今年2021年に、日活ロマンポルノは生誕50年の節目の年をむかえます。それを記念して、ロマンポルノの魅力を様々な角度から掘り下げる定期連載記事を、キネマ旬報WEBとロマンポルノ公式サイトにて同時配信いたします。
衛生劇場の協力の下、みうらじゅんがロマンポルノ作品を毎回テーマごとに紹介する番組「グレイト余生映画ショーin日活ロマンポルノ」の過去の貴重なアーカイブから、公式書き起こしをお届けしたします。(隔週更新予定)
2012年1月放送、第5回のテーマは「夫人」
どうも、みうらじゅんと申します。「グレイト余生映画ショーin日活ロマンポルノ」。第4回目のテーマは「夫人」でございます。昭和の日本にはさまざまなタイプの夫人がおられ、それで僕たちは随分いい夢を見させてもらったということでございます。それが日活ロマンポルノの人妻シリーズということになんですが、夫人がいかにして淫乱になられたか、それを確かめる4本を今回、御用意しました。
今回お送りするテーマは、艶美な性の伝道師「夫人」。酸いも甘いも知り尽くす、究極のエロセレブを大特集!!熟れた肢体が躍動する昼下がりの、禁断の淫情遊戯に迫る!!ラブそれは危険な誘惑。。。
「夫人」と聞いて、すぐに連想するのは『エマニエル夫人』(1974年 フランス作品)ですよね。シルヴィア・クリステル主演のこの映画が世界に夫人ブームを巻き起こしました。当時は、「女性も見られるポルノ映画」といった打ち出し方だったと思うんですけども、シルヴィア・クリステルっていうモデル出身の人が出演って言う事もあってとてもオシャレな映像で、女性のお客さんからも絶賛を得ました。その影響を受けて、日本も続々とオシャレでいやらしい夫人が増えたんですね。
今回、御覧頂く夫人は、
『鎌倉夫人 童貞倶楽部』
『東京エマニエル夫人』
『山の手夫人 性愛の日々』
『軽井沢夫人』
の4方でございます。
夫人ブームを巻き起こした『エマニエル夫人』から、話をさせて頂きたいと思いますが、『エマニエル夫人』と言えば、当然思い出すのは、口元に手をやって、おっぱい出して、足を組んでいらっしゃるあのポスターが有名ですね。僕は小学生の時から仏像が大好きだったもので、中学生になって『エマニエル夫人』のこのポスターを見た時には、すぐにそれが弥勒菩薩の半跏思惟だっていうことは分かりました。
半跏というのは、足を組むことです。思惟というのは、物思いにふける仕草。口元にちょっと手を当てて衆生をいかにして救おうかと考えておられるポーズです。そして、エマニエル夫人の座っている籐家具の椅子。背後の部分がちょうど仏像でいう光背にあたるというわけです。当然、この発見は当時、クラスメイトにしましたが、誰も「そんな話はもういい」と聞いてくれませんでした(笑)。
エマニエル夫人は、きっと旦那様と各国を旅し、日本にも来たのでしょう。京都の広隆寺も訪れたのは言うまでもありません。そこで弥勒菩薩を拝観し、このポーズを思いついたと推測します。
■今月の厳選夫人作品
今月の四夫人の出身地の分布図を見て頂きましょう。
『鎌倉夫人 童貞倶楽部』。鎌倉はここですね。でも劇中で夫人は鎌倉大仏のポーズは取りませんよ(笑)。宮下順子さんが演じておられます。
そして『東京エマニエル夫人』は、田口久美さん演じられるフランスから東京にやって来られたという設定の夫人。シルヴィア・クリステルの『エマニエル夫人』は機内でのシーンが話題になりましたが、『東京エマニエル夫人』は飛行機ならぬ、箱根のロープウェイ。ロープウェイのドアが開いているという、もう香港並みのアクション・セックスが展開さます。
『山の手夫人 性愛の日々』は、この辺ですかね。志麻いづみさん主演、団鬼六さん原作のSMシリーズにもたくさん出られてるお方です。
『軽井沢夫人』は高田美和さんが主演です。高田さんといえば、思い出すのは『大魔神』(1966年 大映作品)。彼女の涙で大魔神の怒りが収まるんです。小学生の頃に観たんですが、後に『軽井沢夫人』に成られるとは。ちょっと驚きでしたね。本作で、共演されてる土屋嘉男さんも怪獣、怪人映画にたくさん出られた方。『ガス人間第一号』(1960年 東宝作品)は是非、この機会に御覧になって下さい。
他に、「かまきり夫人」(『五月みどりのかまきり夫人の告白』(1975年 東映作品)なんてものもおられましたし、田口久美さん主演で『東京ディープスロート夫人』(1975年 東映作品)というのもありました。当然『ディープスロート』(1972年 アメリカ映画)の東京版ですね。
70年代から80年代頭まで、たくさん男を悩ます夫人がおられたということで今回は、その4本、じっくりご鑑賞下さいませ。
『鎌倉夫人 童貞倶楽部』
『東京エマニエル夫人』
『山の手夫人 性愛の日々』
『軽井沢夫人』
※各作品はFANZAをはじめする動画配信サービスにて配信中です
次回は、かつて「アイドル」だった方が日活ロマンポルノ!?をお送りする予定です。楽しみに待っていてくださいね。それではみなさんもグレイト余生を!
衛星劇場「グレイト余生映画ショーin日活ロマンポルノ」
■クレジット
出演・構成 みうらじゅん
プロデューサー 今井亮一
ディレクター 本多克幸
製作協力 みうらじゅん事務所・日活
■2021年1月 放送予定
【衛星劇場】(スカパー!219ch以外でご視聴の方)
・『快楽温泉郷 女体風呂』(HD初放送)
・『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』
・『東京エロス千夜一夜』
・『女教師のめざめ』
【衛星劇場】(スカパー!219chでご視聴の方)
・『快楽温泉郷 女体風呂』(R-15版)
・『ベッド・パートナー』(R-15版)
・『愛獣 赤い唇』(R-15版)
あわせて、衛星劇場では、サブカルの帝王みうらじゅんが、お勧めのロマンポルノ作品を紹介するオリジナル番組「みうらじゅんのグレ イト余生映画ショー in 日活ロマンポルノ♯92」を放送!
※人気コーナー「みうらじゅんのグレイト余性相談室」では、皆様から性のお悩みや、疑問を大募集!
【日活ロマンポルノ】
日活ロマンポルノとは、1971~88年に日活により製作・配給された成人映画で17年間の間に約1,100本もの作品が公開された。一定のルールさえ守れば比較的自由に映画を作ることができたため、クリエイターたちは限られた製作費の中で新しい映画作りを模索。あらゆる知恵と技術で「性」に立ち向い、「女性」を美しく描くことを極めていった。そして、成人映画という枠組みを超え、キネマ旬報ベスト・テンをはじめとする映画賞に選出される作品も多く生み出されていった。
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