まともじゃなくても大丈夫! 窮屈な現代社会を笑い飛ばすラブコメディ
まともじゃなくても大丈夫! 窮屈な現代社会を笑い飛ばすラブコメディ
まとも、普通、平凡……。多くの人と違っていることが批判されたり叩かれたり、変だと言われてしまうことも多い現代社会。時にはそれが炎上なんてことにもなってしまう。他人の目を気にして“まとも”でありたい、“普通”でいたいと思う一方、“平凡”でなく非凡で、個性的でありたいとも思う。でも変わっているとは思われたくはない……。そんな誰もが抱える複雑な思いや現代社会の窮屈さを笑いとばして心を軽くするような映画「まともじゃないのは君も一緒」のBlu-rayとDVDが9月3日にリリースされる。
噛み合わない会話の応酬が生む独自の面白さ
主人公は、恋愛経験0の二人。外見は良いが数学一筋で生きてきた社交性もコミュニケーション能力も皆無に等しい予備校教師・大野(成田凌)と、彼の生徒で恋愛上級者だと思い込んでいるちょっと意識高い系の女子高生・香住(清原果耶)。“普通”の恋愛に憧れる大野は、香住から恋愛指導を受けることになり、先生と生徒の立場が逆転。香住はこれを利用し、憧れの存在の青年実業家・宮本(小泉孝太郎)とその婚約者・美奈子(泉里香)を破局させようと思いつく。香住の指示で大野は、高嶺の花の美奈子にアプローチを開始するが、意外にも大野は急成長を見せ、二人はいい雰囲気に。そんな大野に複雑な思いを抱くようになった香住は、初めての不思議な感情に悩み始める……。
全編で大野と香住は膨大な言葉を交わし合うが、“普通”じゃない二人はどうにも噛み合わない。もちろん劇中の二人は大真面目なのだが、傍から見るとおかしくて仕方ない。その噛み合わない会話の応酬は、ボケとツッコミのようにも見え、ズレ漫才のような面白さもある。また、二人は歩きながら喋りあうことも多く、それが小気味よい独自のリズムを醸し出す。長回しのカットも多く、通常の映画の半分くらいのシーン数しかない会話劇中心の物語だが、全編98分がノンストップでテンポ良く進み、全く飽きさせない。
絶妙な成田凌×清原果耶のキャスティング
主人公の大野と香住を演じたのは、成田凌と清原果耶。成田は2014年の俳優デビュー後、多数の映画やドラマに出演し、第74回毎日映画コンクール男優主演賞、第93回キネマ旬報ベスト・テンや第44回報知映画賞や第43回ブルーリボン賞の各助演男優賞など、既に様々な映画賞を獲得。そして清原は2015年の女優デビュー後、16歳の時に主演したドラマ『透明なゆりかご』(18)で東京ドラマアウォード2019主演女優賞を受賞したほか、現在放送中のNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で主演を務めている。そんな人気若手俳優たちの中でも特に芝居の上手さに秀でた二人が、噛み合わない会話の台詞を絶妙な間で掛け合い、自然な若い男女のコミカルなやりとりに見せている。二人ともに膨大な台詞を覚えるのは大変だったらしいが、芝居をしている感じがしないほど楽しかったとも映像特典のメイキングで語っており、それは本編からも伝わってくる。
大野は変わり者ではあるが、それがあからさまに見えすぎてもいけない。実際に居たら付き合いづらそうな人間だが、その不器用さが理解できれば可愛げがある。笑い方は特徴的だが、話してみなければ地味なイケメンにも見える。そんな一見捉えどころのない人物を成田ならではの柔らかな存在感で、見事に表現。そして、論理的に思考する慎重派で、基本的には穏やかな大野に対して、香住は感情の起伏が激しい直感型の猪突猛進タイプ。肝が据わっているため、年齢よりも大人びて見えることもあるが、思春期の女の子らしい複雑さがあって、一人で空回りする姿は可愛らしい。そんな女性を時に堂々と時に不安げに演じ、嫌味のない等身大の女の子として表現できているのは、清原ならでは。二人のキャスティングは最初にオファーした希望通りの組みあわせだったそうだが、今回の二人でなければ、作品のテイストも変わっていたことだろう。
他にも、香住が憧れる青年実業家役の小泉孝太郎、その婚約者役の泉里香、香住の同級生のカップル役の山谷花純と倉悠貴らの共演者たちも好演。特に小泉は、自らの好感度の高さや好青年のパブリックイメージを逆手にとった役を演じているのが面白い。なお、その小泉は、講演会のシーンで観客役のエキストラを和ませたり待ち時間を飽きさせないために、自ら率先して前説のようなことを行っていた様子が、映像特典のメイキングに収められている。他にも映像特典には、キャストやスタッフのコメント、撮影現場の裏話などが収められており、本作の絶妙な掛け合いの芝居がどのようにして作り上げられたのかなどを知ることができる。
“普通”って何だろう?
本作は、前田弘二監督、高田亮脚本によるオリジナルストーリー。二人はこれまでも「婚前特急」(11)「わたしのハワイの歩き方」(14)などで組んできた名コンビ。二人の男女が噛み合わない会話を続ける中で関係性が変化し、それが魅力的な物語としてテンポよく展開していく、初々しい不器用な男女の爽やかなラブコメディを見事に作り上げている。
さらに、本作の大きなテーマとなっているのが“普通”とは何かということ。大野は“普通”であろうと努力するが、彼の恋愛指導を行う香住も実は“普通”ではない。時にネガティブ、時にポジティブに使われる“普通”という曖昧な定義の言葉を、本作は台詞として54回登場させており、主人公の二人は何が“普通”なのかをお互いに問いかけ合う。冒頭でも述べたように、平凡すぎるのは嫌だが、変わり者とも呼ばれたくない。他人と同じなのはつまらないと思う一方、他人と違うと不安になる現代社会。何が“普通”かも、結局は自分で決めていることが多いのに、その“普通”に縛られることには意味がないのではないだろうか。普通でも変でも何でもいいじゃないかというポジティブなメッセージをコミカルに伝えてくれる本作は、現代社会に閉塞感や生きづらさを感じている人には特に響くはず。主人公の二人のテンポのよい掛け合いを笑っているうちに心が軽くなる、“普通”だけどまともじゃないラブコメディだ。
文=天本伸一郎 制作=キネマ旬報社
「まともじゃないのは君も一緒」
●9月3日(金)Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタル同日リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●Blu-ray:6,380円(税込) DVD:5,280円(税込)
●特典(Blu-ray、DVD共通)
【仕様・封入特典】
・アウタースリーブケース
・ブックレット(16P)
【映像特典】※特典ディスクはDVDとなります
・メイキング
・イベント映像集(完成報告イベント、公開記念舞台挨拶、配信トークイベント)
・予告集
●2020年/日本/本編98分
●監督:前田弘二 出演:成田凌、清原果耶、山谷花純、倉悠貴、大谷麻衣、泉里香、小泉孝太郎
●発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2020「まともじゃないのは君も一緒」製作委員会