五十嵐耕平監督「水魚之交」、サン・セバスティアン国際映画祭でプレミア上映
- ダミアン・マニヴェル , 五十嵐耕平 , 佐野弘樹 , 宮田佳典 , 水魚之交
- 2023年09月25日
「息を殺して」「泳ぎすぎた夜」の五十嵐耕平監督による新作短編「水魚之交」が、第71回サン・セバスティアン国際映画祭サバルテギ=タバカレラ部門でプレミア上映された。監督の舞台挨拶および観客とのQ&Aのオフィシャルレポートが到着した。
「水魚之交」は、海の見える古い観光ホテルを舞台に、幼なじみの佐野と宮田が過ごすひと時を描いた20分の作品。陰謀論に傾倒する宮田と、彼の考えを否定する佐野。口論が始まった時、認知症を患う宮田の父親から電話がかかってくる……。
サバルテギ=タバカレラ部門は、尺やジャンルにとらわれることなく、挑戦的な作品や新たな才能を発掘することで知られる。五十嵐監督作の選出は前作「泳ぎすぎた夜」に続いて2度目。
今回の同部門には、「泳ぎすぎた夜」で共同監督を務めたダミアン・マニヴェルの監督最新作「L'ÎLE(英題:THE ISLAND)」と、助監督を務めた平井敦士監督の短編「ゆ(英題:OYU)」も選出され、同プログラム内で一挙に上映された。
なお平井監督は「L'ÎLE」の助監督を、マニヴェル監督は「ゆ」と「水魚之交」のプロデューサーを、五十嵐監督は「ゆ」のプロデューサーを務めている。

上映前の舞台挨拶では、五十嵐監督、マニヴェル監督、平井監督、そして「L'ÎLE」のキャスト陣が登壇。五十嵐監督は「水魚之交」について、「ストーリーを考えていた時期がちょうどコロナ禍にあたり、その頃は、記憶や歴史に関して “私が正しいんだ” と陰謀論めいたことを言う人たちが出てきて混乱していた時期でした。ただ私としては、それよりも個人的な関係をどう築くかが大事だと思っていた。そういう話をやりたいと思ってできたのがこの映画です」と着想を語った。
また「俳優の佐野(弘樹)くんと宮田(佳典)くんから一緒に映画を作ってほしいと連絡があり、長編の企画を考えていたがそのうちにコロナになり世界が変わってしまった感じになってしまった。そこでまず短編を作ろうということになりました」と述べ、「水魚之交」の設定や世界観を下地にした長編映画を製作中であることも明かした。
上映後のQ&Aでは、編集の進め方を問われ、「今回撮影期間が短く限られたショットを撮るスタイルだったため、編集で大きく変えることはしませんでしたが、編集していくうちにだんだんとファンタスティックなものになっていきました。それは編集しながら見つけていったものだと思います」と回答。
ショットにいない人物の声が入るなど、特徴的な音の使い方については「僕が興味を持っているのは “映画には記憶がある” ということ。映画というのは、何かが映っていて、何かが記録されている装置だということがまず重要です。その上で、画面に映ってないもの、記録されてないかもしれないようなこと、それは忘れ去られたものかもしれないし、誰も見なかったものかもしれないけれど、その “何か” がいつしか画面の中に入ってくる、そういう映画を撮りたいと思っているからかもしれません」と説明した。
「水魚之交(英題:TWO OF US)」
出演:佐野弘樹、宮田佳典
監督・編集:五十嵐耕平
脚本:五十嵐耕平、久保寺晃一
企画:宮田佳典、佐野弘樹
プロデューサー:大木真琴、江本優作
共同プロデューサー:ダミアン・マニヴェル、マルタン・ベルティエ
撮影:髙橋航
録音:高橋玄
サウンドデザイン:野村みき
助監督:太田達成
2023年/日本=フランス/20分
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