• キネマ旬報WEB トップ
  • ニュース一覧
  • フィリピンダブルの高校生と母親の葛藤と愛を描く飯塚花笑監督作「世界は僕らに気づかない」、先行イベント決定&著名人コメント到着

フィリピンダブルの高校生と母親の葛藤と愛を描く飯塚花笑監督作「世界は僕らに気づかない」、先行イベント決定&著名人コメント到着

 

「フタリノセカイ」でシスジェンダーとトランスジェンダーの愛を描いた飯塚花笑監督の最新作。フィリピンダブルの高校生と母親との物語を描き、各国映画祭で評判を呼んだ「世界は僕らに気づかない」が、1月13日(金)より新宿シネマカリテ、Bunkamura ル・シネマほかで全国公開される。12月26日(月)18:00より新宿シネマカリテでキャスト・監督登壇の先行上映イベントが行われることが決定し(チケットは12月21日(水)正午より新宿シネマカリテのHPで販売)、著名人のコメントが到着した。

 

 

レプロエンタテインメント主催の映画製作プロジェクト〈感動シネマアワード〉から生まれた飯塚花笑監督のオリジナル長編第5作であり、8年の構想期間を経て完成させた本作。複雑なバックグラウンドを抱えて本当の思いを吐露できない主人公・純悟を演じるのは、「東京リベンジャーズ」のパーちん役などで存在感を放ち、これが映画初主演となる堀家一希。純悟を深く愛しつつ厳しい態度もとってしまう母親・レイナ役には、スコットランド人の父親とフィリピン人の母親を持ち、本格的な演技は初挑戦となったガウ。

映画は2022年の大阪アジアン映画祭でワールドプレミアを迎え、〈来るべき才能賞〉を受賞。その後、ドイツ、韓国、ニューヨーク、香港、オランダ、シカゴ、フィリピンなど世界各地の映画祭で高く評価された。

 

 

著名人コメントは以下(五十音順、敬称略)。

この作品はセクシャルマイノリティ、人種、宗教、貧困など、今日本が抱えている問題を扱ったものだが、それを特別視している訳ではないと思う。どんな生きづらさや悲しみがあっても、希望と愛を捨てなければいつでも道が開ける。普遍的な救いを示してくれる。そんなことを教えてくれる素敵な映画だ。
──稲津勝友(映画監督)

多様性が大切だと言われる社会で、幸せになろうとカッコ悪くもがいている親子の姿が、ただただ描かれる。日本の地方都市でマイノリティが夢を叶えることは可能なのか、観る側にも問いかける作品。
──遠藤まめた(一般社団法人にじーず代表)

あんたはちゃんと学校行きな!
その一言で母親の愛を感じました。
そう思った私は
大人になったのかもしれません。
──片山友希(女優)

本当の悲しみを知る人にしか撮り得ない「優しさ」が映っているように感じ、何度も涙した。
パーソナルな視座から多様な人間の姿を温かく描き出す、ヤスミン・アフマドの映画的血脈を引くと言っていい監督が日本に現れたことを、心より誇りに思う。
世界は飯塚花笑に気づいている。
──金子雅和(映画監督)

今作は、無意識のうちに人の痛みにつけ込み、石を投げ打つ行為をしていないかと私たちに問いかける。劇中、母が歌う『Ang Pipit』の、鳥に石を投げつける男のように、差別に満ちた言葉や眼差しを無邪気に放っていないかと。タイトルを反語とするような人間であり、社会であるようにと願いを込めて。
──金原由佳(映画ジャーナリスト)

『世界は僕らに気づかない』は「愛」を渇望し、「愛」に絶望する僕らが、「愛」を何度もなぞり終えた先に見つける、僕らの愛を高らかに鳴り響かせる映画だ。映画監督・飯塚花笑の作家性を考えるときに重要なのは、飯塚がいかに「」を外から崩すのではなく、その内からじわじわと押し広げ続けることで「」の権威性を無効化する可能性に賭けているかという点だろう。すべてのピンを一度に倒す必要はない。一本ずつ着実に、大きな音で世界に響かせてやればいい、これが僕たちの愛だと。
──久保豊(映画研究者)

怒りは誰にでもある。そしてその怒りが生きて行く活力になっていくこともある。だけどホントの成長には繋がっていかない。
『...そんなこと分かっているんだ。...だけど怒りが、怒りが消えないし...、どうしたら無くなるかもわからず、...自分が怒っていることさえ気付かないこともある。』
そんな10代の自分に、この映画で出遭って、思った。
もし、いま目の前に、そんな青年がいたら、
生きる答えを出そうとするのではなく
大きな寛容さで向き合える大人でありたいと。
いゃぁ、しかし皆さん演技経験が少ない方が多いのにホント素晴らしい。監督の丁寧な情熱を感じて嬉しかった。
──近藤芳正(俳優)

この世界に対して、言いたいことがある。作者がそんな熱い思いに駆られて作った映画は、始まるなり最初の数ショットだけで、もうそれとわかるものだ。『世界は僕らに気づかない』は、まさにそれを体現した一本。この世の片隅で、理不尽にも不幸な境遇に追いやられながら生きている人たちに、光を当てる。彼らの怒りに、寄り添う。そして飯塚花笑監督は、その先にそれでも世界が生きやすくなるための希望の道筋をも、静かに、懸命に、照らし出そうとしている。
──暉峻創三(映画評論家/大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)

飯塚花笑監督の丹念な取材に基づき、イメージではなく事実に基づいた、フィリピン人シングルマザー家庭とフィリピンパブ周辺がスクリーン上に事細かに再現されている。フィリピンパブ周辺で泥臭く生きている人たちを知ることのできる、唯一無二の作品だ。
──中島弘象(ルポライター)

「子供は親を選べない。親も子供を選べない」というナレーションのように、ハーフだという自分が嫌な時期もありました。他の家の子達と自分の家が違うことや、自分の悩みを日本語でどんな風にわかりやすく母に伝えるにはどうしたら良いのかのもどかしさを子供の時から悩んでいたのと同時に、伝え方がわからなくていつしか伝えずにいた時もありました。「ママみたいなママにはなりたくない」と思っていました。作品の英題である「Angry Son」ではなく私は「Angry Girl」でした。
──花垣秀美

ここにまた僕のしらない世界があった、美しい世界があった。 
マミーと闘った日々の、自分の理解し得ない感情が一つ一つ浄化されていった感覚を覚えました。
ありがとう、飯塚監督。
──坂東龍汰(俳優)

飯塚花笑の映画は、衒いもなく愛を映し出す。愛。世界の何処かで今こんなことが起きてるんだと想像が膨らみ、その想像の天井を突き抜ける希望のラストがある。希望。僕が生きている間、差別や偏見を目の前にした時、飯塚花笑の映画を思い出し続ける。
──藤原季節(俳優)

演技とは自分と役を繋げ、想像の設定の中で真実に生きることである。堀家一希とガウのリアルなやりとり、大胆かつ繊細な心の動きは、まさしくリアリズム演技。心の機微がミリ単位でスクリーンから伝わってくる。真実は人の心を揺さぶる。演技が細部に宿っている。すべての俳優のmust-see 映画。多様性社会への実現に向けて、すべての人に観て欲しい。この素晴らしい真実の演技に、世界は大切なことに気づくはずである。
──ボビー中西(演技コーチ)

この映画の中の親子を僕はすごく羨ましく感じました。僕ももっと両親とぶつかってみたかったなと。もっと迷惑をかけて、もっと迷惑をかけられて、甘えて甘えられて。そこから逃げてたわけじゃないけど、どうしても僕は伝えられなかった。親と言ってもやっぱりそれは1人の人間で、子供だってもちろん1人の人間。でも、やっぱり親子なんだなって。そんな事を考えさせられる映画でした。
──前田旺志郎(俳優)

大人の様な頼もしさと、子供のままのあどけなさ。そして危うさと脆さ。そんな姿を繰り返す主人公に見入ってしまう。生きていく彼の周りには悪い奴なんて誰もいない。そう信じたくなる晴れやかな愛にグッとくる。
──松本哲也(小松台東主宰・劇作家)

無関心な日本社会の中で、自分の居場所を見つけようともがく青年の美しくも親密な旅路。フィリピン人と日本人であり、かつゲイである彼は、様々な苦難や嘲笑にさらされているが、自分自身を受け入れ、大切な人たちを愛することで乗り越えていく。そんな美しい魂に光を当てようとする飯塚花笑監督の情熱に感動すると共に、私は大きな希望と美しさを見出しました。
A beautiful and intimate journey of a young man who struggles to belong in an indifferent japanese society. Being Philippino-Japanese and gay in a very conservative society he struggles with the hardships his mother and he have to go through as well as the mockery from the other kids in the neighborhood for being both gaijin and gay. I find hope and beauty in the director Kashou Iizuka’s work whose passion is to shed light on these beautiful souls who struggle to belong in our Japanese society and overcome by choosing to love themselves as well as the people who are dear to them.
──米倉リエナ(演出家)

 

 

Story
群馬県太田市に住む高校生の純悟は、フィリピンパブに勤めるフィリピン人の母親を持つ。父親については何も聞かされておらず、毎月振り込まれる養育費だけが父親との繋がりだ。純悟には恋人の優助がいるが、優助からパートナーシップを結びたいと望まれても、生い立ちが引け目となってなかなか決断できずにいた。そんなある日、母親のレイナが再婚したいと、恋人を家に連れて来る。見知らぬ男と一緒に暮らすのを嫌がった純悟は、実の父親を探すことにするが……。

 

「世界は僕らに気づかない」

出演:堀家一希、ガウ、篠原雅史、村山朋果、森下信浩、宮前隆行、田村菜穂、藤田あまね、鈴木咲莉、加藤亮佑、高野恭子、橘芳美、佐田佑慈、竹下かおり、小野孝弘、関幸治、長尾卓磨、岩谷健司
脚本・監督:飯塚花笑
エグゼクティブプロデューサー:本間憲、和田有啓 プロデューサー:菊地陽介、山田真史、飯塚花笑 協力プロデューサー:志尾睦子、佐久間由香里 撮影:角洋介 サウンドデザイン:紫藤佑弥 音楽:佐藤那美 編集:阿部誠 ヘアメイク:浅井美智恵 衣裳:村上久美子 スチール:水津惣一郎 脚本監修:中島弘象 助監督:緒方一智 制作担当:久保智彦 宣伝美術:unnoticed 宣伝:高木真寿美、亀山登美、矢部紗耶香
製作:レプロエンタテインメント 配給:Atemo
2022年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/PG-12/112分
©「世界は僕らに気づかない」製作委員会

 

各国プレミア・映画祭出品歴

【ワールドプレミア】
大阪アジアン映画祭/日本 2022年3月10日~20日
コンペティション部門 「来るべき才能賞」受賞
〈受賞理由〉
人種差別とジェンダーアイデンティティの両方を描くことは簡単なことではないと思います。しかし、フィリピン人の母親と日本人の父親を持つ主人公が、自身のセクシャリティとアイデンティティの危機に対峙する姿を、飯塚花笑監督は巧みに映し出しました。自らの未来を切り開こうとする彼の旅は、今もなお差別と不正義に分断された世界で生きる我々に、違いを認め合う重要性に気づかせてくれます。ガウさんと堀家一希さんの演技も力強いものでした。これは、飯塚監督が優れた演出力と衝突する物語性を生み出す力に長けていることを証明しています。

【インターナショナルプレミア】
ニッポンコネクション/ドイツ 2022年5月24日~29日
ニッポン・ヴィジョンズ部門
若手監督作品や実験的アプローチを行う作品を紹介する部門

【韓国プレミア】
富川ファンタスティック国際映画祭/韓国 2022年7月7日~17日 
Merry-Go-Round section メリーゴーランドセクション
観客の心を温めるコメディやドラマ作品を紹介する部門

【北米プレミア】
ニューヨーク・アジアン映画祭/アメリカ 2022年7月15日~28日
Uncaged Award for Best Feature Film Competition アンゲイジドアワード長編コンペティション
製作者の情熱、想像力、意欲を称え、国際的に知られるべきフィルムメイカーにスポットライトを当てる部門

関西クィア映画祭/日本 2022年9月2日〜25日
香港レズビアン&ゲイ映画祭/香港 2022年9月17日〜10月1日
カメラジャパン・フェスティバル/オランダ 2022年9月22日〜10月2日
シカゴ国際児童映画祭/アメリカ 2022年11月4日~20日
Q Cinema International Festival/フィリピン 2022年11月17日〜26日