映倫 次世代への映画推薦委員会推薦作品 — 映画『世界のはしっこ、ちいさな教室』—
- 映倫 , 世界のはしっこ、ちいさな教室 , 次世代への映画推薦委員会推薦作品 , 「キネマ旬報」2023年8月号
- 2023年07月21日
国の未来のために、教育に情熱を燃やす女性教師たち
学ぶことが好きだから険しい通学路を通う、世界の小学生たちの登校風景を描いた「世界の果ての通学路」(12)を作った製作チームが、今度は赴任するだけで一苦労の僻地で奮闘する世界の教師たちに目を向けた。
登場する3人の女性教師はキャリアや年齢は様々で、抱えている問題も違う。ブルキナファソは15歳以上の識字率が41.2%と世界最低ランク。新人のサンドリーヌは、そんな自分の国には教育が不可欠だと感じて教師になった。しかし最初の赴任地ティオガガラ村に行くと、そこには5つの言語があり、公用語のフランス語がほとんど通じない。様々な言葉を話す子どもたちとコミュニケーションを取るところから、彼女の教師生活は始まっていく。
自身も遊牧民のスヴェトラーナは、遊牧生活を送る同胞のために、自らキャンプ地を回る遊牧民教師を続けている。彼女はロシア連邦の義務教育の課程を教えながら、遊牧民の伝統や文化も子どもたちに継承していこうとカリキュラムに取り入れている。
バングラデシュでは、貧困が原因で女の子に持参金目当ての結婚をさせる、違法な〝児童婚?が後を絶たない。タスリマは女性の自立の大切さを生徒に説き、女の子たちが児童婚の犠牲にならず、教育を受けて社会に出られるように親たちを説得する。
それぞれの国が抱える問題を背負い、子どもたちの人生に寄り添う3人の女性教師。彼女たちによって、ある子どもは言葉を覚える喜びを知り、ある子どもは自分の進む道を見つける。そのとき見せる、子どもたちの明るい笑顔。そこに彼女たちは、国の未来を感じ取る。教育とは知識を与えて、人を育成すること。その根本的な意味を改めて感じさせる、感動的な好篇だ。
文=金澤誠 制作=キネマ旬報社
(「キネマ旬報」2023年8月号より転載)
「世界のはしっこ、ちいさな教室」
【あらすじ】
水道もガスもない村に赴任した、ブルキナファソの新任教師サンドリーヌ。シベリアの雪原をそりで移動しながら遊牧民のキャンプ地を回り、そこで暮らす子どもたちに教えるスヴェトラーナ。1年の半分は洪水で水没するバングラデシュ北部の農村で、ボートスクールの教師をしているタスリマ。女性教師3人の教育に対する情熱を描く。
【STAFF & CAST】
監督:エミリー・テロン
出演:サンドリーヌ・ゾンゴ/スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ/タスリマ・アクテル
ナレーション:カリン・ヴィアール
配給:アルバトロス・フィルム
フランス/2021年/83分/区分G
7月21日(金)より全国順次公開
© Winds - France 2 Cinéma - Daisy G. Nichols Productions LLC - Chapka - Vendôme Production