性的マイノリティの実話を、飯塚花笑監督が映画化「ブルーボーイ事件」
「僕らの未来」「フタリノセカイ」「世界は僕らに気づかない」の飯塚花笑監督が、高度経済成長期に起きた性的マイノリティをめぐる実話を映画化した「ブルーボーイ事件」が、今秋に公開される。ティザービジュアルと特報映像が到着した。
オリンピック景気に沸く1965年の東京。街の浄化を目指してセックスワーカーを取り締まる警察は、性別適合手術(当時の呼称は性転換手術)を受けた“ブルーボーイ”たちの存在に頭を悩ませていた。戸籍上は男性のまま売春する彼女たちは、現行の売春防止法では摘発できない。そこで手術に着目し、それが生殖を不能にするため優生保護法(*現在は母体保護法に改正)に反するとして、施術していた医師の赤城を逮捕して裁判にかける。
その頃、東京の喫茶店でウェイトレスとして働くサチは、恋人の若村にプロポーズされ、幸せを噛み締めていた。そんな中、赤城を担当することになった弁護士の狩野がサチの前に現れ、証人として出廷してほしいと要請する。サチは赤城の手術を受けたひとりだった──。
トランスジェンダー女性を集めたオーディションでサチ役に抜擢されたのは、ドキュメンタリー映画「女になる」で被写体となった中川未悠。またサチのかつての同僚たちにドラァグクイーンのイズミ・セクシー、シンガーソングライターで俳優の中村中が扮し、狩野役で錦戸亮も出演する。プロデューサーは『深夜食堂』「アヒルと鴨のコインロッカー」「岸辺の旅」「月の満ち欠け」の遠藤日登思が務め、撮影は名手・芦澤明子が担当。誇りをかけて司法および世間と闘う者たちの運命を見届けたい。
〈コメント〉
監督:飯塚花笑
「ハタチ過ぎたら誰もがみんな自殺だわね・・・」これは「ブルーボーイ事件」の映画化にあたり、資料の山に埋もれていたときに出会った1950年代のゲイバー(当時はゲイバーと表現されていたお店で)に出入りしていた、一人の名もなき性的マイノリティの言葉です。嫌に昭和的な口調と、ルポ本に添えられたスナップ写真がこの言葉に重みを付け加え、今もずっと私の胸の中に居座っているように感じます。この映画でトランスジェンダー当事者の俳優を主演に起用し、オリジナル作品として取り組むことを心に決め、走り始めてから6年余り。映画が完成した今思うのは、ずっとこの日本の社会の中に存在していたのに、無かったことにされて来た声たちが私を突き動かしていたのだということです。「ずーっとここにいたんだよ・・・」この映画が広く・そして深く皆様の心へ届きますように。この物語は私たちの物語であり、“貴方”たちの物語です。
主演:中川未悠
サチ役を演じさせていただきました、中川未悠です。初めてのお芝居、初めての映画出演、初めてお会いする人たちばかり。全てが私にとって初めてで、不安が大きかったですがキャストの皆さん、スタッフの皆さんに優しく接していただいたので凄く楽しい現場でした。サチを演じさせていただくからには、一人でも多くの人に希望をもって生きてもらいたい!と思いながらお芝居に取り組みました。ブルーボーイ事件は事実に基づいたお話しなので、より身近に感じていただきやすいストーリーになっています。登場人物一人一人の想いがたくさん詰まった、愛のある作品です!まだまだ差別や偏見はありますが、私はこの作品を通じて誰もが幸せになる権利があることを伝えたいです。私は今回サチに出会い、サチの言葉に勇気をもらえました。観て下さる方々も勇気や希望をもらえると思います。是非、映画館でご覧ください。
プロデューサー:遠藤日登思
「オリジナル脚本で映画を作ろう」という呼びかけに集まった企画の中に「ブルーボーイ事件」がありました。約6年前のことです。当時、私はこの事件のことを知りませんでした。企画書や資料を読み、日本の性別適合手術の歴史を知っていく中で、50年以上前、確実に存在し証言台に立った3人のトランスジェンダーのことを想像しました。そして、飯塚監督が当事者の一人として感じてきたこと、当事者の役は当事者に演じて欲しいという強い思いを聞き「映画にしなくては」と思いました。とはいえ、当事者の方のキャスティングを実現させるのは簡単なことではなく手探りのオーディションを進めました。同業者からは「難しいことをしてるねぇ」と言われたこともしばしば。途中コロナ禍で挫折しかけた時も並走してくれたプロデューサー陣、脚本チーム、そしてオーディションに集まっていただいたトランスジェンダーの皆さんにあらためて感謝します。感想は人それぞれでも、観ていただければ必ず熱の伝わる映画が完成したと思います。
「ブルーボーイ事件」
監督:飯塚花笑
出演:中川未悠、前原滉、中村中、イズミ・セクシー、渋川清彦、山中崇、安井順平、錦戸亮
脚本:三浦毎生、加藤結子、飯塚花笑 音楽:池永正二
製作:アミューズクリエイティブスタジオ、KDDI、日活
制作:アミューズクリエイティブスタジオ、オフィス・シロウズ
配給:日活/KDDI
©2025 『ブルーボーイ事件』 製作委員会
公式サイト:blueboy-movie.jp