「658km、陽子の旅」が上海国際映画祭で最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の3冠!

 

菊地凛子と熊切和嘉監督が「空の穴」(01)以来のタッグを組み、ロスジェネ世代の女性の東北縦断旅を描いた「658km、陽子の旅」(7月28日よりユーロスペース、テアトル新宿ほかで全国順次公開)が、第25回上海国際映画祭コンペティション部門で最優秀作品賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞を受賞した。

 

左から主演の菊地凛子、熊切和嘉監督、脚本の室井孝介(敬称略)

 

授賞式で、脚本を執筆した室井孝介は「私は映画祭の経験というのがないものですから、このような華やかな場は夢のような場所です。この場にお呼びいただき、大変光栄ですし、賞をいただけると思っていなかったので、本当に嬉しいです。ありがとうございました」とコメント。

熊切和嘉監督は「このような素晴らしい賞をいただきまして、大変光栄に思います。(脚本にクレジットされている)〈浪子想〉と言いますのは、私、熊切和嘉と妻の熊切智子の共同のペンネームでして、今回もちろん室井さんの脚本が素晴らしかったのですが、そこからさらに妻の力で、主人公の女性を深く掘り下げて描けたのかなと思っています。妻にこの場を借りて、感謝をしたいと思います。ありがとうございます」と思いを伝えた。

最優秀女優賞に輝いた菊地凛子は「まさか、初めて上海国際映画祭というこの素敵な映画祭に呼んでいただき、このような素敵な賞をいただいて本当に嬉しいです。20年前に自分を拾ってくれた熊切監督の作品で、こうして賞をいただけて大変嬉しく思います」と述べた。

また、MCから「中国でも、知名度のある菊地凛子さん。中国の映画監督と一緒に映画を作りたいと思ったことはありますか? 旦那さん(染谷将太)は、中国のチェン・カイコー監督の映画で主演したことがありますが、ご自身はどう思われますか? この会場にいる素敵な中国の俳優や監督と一緒に中国で映画を作りたいと思いますか?」と問われ、「是非。自分が子どもの頃から中国の映画を見て育ってきましたし、本当に出演してみたいんですけど、中国語の挨拶すら難しくて。今から勉強します!」とアピール。

最優秀作品賞を受賞し、3人は再び壇上へ。

熊切監督は「まさかこんなに賞をいただけるなんて全然思ってもいなかったので本当に嬉しく思います。ありがとうございます。」、菊地は「3つも賞をいただけるとは思ってもおらず、本当にありがとうございます。主人とは『獲りました』『おめでとう』とメールで会話しました。主人にも感謝したいと思います」と喜んだ。

 

 

〈受賞後インタビュー〉

Q 熊切和嘉監督、最優秀作品賞という大きな賞をもらった感想をお願いします。

熊切 菊地さんといつかまた仕事したいと、20年間思っていて、それが叶ったので、撮影中から夢の中にいるようでした。それが、まだ続いているような気持ちです。

Q 室井孝介さん、今回の脚本は、作りやすいストーリーではないと思います。難しいと思ったこともあるかと思いますがいかがですか?

室井 本作は、私の実体験が入っています。母親を16年前に亡くしました。事故があった日に、病院から電話が掛かってきました。その電話に出たのですが、その時には、「とにかく病院に来てくれ」というだけで、容体を教えてくれない訳です。なので、病院に向かいました。その時に、母の容体のことや、これからのこと、これまでのことなどを考えてわずか1時間かからない道のりが、すごく長い時間に感じられて、その時の圧倒的な時間というのを、何かドラマにできないかな、と思い、この物語になりました。

Q 初めての主演女優賞受賞、今のお気持ちをお聞かせください。

菊地 本当に光栄です。まさか自分がとると思っていなかったので、油断して気を抜いていたら名前を呼ばれたので、驚きとその事実を受け入れるのに時間がかかりました。国際映画祭に初めて呼んでいただいたこの上海で、皆さんに温かく迎えていただき、女優賞、脚本賞、作品賞をいただけるとは思ってもいなかったです。役者をやっていて、心からよかったと思います。ここからの役者人生、また身が引き締まる思いです。
20年前に熊切監督に拾っていただいたことも、こうしてまた新しい作品で監督に感謝できる環境にこられたことは、何よりも自分の宝物です。この作品を愛していますし、多くの方にこの作品が届くことが幸せです。審査員の方に舞台裏で「審査員みんながあなたに決めたのよ」と言われ、映画にも感動したと言っていただいた。その言葉がとても嬉しかったです。(そう話してくださったのは)インドの審査員の方で、こうやって国際映画祭に参加することで、国境関係なく、1本の映画で心を揺さぶられるということが自分の身に起こるんだということは幸せだなと思います。またいただいた役を真摯にひとつずつやっていこうと、心に誓いました。

 

上映後のQ&Aにて

 

〈審査員講評・受賞理由〉

★作品賞講評:「この映画は、ロードムービーを創造的な方法で探求し、昨今の日本で暮らす平凡な人々の平凡な日常を描くなかで、ヒロインが自分自身を発見するプロセスを目撃させます。審査員は満場一致で本作が唯一無二の作品だと評価しました」

★脚本賞講評:「これが人生・社会・希望と絶望の旅についての深遠な物語であり、更にそれ以上に自己発見についての物語であると評価したため、最優秀脚本賞を授与します」

★女優賞講評:「映画の中の菊地凛子の表情豊かな目と震える手は審査員たちの心を捉え、キャラクターを内面化する彼女の演技力は“俳優”の存在を忘れさせます。彼女の演技はキャラクターに命を吹き込みました」

 

 

Story
東京で夢破れて人生を諦め、なんとなく過ごしてきた就職氷河期世代の独身フリーター・陽子(菊地凛子)は、夢への挑戦を反対されてから20年以上も断絶していた父が亡くなったと知らされる。そして従兄である茂(竹原ピストル)の一家の車で、渋々ながら弘前へ帰郷することに。ところがサービスエリアで、トラブルを起こした子どもに気を取られた茂に置き去りにされ、所持金のない陽子はヒッチハイクするはめに。果たして明日正午の出棺までに到着できるか? 毒舌のシングルマザー(黒沢あすか)、人懐こい女の子(見上愛)、怪しいライター(浜野謙太)、温かな夫婦(吉澤健と風吹ジュン)、そして若き父の幻(オダギリジョー)──さまざまな出会いが、陽子の凍った心を溶かしていく。

 

©2022「658km、陽子の旅」製作委員会 
配給:カルチュア・パブリッシャーズ

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