「口笛吹けば」のストーリー

チータは利口な犬だ。御主人は立派な邸に住む若い奥さんだがとても可愛がってくれる。ところが奥さんに赤ん坊が生れたためチータはすっかり忘れられた。よし、家出だ、チータは街へさまよいでた。奥さんは大慌てで探したが見つからない。それも、そのはずチータは旅芸人に拾われていた。しかし芸のできないチータは間もなく追いだされ、またも放浪の身。見なれた御主人の自動車が走ってきた。懐しさの余りチータは後を追ったが、気づかぬ車の御主人は、そのまま走り去った。くたびれて気を失いかけたチータは可愛い男の子に拾われた。男の子は五つでモスカ(シルヴァーノ・オルランド)という。母は死んでいなく、家族は、お婆さんとお父さん、それに兄さん夫婦と小学校に通う姉さんの六人暮し。チータは気が合うというのか、モスカと直ぐ仲良しになった。しかし家計が豊かでないので、兄さんのお嫁さんはチータを飼うことに反対した。が、モスカとチータの余りの仲の良さに、とうとう許した。ところが、ある日チータは犬殺しに捕り、五千リラの金がないと引取れないことになった。貧乏なモスカの家でチータに払う金などない。モスカは泥棒を決心した。このときモスカの兄さんは新聞を読んで、元の飼主が五万リラの賞金でチータを探しているのを知った。兄さんは五万リラを工面してきて、モスカにはチータを連れ戻してやるといいながら元の御主人の邸へでかけた。兄さんは五万リラ受取って帰ってきた。勿論チータと引換えに。モスカは兄さんが嘘をついたことを知った。嘘つきの兄さんの家には帰りたくなんかない。モスカは街へさまよいでた。いじめっ子になった。チータがいなくなってヒネくれたのだ。遠い道を歩いてモスカが大きな邸の門の前にきたとき、突然チータが飛んできた。チータは、もうモスカと離れまいと思った。そこへ御主人の奥さんがでてきた。モスカとの仲の良さに、奥さんはチータを呼んで言った。「チータ、そんなにこの子が好きなら行ってもいいわ。よく考えてね」。チータは悩んだ。大切な恩のある御主人、しかしチータは、やっぱりモスカが好きだった。邸の門をでるチータとモスカを奥さんは、いつまでも見送っていた。