「魅せられたる三夜」のストーリー

55年、12歳のハリー・ヴォス(ヒールト・フーナーツ)は、映画の中のお姫様(フロランス・ビリヤール)の恋物語にすっかり感動し、彼女に淡い恋心を抱く。しかしそれは友達スタン(ミハエル・パス)の言う大人の男と女の本当の愛の行為に、恥ずかしさと失望感へと変化してゆく。そんなある夜、両親のセックスをのぞき見、激しいショックをうけたハリーは、級友の母親のバスト美女を襲うが失敗し、理想と現実のギャップに、深い悲しみを覚えるのだった。62年、19歳のハリー(ヨセ・デ・ポー)は、顔と背中に出来たおびただしいニキビに悩み、高校の卒業パーティにも出席するつもりはなかった。しかし友達のジェフ(ジェーン・ベルブッツ)にけしかけられ会場に乗り込んだハリーは、憧れの美女リザ(アン・ヴァン・エッス)にダンスを申し込むが、思いは叶えられず、意を決して顔中にトイレットペーパー巻きつけ、改めてダンスを申し込む。今度は彼女も笑顔でそれを受けるが、若い自尊心を傷つけられたハリーは、生まれて初めて泥酔した。76年、33歳のハリーは、その夜もしたたか酔っていた。久々に再会した飲み友達ビル(アミッツ・チャキール)と夜の街に出たハリーは、霊柩車の中からある遺体を盗み出す。その死体となった若い女性(F・ビリヤール=二役)は、少年の頃夢みた映画の中のお姫様そっくりだった。そしてビルと共に車で海辺へ向かったハリーは、遺体を抱きかかえると、広い海の中へゆっくりと消えてゆくのだった。