実は異なるエンディングも存在した!? 菅田将暉×Fukase「キャラクター」の秘話

実は異なるエンディングも存在した!? 菅田将暉×Fukase「キャラクター」の秘話

どんな作品でも登場人物のキャラクター、その個性が大事なのは当然だが、漫画は特にキャラクターの魅力が重用だと言われる。そんな魅力的なキャラクターを書けずに悩んでいた売れない漫画家が、実際の殺人現場とその犯人を目撃したことで、リアリティのある魅力的な悪役キャラクターを描けるようになるも、禁断の領域に踏み込んで恐怖の連鎖に巻き込まれていく、オリジナル脚本のサスペンス映画「キャラクター」のDVD&ブルーレイが、11月24日にリリースされる。

殺人鬼を目撃したことで創作意欲を刺激された漫画家

物語の主人公は、高い画力で新人賞などの入選経験はあるが、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた売れない漫画家・山城圭吾(菅田将暉)。ある日、リアリティのある背景美術を書くために、住宅街へスケッチに出かけた山城は、「誰が見ても幸せそうな家」という師匠からの依頼にぴったりの一軒家を見つける。そして、ふとしたことからその家の中にまで足を踏み入れてしまい、惨殺された4人家族と彼らの前に佇む一人の男を目撃。事件の第一発見者となった山城は警察の取り調べを受けることになるが、「犯人の顔は見ていない」と嘘をついてしまっただけでなく、自分だけが知っているその犯人を基に、殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出して、サスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き始める。

そうして本物の“悪”を描くという、究極のリアルな悪役キャラクターを手にした山城の漫画は、異例の大ヒット。売れっ子漫画家となった山城は、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚して順風満帆の生活を手に入れる。しかし、実はその頃、漫画『34』の劇中の事件を模倣したような事件が相次ぎ、その類似に気付いた刑事の清田俊介(小栗旬)は、上司の真壁孝太(中村獅童)と共に、山城に目をつける。そんな中、山城の前にダガーの基になった殺人犯・両角(Fukase)が突然姿を現し、「先生が描いたもの、リアルに再現しておきましたから」と告げてくる……。

漫画界と映画界の才能がこだわりぬいて作り上げたエンタメ作品

リアルな殺人鬼を目撃したことが創作者に刺激を与え、それを基に漫画を描いてしまったことから、今度はその殺人鬼が漫画内の創作で非現実だったはずの連続殺人事件を再現し始めてしまう。個性がなくて苦しんでいた芸術家が悪魔と出会ったことで求めていた個性を得るも、それには相応の代償があったという皮肉。この起点となる物語のアイデアだけでも惹きつけられるが、本作はこのワンアイデアだけに頼りきった作品ではなく、予想のつかない驚きの物語が次々と展開。全編126分飽きさせないノンストップの興奮に包まれる上質なエンタテインメント作品となっている。

10 年の歳月をかけて、練りに練り上げられたこの原案と共同脚本を務めたのは、『20 世紀少年』『MASTERキートン』を始め、浦沢直樹作品を数多く手掛けてきたストーリー共同制作者・長崎尚志。「帝一の國」(17)「恋は雨上がりのように」(18)などの永井聡監督も脚本に参加し、漫画界と映画界の異なる分野の才能が融合。漫画のような豊かな発想力が映画としての起承転結の物語に昇華され、巧みな構成のサスペンスに仕上がっている。

豪華俳優陣の好演も見逃せない。菅田将暉は主人公の漫画家役をリアルに演じ、その妻役の高畑充希は包容力ある芝居で刺激的な作品の中の安らぎともなっている。また、小栗旬と中村獅童は、事件を追う二人の刑事役で、それぞれに個性の違いを見事に表現。出されたものはすべて平らげるという義理堅さを窺わせる芝居も印象的な小栗が演じた刑事は、人間臭さが渋みを醸し出して特に魅力的だ。そして、主要キャストに上手い俳優ばかりが揃う中、殺人鬼役の大役を任されたのは、人気バンド“SEKAI NO OWARI”でボーカルを務める演技初挑戦のFukase。意外性のあるキャスティングだが、これが大ハマリ。準備には1年以上を費やしたそうで、唯一無二の独自の存在感を発揮してみせている。また、「もののけ姫」のアシタカ役の声優などでも知られるベテラン俳優の松田洋治にも、キャスト名をみるまでわからないほど強烈な役を演じていて驚かされる。

ショッキングな別エンディングも収録した特典映像

11月24日に発売される特装版は特典も充実。2種類のオーディオコメンタリーでは、詳細に様々なシーンの解説がされているほか、特典ディスクにはメイキング、インタビュー、初日舞台挨拶ほか3つのイベント映像などを収録。菅田、Fukase、小栗ら主要キャストやスタッフたちが、作品に込めた思いや、ダークな物語に反して和やかだった撮影現場の様子などを明かしている。

さらには、劇中で使われたFukaseの巨大油絵制作映像や15の未公開シーン集も収録。中村獅童がイベントで語っている削除シーンのほか、異なる3つのエンディングも見ることができる。本作の結末は実は数パターン撮影されており、最終的に採用されたのが完成品となったもの。余韻の残る完成品の結末の選択は正しかったと思うが、かなりショッキングな結末も試行錯誤されていたことがわかる。隅々までこだわり抜いて作られた作品であることが特典からも垣間見られて興味深い。また、劇中の漫画『34』の最終話ほか、ここだけでしか見られないコンテンツが満載の特製ビジュアル・ブックレットも封入されており、特装版は貴重なコレクターズアイテムともなっている。

文=天本伸一郎/制作=キネマ旬報社

「キャラクター」

●11月24日(水)Blu-ray&DVDリリース(同日レンタル開始)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●特装版(Blu-ray&DVD)4枚組 8,580円(税込)  
<特装版特典内容>
【本編ディスク(Blu-ray&DVD)】
・特報 特報 ロング バージョン 予告 T V CM 3 バージョン
・オーディオ コメンタリー ① (永井 聡監督
・オーディオ コメンタリー ②(原案・脚本 長崎尚志×村瀬健プロデューサー)
・Twitter コミック「マンガ家は見た!」
※こちらの映像はBlu-rayのみに収録。
【特典ディスク①(DVD)】
・メイキング~知られざる舞台裏 映画『キャラクター』のすべて
・15 の未公開シーン集
・Fukase による巨大油絵制作映像
【特典ディスク②(DVD)】
・公開記念「キャ ラクター密着 SP 特番」
・インタ ビュー 集
(菅田将暉 Fukase(SEKAI NO OWARI) 高畑充希 中村獅童 小栗旬 永井聡監督 原案・脚本 長崎尚志)
・イベント映像集(完成報告会/初日舞台挨拶/公開記念舞台挨拶)
【封入特典】
・特製ビジュアル・ブックレット(60P)
劇中の漫画「34」の最終話ほか、ここだけのコンテンツ満載

●DVD 通常版 4,180円 (税込)
<通常版特典内容>
・特報/特報ロングバージョン/予告/TVCM3バージョン
・WEBプロモーション映像集

●2021年/日本/本編126分
●原案:長崎尚志 監督:永井 聡 脚本:長崎 尚志、川原杏奈、永井 聡
●出演:菅田将暉、Fukase(SEKAI NO OWARI)、高畑充希、中村獅童、小栗 旬
●発売元:フジテレビジョン 販売元:東宝
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