ホラー映画が虚実の境界を溶かす「映画検閲」、特別動画と著名人コメント公開

 

とあるホラー映画に登場した女優は、失踪した妹にそっくりだった──。虚構と現実の狭間に引きずり込まれていく映画検閲官の運命を描いたサイコスリラー「映画検閲」が、9月6日(金)より新宿シネマカリテほか全国で公開。プラノ・ベイリー=ボンド監督のインタビューやメイキングを盛り込んだ特別動画、ならびに著名人のコメントが到着した。

 

 

第37回サンダンス映画祭ミッドナイト部門、第71回ベルリン国際映画祭パノラマ部門、第54回シッチェス・カタロニア国際映画祭コンペティション部門などに出品され、話題を呼んだ本作。これが初長編となったプラノ・ベイリー=ボンド監督は「いま見るべき10人の監督」(Variety)に選ばれた。

80年代ホラーの美学に彩られた幻想的恐怖譚を楽しみたい。

 

 

〈コメント〉

とても気に入った! 緻密で心をかき乱す、このジャンルをイギリス特有のセンスで甦らせた素晴らしいデビュー作だ。
──ギレルモ・デル・トロ(映画監督)※SNSコメントより

『映画検閲』は映画に取り憑かれた者が、いかに現実と虚構のあわいに生きているかを寓話的に描く。映画検閲官の主人公同様に、現代に生きるわたしたちもまた映像が本質的に孕む残虐性と暴力に直面している。
──児玉美月(映画批評家)

眼球えぐりや絶叫シーンも含め、ビジュアルが美しく、独創的で、潜在意識にこびりつく映画。見た後の余韻が凄まじく、後から考察したくなる系だ。政治、メディア、道徳的問題などさまざまな要素が絡み合い、社会病理とも言える過剰なコンプラ問題にも触れている。見応えある作品だ。
──角由紀子(TOCANA)

映画の残酷描写を切り取る主人公。それと同じように封じ込めようとした暗い腹の内が次第に溢れ出し、現実と虚構の境目を溶かしていく。鮮烈な色使いが狂気を増幅させる。彼女は一体、映画以外の何を検閲していたのか。考えるだけでも恐ろしい
──人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー)

行き過ぎた検閲は抑圧を産むだけなのではないか。これはそんな一抹の不安を予感させる、多層的なサイコロジカルホラーだ。虚実が倒錯するだけでなく、そのもっと奥に一番の恐怖が潜んでいる。イーニッドが自身の抑圧と向き合う時、観る者は脳裏に焼きつくラストシーンに出会うことになるだろう。
──野水伊織(映画感想屋声優)

ホラームービーの中の美しい鮮血はまがい物で、悲鳴をあげる血まみれの美女も演技だと、一抹の孤独とともに我々は知っている。その冷徹さは本作の映画内現実にすら浸透している。そんな冷めた世界でいまだ虚実の妄想に囚われる者は、あまりに侘しいけれど、映画を呼び覚ます血にまみれた孤軍奮闘が輝かしいのだ。
──真魚八重子(映画評論家)

残酷映画への愛から生まれたであろうこの作品は、残酷映画を「有害ではない」と擁護するどころか、むしろその抗い難い危うい魅力を強調しているかのよう。あのおぞましいラストを何度でも観たくなっている自分が怖い!
──レイナス(「ホラー通信」記者)

 

Story
サッチャー政権下の1980年代イギリス。暴力や性を売りにした過激な映画《ビデオ・ナスティ》を検閲するイーニッドは、その厳格さから“リトル・ミス・パーフェクト”と呼ばれていた。
ホラー映画をチェックしていたある日、イーニッドは出演者の一人が、幼い頃に失踪した妹のニーナに似ていることに気づく。そして真相の解明に突き進むが、虚実の狭間に引き込まれて自制を失い……。

 

「映画検閲」

監督:プラノ・ベイリー=ボンド
脚本:プラノ・ベイリー=ボンド、アンソニー・フレッチャー
出演:ニアフ・アルガー、ニコラス・バーンズ、ヴィンセント・フランクリン、マイケル・スマイリー
2021年/イギリス/英語/84分/カラー/1:2.39/5.1ch/R15+
原題:CENSOR 字幕翻訳:小河恵理 配給:オソレゾーン
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