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〈ホロコースト証言シリーズ〉最終作「メンゲレと私」公開。証言者ダニエル・ハノッホ氏の招聘に向けたクラウドファンディング開始

 

ウィーンを拠点とする製作プロダクション〈ブラックボックス・フィルム〉のクリスティアン・クレーネス監督とフロリアン・ヴァイゲンザマー監督が、ホロコースト関係者の証言をアーカイブ映像とともに映し出すドキュメンタリー〈ホロコースト証言シリーズ〉。その「ゲッベルスと私」「ユダヤ人の私」に続く第3弾にして最終作であり、強制収容所を生き延びたダニエル・ハノッホ氏が衝撃の記憶を語る「メンゲレと私」が、12月3日(日)より東京都写真美術館ホールほかで全国公開される。

 

 

リトアニア出身のユダヤ人、ダニエル・ハノッホ(1932年生まれ)は、わずか9歳でカウナス郊外のゲットーに送られ、12歳でアウシュヴィッツ強制収容所に連行された。金髪の美少年だったダニエルは、非道な人体実験を繰り返した “死の天使” ヨーゼフ・メンゲレ医師に寵愛され、特異な収容所生活を送る。そんな彼が見た真の地獄は、大戦末期に連合軍の攻勢を逃れるべく強いられた「死の行進」だった。暴力、伝染病、カニバリズム……少年は人類史の最暗部を目撃する。

 

 

現在イスラエルのテルアビブに暮らすダニエル・ハノッホ氏(91歳)の日本招聘などに向けたクラウドファンディングも始まった。

 

〈ダニエル・ハノッホ氏の来日に向けた動画コメント〉

 

〈上映劇場担当者のコメント〉

東京都写真美術館 中村浩美氏と遠山樹里氏
昨今美術界では、文字史料のみに依らず、当事者へのインタヴューを介した口述史料〈オーラル・ヒストリー〉が注目されています。その理由はふたつ。当事者の個人的な記憶を人類の記憶として共有する術となり得ること、そしてそれを次代へと継承する意義があること。微力ながら、当館での上映+トークがその一助となれば幸いです。

第七藝樹劇場・支配人 小坂誠氏
岩波ホールの閉館により日本での完結が危ぶまれた「ホロコースト証言シリーズ」ですが、サニーフィルムの有田さんから今回のプロジェクトを聞いた時、この映画にとって最善の未来が見えました。元・岩波ホールの矢本さんと共に新しい「日本公開」のかたちにチャレンジされます。本プロジェクトにより来日される証言者ダニエル・ハノッホ氏と監督は、大阪の観客にも戦争の圧倒的な現実を伝えてくれることでしょう。我々の映画館からその影響を日本の社会に波紋のように広げられるよう努力します。

桜坂劇場 下地久美子氏
御歳91歳のダニエル・ハノッホ氏に、過酷な長旅をお願いしている状況には、正直「心苦しい」という思いが込み上げます。でもだからこそ、来日どころか来沖まで決断してくださったダニエルさんに、心からの感謝を込め、大切にお迎えさせていただきたいと思っています。78年ほど前、20万人以上の命が失われた戦争が終結した沖縄で、あるコメディアンが「命(ぬち)ぬ御祝儀(ぐすーじ)さびら」(命のお祝いをしましょう)と言って、芸を披露しては皆を笑わせていたという逸話があります。失った命を数えて泣き明かすのではなく、生き残った者同士で生き残った命を祝おう。沖縄はそうやって復興してきたんだよ、と我々は教わり育ってきました。ですから、ダニエルさんにお辛い体験をお話しいただいたその後は、感謝の意をこめ、一緒に「命ぬ御祝儀」ができたら嬉しいです。ホロコーストという地獄を生き延びたダニエルさんと、地上戦という地獄を経験した沖縄とで発信する平和の祈りが、「生」への祝福に満ちていたらいいなと思っています。

 

 

「メンゲレと私」

監督:クリスティアン・クレーネス、フロリアン・ヴァイゲンザマー
2021年/オーストリア映画/97分/英語/モノクロ/日本語字幕:吉川美奈子