オール韓国ロケ!池松壮亮、オダギリジョーが繰り広げる兄弟の絶妙な掛け合い
「川の底からこんにちは」(10)で商業映画デビューを果たして以降、コンスタントに作品を発表し続けている石井裕也監督。映画界が苦しいなかでも昨年は2本を無事に世に送り出した。コロナ禍による衝動で生まれた「茜色に焼かれる」(Blu-ray&DVDリリース中)、そしてもう1本は3年という時間をかけ、自身初となるオール韓国ロケに挑んだ意欲作「アジアの天使」(2月2日Blu-ray&DVDリリース)。言葉が通じないからこそ自分の本質をむき出しにできたというだけに、石井監督のキャリアを語るうえでも、大きな意味を持つ作品と言えるだろう。
石井作品には欠かせない存在の池松壮亮
病気で妻を亡くした小説家の青木剛は、「韓国で仕事がある」と話す兄を頼りに、8歳のひとり息子を連れてソウルへと降り立った。ところが、当てにしていた仕事はなく、代わりに韓国コスメの怪しげな輸入販売を持ちかけられてしまう。そんななか、全財産を失った兄弟が〝最後の切り札〟を手にするため向かったのは、海沿いの江陵。その旅の途中で、韓国人の兄妹3人と運命的な出会いを果たし、思いがけず行動を共にすることに……。
今回、主人公の剛に指名されたのは、石井作品には欠かせない存在となりつつある池松壮亮。「俺のアバターを担ってもらった」と話しているほど、監督が全幅の信頼を寄せているのがわかる。池松はその思いを見事に体現してみせたが、それを支えていたのは、兄役のオダギリジョー。本作のプロモーションで2人に取材を行った際、オダギリは「池松くんだからやれた」と言い、池松は「兄貴がオダギリさんじゃなかったらという疑問すら出てこない」と話した。そんな2人が繰り広げる兄弟の絶妙な掛け合いは見逃せない。
「今までで一番幸せな現場だった」
さらに、今回注目したいのは、「金子文子と朴烈」(17)で高く評価された女優チェ・ヒソをはじめとする韓国人キャストの面々。良好とは言えない日韓関係のなかで本作に出演することにリスクもあったと思うが、メイキング映像のなかで、「演技ではなく、本当に家族になっていく感覚があった」「今までで一番幸せな現場だった」と話し、涙と笑顔を浮かべる姿には思わず胸が熱くなる。
言葉を超えた相互理解は本作のテーマでもあるが、実際に現場でできていたからこそ、そのリアルさがスクリーンにも映し出されていたのだろう。圧倒的な余韻を残すラストシーンでも、もはや言葉にならない絆を垣間見ることができる。厳しい社会情勢のなかでも、この映画からは希望と愛を感じずにはいられない。
文=志村昌美 制作=キネマ旬報社
「アジアの天使」
●2月2日(水)Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタル同日リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●Blu-ray:5,280円(税込) DVD:4,290円(税込)
●特典(Blu-ray、DVD共通)
【映像特典】
・オリジナル劇場予告編3種
・メイキング
●2021年/日本/本編約128分
●監督・脚本:石井裕也 出演:池松壮亮、チェ・ヒソ、オダギリジョー、キム・ミンジェ、キム・イェウン、佐藤凌
●発売元:朝日新聞社、RIKIプロジェクト 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2021 The Asian Angel Film Partners
石井裕也監督作「茜色に焼かれる」もリリース中!
「茜色に焼かれる」
●1月7日(金)Blu-ray&DVDリリース(DVDレンタル同日リリース)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら
●Blu-ray:5,280円(税込) DVD:4,290円(税込)
●特典(Blu-ray、DVD共通)
【映像特典】
・オリジナル劇場予告編
●2021年/日本/本編約144分
●監督・脚本・編集:石井裕也 出演:尾野真千子、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏
●発売元:朝日新聞社、RIKIプロジェクト 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ