意外にも映画初主演!? マルチな才能のムロツヨシが「マイ・ダディ」で挑んだ究極の親子愛

意外にも映画初主演!? マルチな才能のムロツヨシが「マイ・ダディ」で挑んだ究極の親子愛

テレビのコント番組などで見せるコミカルな一面とは一転、難病の娘を救うべく必死で奔走する父親役を体当たりで演じている。ムロツヨシの初主演映画「マイ・ダディ」(金井純一監督)は、こんな時代だからこそ大切にしたい親子の情がぎゅっと詰まった心温まる作品だ。「いろんな愛の形を提示してくれる映画だと思う」とムロツヨシ自身が語る特典映像もついたブルーレイ&DVDが、3月9日(水)にリリースされる。

難病の娘のために決死の覚悟で駆けずり回るお父さん

ムロツヨシが演じる主人公は、教会の牧師をしながらガソリンスタンドでアルバイトをしている御堂一男。8年前に最愛の妻、江津子(奈緒)を亡くし、中学生になった娘のひかり(中田乃愛)と2人、つましくも穏やかな毎日を送っている。思春期を迎えたひかりは時折、反抗的な態度を取ることもあるが、面白くて優しいお父さんが大好きだった。

そんなある日、ひかりが貧血のような症状で倒れ、病院に運ばれる。医師から告げられた病名は白血病だった。不安に押しつぶされそうになる愛娘を、持ち前のユーモアで懸命に励ます一男。いったんは治ったかに見えたものの再入院となり、助かる道は骨髄移植しかないと聞かされるが、残念ながら一男の白血球は適合せず、ひかりのドナーになることができない。それどころか、一男とひかりはDNAも一致しない、つまり血縁関係にないという衝撃の事実を知らされる。

映画は、一男とひかりの現在と、母親の江津子の若かりし頃の物語を重ねるようにして展開し、ひかりの出生の秘密が徐々に明らかになっていく。と同時に、ひかりの白血球の型に適合するドナーを見つけようと、決死の覚悟で駆けずり回る一男のひたむきな姿も追いかける。

台本と出合って2時間後には「この人になりたい」

このあたりの場面転換の鮮やかさは、若手の実力派、金井純一監督の巧みな技が光るところだ。短編映画で評判を取り、2013年の「ゆるせない、逢いたい」で劇場長編映画デビューを飾った金井監督は、映画だけでなくテレビコマーシャルやプロモーションビデオなど幅広く活躍。2020年には、あいみょんの作詞作曲でDISH//が歌った楽曲『猫』を原案にしたテレビドラマ『猫』(テレビ東京系)を手がけて大反響を呼ぶなど、類いまれな映像センスが大いに注目を浴びている。

今作は、レンタルチェーンの大手、TSUTAYAが映像クリエーターの発掘と育成を目的に実施している「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM」で2016年の準グランプリを受賞した企画で、金井監督がムロツヨシという希代のエンターテイナーを主役に迎え、深く心に染みる親子の愛情物語を織り上げた。

そのムロツヨシは、意外にもこれが映画初主演となる。コメディーからシリアスまで多彩な役柄をこなし、舞台「muro式.」を自らプロデュースするなどマルチに才能を発揮しているムロツヨシだが、今回はおちゃらけたキャラクターを封印し、血のつながっていない難病の娘を思う父親という複雑な役どころを体当たりで熱演。何しろ台本と出合って2時間後には「この世界にいたい。この人(一男)になりたい」と出演を即決したほどで、役者25年目となるメモリアルイヤーを飾るにふさわしい作品に仕上げている。

この「心優しい熱血お父さん」を取り巻く共演陣も、若手、ベテラン取り混ぜて実力派が顔をそろえた。中学生の娘、ひかりを演じたのはオーディションで選ばれた中田乃愛で、本格的な演技はこれが初めてとなる。屈託のない明るい少女がいきなり病魔に侵されるという難役に果敢に挑戦。父親役のムロツヨシとの息もピッタリで、ただでさえ胸が熱くなるストーリーのところ、けなげで初々しい存在感でさらに涙を誘う。

また一男の亡き妻、江津子を演じるのは、このところ映画出演が相次ぐ成長株の菜緒で、秘密を抱えた影のある役どころを好演。そのほか、毎熊克哉、臼田あさ美、光石研といった芸達者から、平成ノブシコブシの徳井健太、劇団ヨーロッパ企画の永野宗典らお笑い系と、バラエティーに富んだ布陣で作品を彩る。小栗旬が意外な役で共演しているのも見ものだ。

真の優しさがにじみ出るサービス精神満載の特典映像

主題歌も聴き逃せない。『それは愛なんだぜ!』を歌うカーリングシトーンズは、寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本という日本のロック界を代表する6人によるユニットで、この曲は映画のために書き下ろされた。「金井監督からロックサウンドで明るく終わりたいとオファーがあって、すぐにひらめいた」と話すリーダーの寺岡だが、内々の試写会では、声を出しておいおい泣いてしまったと打ち明ける。映画が伝える愛のメッセージを見事に表現している曲で、エンディングに流れることでいやが上にもぐっと込み上げてくる。

ブルーレイ&DVDの特典には、そんな裏話が満載のメイキング映像やジャパンプレミアイベントでの舞台挨拶などが収録されていて、映画の余韻に浸りながら場面場面を反芻することができる。映画本編では隠していたムロツヨシのユーモアあふれる素顔も、メイキングでは全開で披露。共演者やスタッフを和ませるサービス精神には、一男にも通じる男の真の優しさがにじみ出ている。

メイキングの中で、ムロツヨシは語る。

「親子だったり、夫婦だったり、人と人はつながっていて、そのつながりがある日、危うくなってしまうことは誰しもあることだと思う。それをこの映画では描いているし、ムロツヨシの映画だけどどうする? というのを一回捨てて、ムロツヨシの初めての主演映画を見よう、ではなく、見てあげよう、という気持ちを、そろそろ芽生えさせていただけたらと思います」

真面目で面白いムロツヨシのまた新たな一面を味わえるのは間違いない。

文=藤井克郎 制作=キネマ旬報社

「マイ・ダディ」

●3月9日(水)Blu-ray&DVDリリース(同日TSUTAYA先行レンタル開始)
Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら

●Blu-ray:5,280円(税込) DVD豪華版:4,290円(税込)
●特典(Blu-ray、DVD共通)
【映像特典(約48分)】
・メイキング
・ジャパンプレミアイベント
・劇場予告編
【特典仕様】
・スリーブケース
【封入特典】
・ブックレット(12P)

●2021年/日本/本編約116分
●監督:金井純一 脚本:及川真実、金井純一
●出演:ムロツヨシ、奈緒、毎熊克哉、中田乃愛、臼田あさ美、徳井健太(平成ノブシコブシ)、永野宗典、小栗旬、光石研
●発売元:カルチュア・パブリッシャーズ 販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング 
©2021「マイ・ダディ」製作委員会