誰かに教えたくなるシネマ<7月号>



毎月リリースされる未公開、単館系作品の中から、「観たら必ず誰かに教えたくなる」作品を厳選してご紹介。劇場で見逃した作品や隠れた名作が多く並ぶレンタル店だからこそ出会える良作、小規模公開ながらの傑作など、様々な掘り出し映画との出会いを提供します!

 

7月リリース作品

 

役者陣&SABU監督の手腕に脱帽!
『jam』


バップより6月19日リリース

(C)2018「jam」製作委員会

【STORY】

場末の演歌歌手・ヒロシ、意識が戻らない彼女のために善行を行って願いを叶えようとする男・タケル、ヤクザに命を狙われているテツオ。まったく違う生活をする3人だったが、ひょんなことから対峙することになり……。

 

【オススメCOMMENT】

異なる人生を生きる3人の男たちが同じ場所に居合わせたり、共通の人物が登場したりと、そのちりばめられた伏線と独特なスリルに終始釘付け。さらに好きな歌手を誘拐して自分のための歌を作らせる熱狂的なファン、裏切った仲間に復讐しようと金槌1つで暴れ狂う男など、数々の名作を彷彿とさせる描写もあり監督の映画愛を感じました。役者陣の演技も素晴らしく、中でも熱狂ファンを演じる筒井真理子の怪演ぶりは最高。物語も演技も全部ひっくるめて、観る価値ありの1本です!

 

犯罪で失ったものはあったのか
『ある女流作家の罪と罰』


20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパンより7月3日リリース

(C) 2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

【STORY】

かつてベストセラー作家だったリーは、家賃も滞るようなどん底の生活を送っていた。そんなある日、古書店で大女優の手紙が高値で売れたことから、様々な有名人の手紙を偽造しては売り歩き大金を手にするようになっていく。

 

【オススメCOMMENT】

態度は尊大で鼻持ちならず、モラルも乏しく、蠅でさえ死んでしまう汚部屋で寝起きをする、見るも憐れなニューヨーカー。そんな嫌悪と憐憫の境界線を縫うような絶妙な人物像を作り上げたメリッサ・マッカーシーに惜しみない賛辞を。いかにも都会的で小洒落たジャジーな音楽と、NY のビルの街並みや、そこに佇む古書店を巧みに切り取った画の醸し出すムードも心地よい。何より、罪を犯したことで人生を立て直していくことになる主人公の孤独と、ちょっとした出来心に共感を覚える快作です。

 

恋人まであともう少しの僕たち
『君の結婚式』


クロックワークスより7月3日リリース

(C) filmK CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

【STORY】

高校3年の夏、転校生のスンヒに一目惚れしたウヨン。スンヒをしつこく追いかけまわし、ついに恋人同士になりかけるが、スンヒは1本の電話を残して姿を消してしまう。1年後、ウヨンは彼女を追って同じ大学に入学するが……。

 

【オススメCOMMENT】

韓国で名作『建築学概論』の最速記録を塗り替え、動員200万人を記録した初恋ドラマ。パク・ボヨンとキム・ヨングァンが高校時代からの腐れ縁カップルを演じ、ふたりがくっついたり離れたりという、まるでお天気のような関係とやりとりがいじらしく、身長差30㎝もあるふたりの並んだショットは萌え以外の何でもない。“僕たち、もう少しで恋人だったね” というビターなメッセージが始終付きまとうのだが、10年もの間互いの人生に居続けた大切なひとり、というのも悪くないかもと思える。

邦題を決めた人のセンスに拍手
『孤独なふりした世界で』


ツインより7月3日リリース

(C) 2018MARKED LAWNS LLC.

【STORY】

人類が滅亡した世界で生き残ったデルは、町で死体を弔い空き家を整理しながら生活していた。もともとひとりが好きだった彼は、孤独な生活を謳歌していたが、そこにもうひとりの生存者である、風変りな少女が現れる。

 

【オススメCOMMENT】

人々が滅亡した世界でひとり、死体を弔いながら生きる男・デル。淡々と孤独な日々を過ごす彼の前に、突然グレースという少女が現れるが、彼女と出会ったことで孤独な彼がある種の「人間らしさ」を取り戻していく光景は観ていて心地よい。そしてまるで世界が色付いていくように、全体的に暗かった景色に光が差していくような映像描写にうっとりする中、徐々に明らかになる彼女の秘密とある真相。その真相と彼らの行きつく結末を観たら、この邦題に納得すること間違いなしです。

 

あながち虚構とも言い切れない話
『コントロール 洗脳殺人』


ハーク/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントより7月3日リリース

(C)2018 YAR PRODUCTIONS INC

【STORY】

ローレンは夫と共に、最新システムを完備した郊外の高層マンションに越して来るが、不思議な幻覚や幻聴に悩まされる。その原因を探る中でジャーナリストのバーノンと知り合った彼女は、ある謀略に巻き込まれたことを知る。

 

【オススメCOMMENT】

都市伝説化してしまった懐かしの「サブリミナル効果」が本作で復活。絵空事かと思いきや、実際にアメリカであった「MKウルトラ計画」をモチーフにしているからフィクションとも言い切れない。『バッファロー’66』の印象が強すぎて、本作のクリスティーナ・リッチの病んでる姿に戸惑い、ヒロインを助ける男を演じる、ジョン・キューザックの陰謀論に憑りつかれたヤベー奴感もアクセント。繰り出される洗脳映像の相当エグいところも気持ち悪く、とにかく不安感いっぱいにさせられます。

 

超保存版・女王の勇敢な生き様
『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』


KADOKAWAより7月5日リリース

(C) VWI FILMS LTD 2018. All rights reserved.

【STORY】

2016 年ロンドン・ファッション・ウィーク秋冬ショーの前夜に、大切なコレクションを確認するデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッド。彼女は自分の指示と違う服の作りを指摘し、「見るも無残」と辛辣な言葉を放つ。

 

【オススメCOMMENT】

ヴィヴィアンの服は好きだけど彼女のことよく知らない、を100%満たす超保存版ドキュメンタリー。最初の夫と離婚した後に花開いたデザイナー人生、若者に熱狂的な支持を得て生まれた“パンク” など、デザイナーとしての紆余曲折や、初めは嘲笑の的にあった苦しい時期などを赤裸々に振り返る。環境保護活動にも積極的で、服だけならず行動でも毎日衝撃を与えてくれる彼女はまさに勇敢な女王。生産性を重視する仲間に「量より質よ!」とお怒りになる姿も今の時代だからこそ余計格好よく映る。

 

■前回の誰シネ(6月リリースタイトル)はこちらから

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