謎多き《飯塚事件》をめぐり、真実と正義が交錯。「正義の行方」

 

1992年に福岡県飯塚市で2人の女児が殺害された《飯塚事件》に切り込み、令和4年度文化庁芸術祭・テレビドキュメンタリー部門大賞を受賞したBS1スペシャル『正義の行方〜飯塚事件 30年後の迷宮〜』(初回放送:2022年4月23日)が、「正義の行方」として映画化。4月27日(土)よりユーロスペースほかで全国順次公開される。メインビジュアルと特報予告編、各者コメントが到着した。

 

 

DNA鑑定などにより《飯塚事件》の犯人とされた久間三千年。2008年に死刑が執行されるが、冤罪を訴える再審請求が提起され、事件の余波は今なお続く。

本作では、弁護士、警察官、新聞記者という立場を異にする当事者たちが語る《真実》と《正義》を突き合わせ、事件を多面的に描きながら、この国の司法の姿を浮き彫りにしていく。

 

 

圧巻は、事件当初からの自社報道に疑問を持ち、検証を進める西日本新聞社のジャーナリストたち。その姿勢は、マスメディアが信頼を損ない、新聞やテレビなどの“オールドメディア”が翳りを見せる今日にあって、確かな希望となる。

ある記者は言う。「司法は信頼できる、任しておけば大丈夫だと思ってきたけど、そうではないと。このことこそ社会に知らせるべきだし、我々の使命だと思っています」

《飯塚事件》とは何だったのか? 観る者は自ら思考することを促され、深く暗い迷宮の中で、人が人を裁くことの重さと向き合うことになる。

 

 

森達也(映画監督/作家)推薦コメント
観ているあいだ、自分は今、とんでもない作品を観ているとの意識が、ずっと身体の内奥で駆動し続けていた。
ここ数年、いや間違いなくもっと長いスパンにおいて、これほどに完成度が高く、そして強く問題を提起するドキュメンタリーは他にない。

木寺一孝監督メッセージ
異例の早さで死刑執行された人物は真犯人だったのか。いったい何が真実で、何が正義なのか…。この作品がこだわったのは、弁護士・元警察官・新聞記者という事件の当事者それぞれが信じる〈真実〉と〈正義〉です。立場の異なる人たちの考えを多角的に構成し、三者がぶつかり合う様子をありのままに提示したいと考えました。是非、自分の眼で“真実”とは何かを探ってみてください。
 
東野真プロデューサーメッセージ
テレビ版をご覧いただいた方から「あの番組の登場人物、俳優が演じているわけじゃないですよね?」と聞かれることがある。もちろん冗談まじりだ。職業が顔を作るという言い方があるが、警察官、弁護士、新聞記者それぞれみな「いかにも」と思わせる風貌と語り口なのだ。彼らが自らのキャリアを賭けて語るそれぞれの「正義」にぜひ耳を傾けていただきたい。気がつくと飯塚事件のこと、そしてこの国の司法のことが頭から離れなくなるはずだ。

 

 

「正義の行方」

監督:木寺一孝 制作統括:東野真 撮影:澤中淳 音声:卜部忠 照明:柳守彦
音響効果:細見浩三 編集:渡辺政男 制作協力:北條誠人(ユーロスペース)
プロデューサー:岩下宏之 特別協力:西日本新聞社 協力:NHKエンタープライズ
テレビ版制作・著作:NHK 制作:ビジュアルオフィス・善 製作・配給:東風
2024年/158分/DCP/日本
©NHK
公式サイト:https://seiginoyukue.com/