート予告(30秒)/15秒スポット①/15秒スポット②)
・オリジナル予告

●2021年/アメリカ/本編108分
●監督・脚本:マイク・ミルズ
●出演:ホアキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
●発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2021 Be Funny When You Can LLC. All Rights Reserved.