「中仙道のつむじ風」のストーリー

中仙道御嶽の宿、貸元の仁兵衛が浪人者に斬り殺された。悪代官にたてつく小田井の甚兵衛を牽制するために出馬を請われたが、断ったためなのだ。草鞋を脱ごうとした旅人、つむじ風の百太郎はこのさわぎに小田井の宿へ足を向けた。途中雨宿りをした水車小舎で、百太郎は美しい武家娘に会った。娘の名は志保、旗本真壁家の娘で人を尋ねているという。若い旅鴉の胸に生まれて始めて恋の灯が点いた。翌日小田井の甚兵衛宅、現れた志保を見て江戸の半蔵が驚ろきの声をあげた。真壁家に仲間奉公していた半蔵は恩義と志保への愛情の板ばさみとなりやくざ稼業にとび込んだのだ。志保の幸せを願ってわざと冷たくつっぱねる半蔵の真情をつかめぬ志保だった。甚兵衛の縄張りに、悪代官の差し金で田無の嘉十一家が出ばってきた、。その嘉十を百太郎はこっぴどく痛めつけたため、目をつけられる破目になった。半蔵は甚兵衛から親分子分の縁を切ると言い出された。志保と一緒にしてやろうという心やりだが、半蔵は頑固だ。一計を案じた百太郎が志保と馴々しいそぶりをみせたから、半蔵は百太郎を殴り倒し志保と抱き合った。志保への思慕を断ち切れないいじらしい百太郎だった。田無一家を痛めつけた半蔵と百太郎に代官から五人の殺し屋浪人が差し向けられ、百太郎が捕われ半蔵の隠れ家を言え、と拷問をうけた。傷だらけになりながら頑として口を割らない百太郎を助けたのは半蔵だった。「旅に出ます」と甚兵衛一家から草鞋をはいた百太郎は、殺し屋たちを誘い出し、その隙に悪代官を叩き斬った。急を聞いて駈けつけた甚兵衛、半蔵、志保らの前に百太郎の姿はなかった。志保の面影をしっかり抱いて、百太郎は吹き荒れる春風の中を突っ走っていた。