短歌を原作とした「ひかりの歌」「春原さんのうた」を撮ってきた杉田協士監督にとって、デビュー作「ひとつの歌」以来12年ぶりのオリジナル作品となる「彼方のうた」が、第80回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門に出品されることが決定。海外版ポスタービジュアルが到着した。日本では2024年の劇場公開、およびWeb3時代の動画配信プラットフォーム〈Roadstead〉での配信を予定している。
書店員の春(25)は、駅前のベンチに座っていた雪子(45)に道を尋ねるふりをして声をかける。春は雪子の顔に見える悲しみを見過ごせずにいた。一方で春は剛(45)の後をつけながら、その様子を確かめる日々を過ごしていた。
春は子どもの頃、街で見かけた雪子や剛に声をかけたことがあった。春の行動に気づいていた剛が春の職場に現れたことで、また、春自身が再び雪子に声をかけたことで、それぞれの関係が動き出していく。春は二人と過ごす中で、自身が抱える母親への思い、悲しみと向き合っていく──。
春役は小川あん、雪子役は中村優子、剛役は眞島秀和。スタッフには飯岡幸子(撮影)、大川景子(編集)、黄永昌(音響)、スカンク/SKANK(音楽)ら杉田作品を支えてきた面々が集結。製作はねこじゃらし、配給はイハフィルムズが担う。
〈コメント〉
杉田協士監督
『彼方のうた』の脚本に書かれたすべてのシーンを撮り終えた日、この映画にはもうひとつのシーンがあると気づきました。皆さんと過ごした撮影の日々がそのことを最後に教えてくれました。見返すたびに、どうしてこのような瞬間を残すことができたのだろうと心が震わされます。そこに至ることができたのは、小川あんさん、中村優子さん、眞島秀和さんをはじめとした出演者の皆さん、スタッフの皆さんが、楽しむことも迷うこともただそのままに、ありのままにそこに一緒に居続けてくれたからだと思います。それは信じるということだったと思います。そうして完成したこの映画がヴェネチア国際映画祭で上映されることをとてもうれしく思います。これから多くの方々にこの作品に出会ってもらえるように、ひきつづきがんばってまいります。
小川あん
4年前。俳優をやめていた時に、また映画のひかりを見つけられたのは、杉田さんの映画を見たからでした。『彼方のうた』に出演することができて、とても幸せです。作品に関わっている全てのみなさま、国を超えて見つけてくださったみなさま、物語の中に生きてるみんなも、本当にありがとうございます。
ヴェネチアからはじまり、多くの方に『彼方のうた』が届きますように。
中村優子
杉田さん、おめでとうございます。
『彼方のうた』の長い旅が、美しいヴェニスより始まる幸運に心から感謝いたします。
撮影でお世話になったお一人お一人、御顔の見える手作りの作品が、軽やかに海を超える奇跡。映画って素敵です。
眞島秀和
杉田監督とは約20年ほど、自主映画仲間としての付き合いがあります。
今回久しぶりにお会いして、あの頃と変わらずというか、ますます思慮深く穏やかな、どこか少年の様なところはそのままの杉田監督でなんだか嬉しくなったことが印象に残っています。
現場では杉田監督の世界観で、独特な杉田時間が流れているんです。演出していない様でしている様な、カット割を決めていない様で決めている様な、そんな優しい時間が流れています。
そんな杉田作品が多くの方に触れる機会が訪れたこと、とても嬉しく思っております。
ヴェネチア国際映画祭への参加、おめでとうございます。
「彼方のうた」
脚本・監督:杉田協士 プロデューサー:川村岬、槻舘南菜子、髭野純、杉田協士 アソシエイト・プロデューサー:笹木喜絵、田中佐知彦 撮影:飯岡幸子 音響:黄永昌 照明:秋山恵二郎、平谷里紗 衣裳:小里幸子、阿部勇希 ヘアメイク:齋藤恵理子 編集:大川景子 カラリスト:田巻源太 音楽:スカンク/SKANK スチール:小財美香子 宣伝:平井万里子 国際広報:グロリア・ゼルビナーティ 製作:ねこじゃらし 制作プロダクション・配給:イハフィルムズ