音楽家でアニメーション作家のピエール・フォルデスが、村上春樹の6つの短編『かえるくん、東京を救う』『バースデイ・ガール』『かいつぶり』『ねじまき鳥と火曜日の女たち』『UFOが釧路に降りる』『めくらやなぎと、眠る女』を翻案して制作した長編アニメーション映画「めくらやなぎと眠る女」が、2024年初夏にユーロスペースほかで全国順次公開。場面写真が到着した。

 

 

2011年、東日本大震災から5日後の東京。被害を伝えるテレビのニュースを見続けたキョウコは、手紙を残して夫・小村の前から姿を消す。呆然とした小村は、図らずも中身の知れない小箱を女性に届けるため、北海道へ向かうことに。
一方である晩、小村の同僚の片桐が帰宅すると、体長2メートルの〈かえるくん〉が待っていた。かえるくんは次の地震から東京を救うため、控えめで臆病な片桐に協力を求めるのだった。
めくらやなぎ、巨大なミミズ、謎の小箱、どこまでも続く暗い廊下──。大地震の余波は遠い記憶や夢に形を変え、小村、キョウコ、片桐に忍び込む。人生に行き詰まった彼らは、本来の自分を取り戻せるのか……。

 

 

監督が〈ライブ・アニメーション〉と名づける実写撮影をベースにした技法で、村上春樹の不思議で生々しい作品世界を映像化した「めくらやなぎと眠る女」。アヌシー国際アニメーション映画祭2022長篇部門審査員特別賞ならびに第1回新潟国際アニメーション映画祭コンペティション部門グランプリに輝いた。新潟で審査員を務めた押井守は「現代文学を表現する最適のスタイルなんじゃないかということで、3人の審査員の意見が一致した、唯一の作品」とコメントしている。独創的な映画世界に注目したい。

 

 

なおピエール・フォルデス監督は、10月28日(土)に早稲田大学国際会議場で行われる国際シンポジウム「世界とつながる日本文学~after murakami~」にパネリストとして、第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭では11月5日(日)の本作上映時ゲストとして、登壇が決まっている。

 

ピエール・フォルデス監督メッセージ
『めくらやなぎと眠る女』が日本で公開されると聞いて、とても幸せな気分です。この映画は、純粋なひらめきと野心の両方から生まれました──史上最も偉大で最もインスピレーションに溢れた作家の作品から得たひらめきと、アニメーションにおいてテクニックだけではなく語り方をも一新しようとした野心の産物なのです。この映画は、様々な物語とキャラクターを絡み合わせつつ、2011年の地震と津波という大きな出来事が、登場人物たちをいかに目覚めさせ、自分の人生を生きようと試みさせるのかを探っていきます。私が村上春樹の小説を読んでいるときに感じたような、そしてこの映画を作っているときに感じたような大きな刺激を、観客に感じてほしいと思っています。私にとってこの映画は、控えめに言っても近年作られた最も革新的な長編アニメーションなのです。この映画が、優れたアニメーションを生み出すことで知られた国で公開されることに興奮しています。私はこの映画の脚本を、新幹線の中でお弁当を食べながら書き終えたのですから、なおさらです!

 

「めくらやなぎと眠る女」

監督・脚本:ピエール・フォルデス 原作:村上春樹
声:ライアン・ボンマリート、ショシャーナ・ビルダー、マルセロ・アロヨ、スコット・ハンフリー、アーサー・ホールデン、ピエール・フォルデス
原題:Saules Aveugles, Femme Endormie 英語題:Blind Willow, Sleeping Woman
2022/109分/フランス、ルクセンブルク、カナダ、オランダ合作
配給:ユーロスペース、インターフィルム、ニューディアー
公式サイト:http://www.eurospace.co.jp/BWSW