福間健二監督の新作にして遺作。14歳と77歳の交流を綴る「きのう生まれたわけじゃない」
詩と映画の両輪で活躍してきた福間健二監督が、少女と老人の交流を描いた「きのう生まれたわけじゃない」が、11月11日(土)よりポレポレ東中野ほかで全国順次公開される。なお福間監督は映画の完成後に脳梗塞で倒れ、療養中に肺炎を起こして今年4月26日に74歳で逝去、これが遺作となった。
心の通わない母と二人で暮らし、中学校に通わず、希望を抱けない14歳の七海(ななみ)。妻を亡くし、過去にとらわれた元船乗りの77歳・寺田。ふとしたきっかけで心を通わせた二人は、友人かつ家族のような日々を過ごす。そんな中で、新たな人生の歯車が動き出す──。
七海を演じるのは今回が映画初出演のくるみ、寺田には福間監督自身が扮する。そして七海が心を許す岬、ならびに寺田の亡き妻・綾子の亡霊の二役で正木佐和が出演。さらに守屋文雄、安部智凛、蕪木虎太郎、住本尚子、谷川俊之、今泉浩一、小原早織らが脇を固める。
福間健二が若いスタッフと共に挑んだ新境地を見届けたい。
いま、人々は、とりわけ弱い立場にある老人と少年少女は、生き方を見失っている者が多い。これから何をすればいいのか、展望が見いだせない。けれども、人は人に出会い、なにかを受け取り、与えあうことで、小さな希望をつかむことはできる。
東京郊外を舞台にした、近過去でも近未来でもあるような物語を通して、そういう主題を訴えるとともに、いままでの殻を破るような映画表現を追求し、そのなかに人々を招くような「対話」を実現したい。
──福間健二(映画企画時のコメント)
福間健二は、この地上にたしかな感触をもって生きることを底辺におきながら、詩と映画への冒険的な表現に果敢に挑戦してきた。本作では、探していた七海役のくるみに出会えた瞬間に、みずからが老人の寺田役を引き受けることを決めたのだと思う。20歳で若松孝二監督『通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇』の脚本を書き主演してから53年後の、大きな挑戦だった。「主演作が遺作になるなんてカッコよすぎるよ、監督」とスタッフのひとりが言ったが、果たしてそうなのである。
──福間惠子(本作プロデューサー)
「きのう生まれたわけじゃない」
出演:くるみ、福間健二、正木佐和、安部智凛、守屋文雄、蕪木虎太郎、住本尚子、谷川俊之、黒田武士、高平よしあき、常本琢招、保志実都貴、西山慧、柴山葉平、村上僚、今泉浩一、小原早織、町屋良平(友情出演)、伊藤洋三郎(友情出演)
原案・脚本・監督:福間健二 撮影・照明:山本龍 録音・編集:川上拓也 美術:住本尚子、則武弥 音楽:福間健二 ヘアメイク:浅野加奈 スタイリスト:原早織 脚本協力・監督補:守屋文雄 助監督:厨子翔平、大城義弘 プロデューサー:福間惠子
製作:tough mama 配給・宣伝:ブライトホース・フィルム
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
2023年/86分/1:1.85/5.1ch/DCP
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