「青髭八人目の妻」のストーリー

リヴィエラのデパートで米国人マイケル・ブランドンがパジャマの上だけを売れと押問答をしているところへ、フランスの若い娘ニコルが来てその下を買って去った。ホテルではニコルの父親、貧乏貴族のロアゼルは、米国の富豪ブランドンに商売の企画を売りつけようと待っていた。何も知らぬブランドンが不圓見るとロアゼルは自分と同じパジャマの下を着ているので、ニコルがその娘であるのを知って、商売は断ったがその代わりにルイ14世の浴槽という怪しげな物を高価に買った。ロアゼルは娘を金持ちと結婚させようという計画だが、ニコルはブランドンが富豪であることを知っても更に興味を感じないで、旧友のアルベールと遊び廻っている。ところが彼の勧めている銀行の米国本店社長がブランドンなのだから、彼は社長に見つかって秘書を命ぜられニコルのそばへは寄りつけない。ブランドンが彼女に対する執心は大変なもので、到頭ニコルも父親の言葉に従って結婚の決心をした。ところが式の記念撮影の直前になって、ブランドンは今までに7人の妻と離婚したことが判ったので、体面を重んずる伯母さんの反対はあったけれど、ニコルは金のための結婚だと明言し、離婚した場合には年10万ドルの手当てを支払う約束をさせて結婚した。かくてニコルの彼に対する戦端が開始され、欧州全土にわたる新婚旅行の間にも、あらゆる手段を用いてブランドンを寄せつけなかった。つまり彼を苦しめて離婚させ、10万ドルの年金を取るのが彼女の目的である。夫が商用で他の地へ行くと称して去った晩に、ニコルはボクシング選手を雇って家に入れて置いた。彼女の想像通りブランドンは引帰して来たが、その前に酔っぱらったアルベールが入ってきたので、ボクシング選手は彼を主人と間違えて、ニコルに命ぜられたようにアルベールをノックアウトしてさっさと引上げた。ブラントンが帰って見ると、そこにはアルベールが寝ていたから、さすがの彼も憤然としてついに離婚した。ニコルの目的は見事に達っせられたのである。しかし別れたみると彼女は初めてブランドンを心から愛していることに気がついた。ブランドンはひどい神経衰弱にかかって療養所に入っていた。ニコルに会うまいとして暴れる彼を、看護人たちが身動きのできぬように縛りつけ、そこへニコルは入って行った。そして彼を捉えると、もがいて逃げようとするブランドンの耳に、ニコルは思いのたけを打ちあけた。ブランドンの妻もついに8人目で終ることになったのである。